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・・・・・1週間後

いつものように仕事終わり彼女を自宅まで送り届けた康平は家の中に入るのを見送ったあと運転席に戻り

車を発進させようとしたその時コンコンッと車のドアをノックされた。その方向を見ると、手には封筒を

ボイスレコーダーらしき物も見えた。その格好から

彼が何者であるか長年この仕事をやっていれば分かる。窓を開け、「別の場所ででもいいですか?」と

声を掛けすぐ近くにある公園へと車を移動させた。

車から降り公園のベンチへと腰をおろす。それに続いて明らか記者であろうその彼も隣に座り顔をこちらに向け封筒から写真を取り出し俺に見せる。

と同時に「お二人はお付き合いされてるんですか?」と

聞いてきた。その写真は1週間前、俺がアイスティーの入ったカップを手渡している姿、そしてそれを

嬉しそうに受け取る彼女が写っていた。

「これはただ単に購入した飲み物を渡しているだけです。この写真だけで付き合っていると言われても」


この写真だけではない。他にも何か確証があるのだ。

でなければこんなに自信満々に写真を出してはこない。そう康平は分かっていた。だが付き合っていないのは確か…確かだ…だから「付き合っていません」そうはっきりと返した。

すると記者は「これだけじゃないんです!今流れているCMの曲…」康平の予想していた通りの答えが返ってきた。「その曲はあなた方二人を表しているものじゃないんですか?」その真っ直ぐに射抜くような彼の眼差しに「それは…」違います…とたった一言否定する言葉が出てこない。「お互い好きなのでは?」確信をつくようなその言葉に無言になってしまう俺。お互い好きなのは事実…あのCMの歌詞も今目の前にいる彼が言った通り…だが…付き合ってはいない…そんなこと繰り返し言ったところで信じてもらえないだろう。

気持ちが全くないのなら堂々と言えるのだが、好きなことに変わりはないのだから。

彼女を守るためにはどうしたらいいのか考え出てきた言葉は「責任は取ります」それだった。

責任を取るなんて言ったら認めたようなものなのに

康平はばかだ。


記者と別れ、俺はある場所まで車を走らせる。

社長にも話がいっていることだろう。

ちゃんと話さなければ…

そして彼女を守るために俺はある決意を固めていた。

責任の取り方…きっと彼女の事だから泣くんじゃないか…でもこれがマネージャーとして…だけじゃなく

大切な存在だからこそ…君を守るには最善だと

思ったんだ…


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