018
今日仕事場まで車を運転している中、俺はミラー越しに後ろに乗っている人物をちらちらと何度も確認していた。昨日は眠れたか、今日の体調はどうか、何か困っていることはないか、気にかけるのはマネージャーとして当然だ。ずっと一緒にいるのだから表情一つで
いつもとは様子が違うだなんてすぐ分かる。
君のことをより気にかけてるのは好きだからっていうのも多少あるかもしれない。でも仕事中の今はそれを微塵も出さない。それがプロというものだから。
あれから例のCMの曲も無事決まり、歌番組も出ることになったりして忙しくしている。曲は…あの曲だ。
俺達の事を表してる歌詞だなんて誰にも気付かれてないだろう。今の今まで誰にも何も言われていないから。そう…俺は安心していた…
今日の仕事に関する資料を読んでいるとちらちらと何かの視線を感じた。気にかけてくれているのは素直に嬉しい。好きな人ならなおさらその気持ちも倍増する。だけどそんなに見られると集中できない。
はぁー…心の中でため息を漏らす優。
集中しなおそうと資料に目を向け直したとき、
「喉渇いてない?何か買う?」とマネージャー兼彼の声が聞こえた。「そうだね!何にしようかなー」と窓の外をきょろきょろと見回す彼女。ちょうどすぐ側にあった近くのお店で購入することになった。
「じゃ、買ってくるよ!」財布の小銭をジャラジャラと
確認してから再びポケットに財布を戻す。
その後ろ姿をつい目で追ってしまう。
数分で戻ってきた彼から「はい!アイスティーでよかったよね?」と二つ持っていた手の中から一つ手渡される。「うん!ありがと!」ふと出るそんな無邪気な笑顔にやられそうになる。カップに描かれてある可愛らしいくまの絵を携帯で撮っている姿を見ると高校生らしいななんてそんなことを思った。
私は…俺は…まだ気付いていなかった
その瞬間を狙っている人物がいたということに…
私達…俺達の関係が崩れるときがすぐそばまで迫ってきているということに…
それはほんの一瞬だった