008
・・・・翌日、待ち合わせ時刻が迫るなか
優はあわてて電車に飛び乗る
はぁッ、はぁッ、はぁッ………
遅刻なんてありえないからッ…間に合いますように…
心の中で唱えながら乱れた髪を直し、鏡を手にして
化粧した顔もちゃんと確認する。
普段は全く化粧しない私だけど、今日は
歌手になる私の始まりの日だから
うっすら化粧してみたんだ…
目的の駅に到着し、事務所まで走る、、走る、、走る
ビルを見上げここが私が入る事務所なんだ…と
優は改めて思う
自動ドアに手をかざして入り、受付で「あの…黒田優ですけど…」と名前を名乗った。
「黒田さんですね。少々お待ち下さい」と受付の人が
言い、紙を見ながら確認している。
その後、「ご案内致しますね」と言われ受付の人に
付いていきエレベーターに一緒に乗った優は緊張で
心臓がばくばくだった。ここに来るまではそんなに
緊張していなかったのにいざ目的の場所に着くと
緊張しすぎて吐きそうだった
これってあるあるかな?…
・・・・・・チーン…
エレベーターがある階で止まり、扉が開くと
カフェで会った人物が目の前にいた。
電話では昨日話したけれど、会うのは
これで2回目だ
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」と
部屋に案内される
康平「そこに座ってください」
優「あ…はい」
優が緊張しているのが分かったのか康平は
「そんなに緊張しなくても大丈夫だからね」と
優しく声を掛けた
優「はい…」
二人とも椅子に座ったところでこれからの
ことを話していく
「これが契約書なんだけど…読んでからサインしてくれるかな?」と康平が1枚の紙を取り出し、優に見せる
優「はい…」
契約書を最後まで読み、優はサイン欄のとこに
自分の名前を書いて康平に手渡した
康平「ありがとう。これで、君は今日から
うちの事務所と正式に契約したことに
なるんだけど…改めて私が君のマネージャー
を務めさせていただく伊藤康平です。
宜しくお願いします」
優「宜しくお願いします…」
緊張がまだとれない優。
康平「緊張しちゃうよね。一緒に頑張っていこう」
緊張のせいで声が小さくなり、「はい…」と返事を
した優
康平「さっそく仕事の話なんだけど…
オーディションを受けてほしいんだ」
優「オーディション?…ですか?」
康平「そう!オーディションに受かれば
チャンスも広がるし、仕事の幅も広がるから!」
「ドラマの主題歌なんだけどね…」と1枚の紙を
見せながら説明していく康平に優は一言一句聞き逃すまいと頭をフル回転させて話を聞く
康平「オーディションは来週なんだけど、
1週間でこのドラマの内容に合った曲
作れるかな?」