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そんなこととは露知らず、黒田優は

数学のノートの端に音符の落書きをする

前の席の子は寝ちゃってるし、隣の子は

こっそりイヤホンして携帯で音楽を聴いてる

先生にはばれてないみたいだけど

いくら退屈でも私は堂々と寝ることなんて

できないなぁ…だって目立つでしょ?

黒田優はそんなことを考えた


早く授業が終わらないかな…と何回も時計に

目がいってしまう

そんなときって中々時間が経たないものだ


「この質問解けるか?」


先生のその声は優の耳には入っていたものの


「おい、黒田!」

へ?…あたし?…まさか自分が当てられているとは

思わず頭がパニックになってしまう


授業のことはすっぽり頭から抜けていたため

当てられても分からない…

どうしよう…分かんないよ…

隣の人か誰かに答えを教えてほしい…誰かに

助けを求めたいけど声をかける勇気が自分にはない

なんであたし聞けないんだろ…


「黒田?」


先生がずっと黙り込んでる私の名を再度

呼ぶ声がした


優「あ…はい…わ…わかりません」

そう言うと、「そうか。簡単な問題なんだけどな。

       じゃ、〇〇」と違う生徒を当てた


私はホッとして席に座る

当てられた生徒はと言えば「俺分かんねぇよ!

答え教えてくんね?」と後ろの席の子に

聞いている


私もパッとあんなふうにできたらな…

その生徒を見ながらそんなふうに

思った優。また前を向き直して

今日の夜のことについて考える


今日は、どんな歌を歌おうかな…



キーンコーンカーンコーン…授業が終わる

チャイムが鳴ったことで現実に引き戻された優は

次の授業の準備を始めた







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