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底辺奴隷騎士団

 さて……今回の件でもっともリスクを背負ったのは、ティストリアである。

 なんだかんだ言ったところで、彼女こそが失うものが多い。

 もしもの時には彼女の輝かしい経歴に傷がつき、その評価は大いに下がるだろう。


 それを一番心配しているのは、総騎士団長付きの騎士たちである。

 彼らは自分の主の決断に対して、批判的ですらあった。


「総騎士団長、今回の件には反対です。いくらなんでも、リスクが大きすぎる」

「なぜわざわざ騎士団という役職まで与えるのですか、それでは貴方が責任を負い過ぎる!」

「いくらアヴィオールを倒した者たちとはいえ……正直に申し上げて、納得しかねます」


 ボリック伯爵の城の中で、騎士たちから抗議を受けて、彼女はそれでも平然としていた。


「皆の気持ちは嬉しいわ。でもね、そもそも私は自分自身にそこまで魅力を感じていないのよ」


 彼女自身の言葉を聞いて、騎士たちは黙った。

 ここで『私は私が大好きなの』と言われても困るが、自分が好きでもないと言われても困る。

 ある意味立派な人物だろうが、だからこそ保身も考えてほしかった。


(今の一言で大体終わった……!)


 騎士たちも愚かではない、最悪私が責任取って死ぬわ、という含みを察した。

 そして彼女がそれを受け入れている以上、もう問題が無いとも言えた。


「そのうえで……騎士団と同じ役目を与える者たちに、騎士団の称号を与えない方がどうかしている。まあ実際には、何度か仕事をして実績を作ってもらってからになるでしょうけど……」

「ですが……そもそも彼らは信用に値するのですか? 現場でなにかの失態……いえ、蛮行を働けば、貴方が責任を取ったところで……」


 ただ任務を失敗しただけならまだいい(よくない)が、乱暴狼藉をはたらけば大問題となる。

 彼女が辞めたところで、被害者が出た事実は変わらない。

 騎士の一人は、そんなことを言った。


「要請はあったが、派遣できる騎士団がいない。そんな状況になったら誰が困るのかしらね」

「……いないよりはいい、ということですか」

「そういうことよ」


 騎士団へ要請があっても、全員出払っている。

 そんな状況になれば、どうしても後回しにせざるを得ない。要請を出した者たちは、乱暴狼藉どころではない大損害を受けるだろう。


「それに……」

「なんでしょうか」

「正直、私にも想像ができないのよ。その『手品』のしかけが」


 彼女はここで、感情を見せた。

 不思議だ、わからない、という感情である。


「貴方は思いつく? どんな仕掛けがあるのか、想像できる?」

「いえ……実際に見れば想像できるかもしれませんが……今はまったく」

「でしょうね……凄い手品だわ」


 手品ショーは、この世界にも存在する。

 それは当然、客も『これは種も仕掛けもある』とわかって来ており、なんであれば『トリックを見抜いてやろう』と思っている客もいるはず。

 それでも欺く、見抜かせないのが手品というもの。


 であればガイカクの『それ』は、手品と呼んで差し支えない。

 これは貶めているのではなく、褒めているのである。


「その分野においては、私を凌駕する天才でしょうね」

「……それはほめ過ぎでは」


 人間の万能さをさらに伸ばしているティストリアを、一分野とはいえ同じ人間が越えている。

 それを聞いて騎士は否定するが、彼女はそれを楽しそうに評していた。


「そうかもしれませんが……期待はできるでしょう」



 ガイカク・ヒクメは、天才魔導士だった。

 研究開発や運用についても、抜きんでた実力を持っていた。

 見た目こそ若いが、多くの知識を得ている魔導士だった。


 だがしかし、あくまでも魔導士の範疇においての、天才であった。

 悪事の大天才、というほどではなかった。

 いやそもそも、悪事の大天才は露見しても問題のない『法の抜け穴』を利用するのであり、バレれば罪に問われる違法行為はしない。

 違法と知ったうえで違法行為をしている時点で、彼は悪事の大天才どころか、ただの犯罪者である。


 だが彼には、まだ悪運があった。悪事の尻尾をつかんだのが、総騎士団長ティストリアだったことである。

 彼女はガイカクに利用価値を見出しており、深く詮索しないことと引き換えに戦力になることを求めてきた。

 つまりうまくすれば、今までと同じ立場が維持できる。好き勝手に兵器の研究ができる、実践ができる環境を保てるのだ。

 これについては、伯爵の妄想とは違う。明確に、ティストリアから保証されたことだった。

 しかしながら、それは具体的なものだ。ガイカクは兵法家でもあるがゆえに、現状の戦力を正しく評価していた。


「俺が騎士団長……? アイツらが騎士団の任務をこなすなんて、無理もいいところだ……!」


 ガイカクは戦術においてロマンを追求する男ではあるが、現実を軽視しない。

 より戦力の大きい方が勝つ、それが戦術の世界である。

 戦力の弱い方が勝つには、強者の油断に付け込むしかない。

 そして騎士団になるということは、相手を警戒させることに他ならない。


「いや、待て……落ち着け。まず断ればどうなるかを考えるべきだ……」


 この場合の断ればどうなるか、というのは、おとなしく査察を受けるという意味ではない。彼女から逃げ出すことを意味している。


「何を諦めれば、逃げ切れる……土地は全部放棄するとして、大きな道具も、いやまとめた資料だってかさばるし……身一つで逃げることになるから……ああ……」


 ガイカクは極めて自分本位な男である。

 だからこそ、奴隷たちに特別な思い入れはない。

 しかしながら、彼女たちは訓練した兵士。彼にとって、資産であり作品でもある。

 それを全部放棄するのは、他の研究成果を捨てるのと同じ程度には苦しい。


「……逆に考えよう、騎士団の仕事をこなすには何が必要だ?」


 逃げた場合、失うものが多すぎる。

 少なくとも今は、その準備ができていない。

 そう判断したガイカクは、騎士団の仕事をこなすには何が必要なのかを考えた。


「今俺の手元には、オーガの重歩兵二十人、エルフの砲兵二十人、ゴブリンの工兵二十人、獣人の擲弾兵十人、ダークエルフの偵察兵十人……どううまく運用しても、騎士二人分の仕事しかできないな。ただ数を増やすだけでは、今後はやってられん」


 エルフの砲兵も獣人の擲弾兵も、攻撃できる回数が少なすぎるという欠点がある。オーガの重歩兵も、そう長い間戦えるわけではない。

 ダークエルフとゴブリンは、そもそも戦力ではない。


「今までは攻撃し続けて倒す、力を使い切って倒すというもんだったが……今後は無理だ。そうなれば、特化兵を主役に据えるのには無理がある」


 ガイカクの出した結論は、極めて凡庸だった。

 だがその凡庸さに至ったことこそ、彼が現実を見ている証拠だろう。


人間(・・)の歩兵がいる、それも大量に……!」


 正騎士に値する戦力の持ち主を見つけるなど現実的ではないし、他の種族を大量にそろえることも難しい。

 違法兵器も外注できないので、少なくとも今現在は量産不能だ。

 ならば凡庸だろうが何だろうが、普通の、人間の歩兵を多く集めるしかなかった。


 いや、ガイカクの事情を抜きにしても、人間の歩兵は絶対にいる。

 強いとか弱いとか以前に、いなければ戦争にならないのだ。


「今から一から育てるのは無理だ……傭兵を雇うしかない。俺の条件に会う奴がいればいいんだが……」


 ガイカクは、ちらりと空を見上げた。

 もうすでに、夕方になりつつある。

 たいていの店は、閉まるころ合いだった。


「傭兵の斡旋所は近くだったな……急ぐか」


 ガイカクの有能なるゆえんは、即断即決できるところだろう。

 頭を抱えたくなる現実と向き合い、己の目的を果たすため、即座に動き始めていた。

 その歩みに、もはや迷いはない。


「幸いというか、現金は多く持ってきていたからな……訳ありでもなんでもいいから……いやいっそ訳ありのほうがいいか? とにかく急ぐか……!」


 彼は足早に、傭兵の斡旋所へ向かった。

 傭兵の斡旋所、というのはこの国において比較的ポピュラーである。

 道中の安全やら町と町のいさかいやら、あるいは臨時の警備など。必要な時だけ武力を求める者は多い。

 よって傭兵の斡旋所というのは、大きな町なら大抵ある。城下町ならば、なおのことだ。


 ガイカクはこの城下町によく訪れるため、その場所は知っていた。

 とはいえ、実際に入るのは初めてだったのだが。


「失礼する! まだ斡旋所は営業中か?」


 かなり大きめの酒場、という雰囲気の、二階建ての建物。

 そこに入ったガイカクは、ドアを開けて早々に叫んでいた。

 彼は内部の状況を把握する時間も惜しいとばかりに、職員らしい男性へ話しかける。


「すまない、早急に傭兵が必要になった。多ければ多いほどいいんだが、今都合のつく傭兵はいるか? 現金を持ってきた、今すぐに契約したい」


 ガイカクが話しかけた職員の男性は、それこそ元傭兵と思われるような、腕の太い、体格のいい男性だった。

 その彼は、ガイカクの話を聞いて、なぜかものすごく驚いている。

 早急に傭兵が必要だ、という客などさほど珍しくもないはずだが、目を真ん丸としている。


「あ、ああ……一組だけ、傭兵団がいる」

「一組? まあいい、その傭兵団はどこに……?」


 職員の男性は、びっくりしたまま、斡旋所内の小さなテーブルを指さした。

 ガイカクがそこを見ると、縮こまった様子の、体格のいい女性が数名。

 そしてそれを包囲する、お世辞にも体格の良くない男性たちがいた。

 そろって、ガイカクを見つめている。信じられないものを見た、という顔だった。


「……失礼だが、傭兵というのは彼女たちか?」

「ああ、アマゾネスっていう傭兵団だ」

「神話で語られる、高名な女戦士の一族だな。その名前を冠している割に、縮こまっているが……というか、なぜ男性に囲まれている?」

「……あいつらは、借金取りなんでさあ」


 なぜ斡旋所にいた面々が、こうも目を丸くしているのか。

 その理由を、男性職員は順序良く話し始める。


「まあ……女性の傭兵なんてのは、戦場じゃあセクハラの対象でしてねえ。戦える娼婦、みたいな扱いも受けるんですよ」

「……まあそういうこともあるだろうな」

「それが嫌な奴らが集まって、アマゾネスっていう女性だけの傭兵団を作ったんです」

「結構なことだが……?」

「奴らは『たとえ客でもセクハラには対応する!』なんて言ってましてね……その上無駄に人数も膨れ上がったもんだから、仕事も回らなくて……」


 意識の高い女傭兵で構成された、アマゾネス傭兵団。

 なるほど有名になるだろうが、仕事が回ってくるかは別の話だ。

 抜きんでた実力者でもいれば話は違うだろうが、そうでもなさそうである。


「で、食い扶持の為に借金まみれと」

「……どれぐらいだ?」

「これぐらいで」

「……思ったよりは、少ないな」

「いやいや……これ以上貸せないって話ですよ」


 金貸しという職業は、金を返してもらって初めて商売が成立する。

 よって、金を返せる者なら多めに貸すが、返せそうにない人にはそんなに貸さない。

 商売なのだから、当たり前である。


「で、今日が最終日。今日返せなかったら、全員奴隷オチ……まあどっかの山で労働するんじゃないですか?」

「典型的な起業の失敗だな……」

「まあ、腕は確かなんですがね。経営がちょっとね、下手でねえ……」


 ガイカクはようやく納得した。

 要するに彼女たちは、そして彼女たちの仲間達は、この斡旋所が営業終了すると同時に奴隷になるはずだったのである。

 借金取りに囲まれながら、藁にもすがる思いで待っていたところ……できるだけ大勢の傭兵を雇いたい、即金で支払うという客が来たのだ。


 このガイカクが、最後の望みである。


「アマゾネスの人数は?」

「百人です」

「……こっちとしてはありがたいが、無駄に多いな」

「俺も最初は少なめにして、軌道に乗ったら多くしろってアドバイスしたんですがね」

「まあ、いい。こっちは大急ぎで準備しないといけないんだ、即金で雇おう」


 ガイカクは懐から大金の入った袋を出そうとして……。


「ちょ、ちょっと待ってもらおうか!」


 なぜか、アマゾネスの代表らしき女性が、待ったをかけた。

 これには全員呆然である。


「すでに斡旋所の所長が言ったと思うが……」

(この人所長だったんだ……)

「私たちは志高きアマゾネス傭兵団! 素寒貧でも体は……」


 武士は食わねど高楊枝。

 演説を始めた意識高い系傭兵の姿に、一同呆れるが……。


「団長! そんなことを言ってる場合じゃないでしょうが!」

「こっちはね! それこそ借金のかたに奴隷寸前なんだよ! 私たちだけじゃなくて、部下の子たちも!」

「部下のためなら純潔でもなんでも差し出すのが団長の仕事でしょうが!」

「この能無し!」


「……ああ、そのなんだ。こっちとしても、借金を即返してもらえれば、そっちの方がありがたいんだが」

「お前らを奴隷にするのも、それを売るのも手間だしなあ……」

「悪いこと言わねえから、もうあの兄ちゃんに雇われな。それがみんなのためだ」

「お前経営のセンスねえよ」


 ほぼ全員から怒られて、しょぼくれていた。

 その姿を見て、ガイカクは呆れる。

 呆れたうえで、確認をする。


「この俺、ガイカク・ヒクメがお前たちアマゾネス傭兵団を雇用する。人間の女傭兵百人、確かに雇わせてもらう」

「……わかりました」

「俺の手持ちの金で、お前たちの借金は返せる。それは結構なんだが……」


 割と基本的なことを、彼は聞いた。


「借金返済で俺からの報酬を使い切る形になるだろう。その場合、お前たちの食い扶持はどうするんだ?」

「えっ……」

「考えてなかったのか……」


 アマゾネスの団長は、ちらちらと周囲の借金取りを見た。


「あの……返したので、また借りられますか……」

「ヤダよ」

「……どうしよう」


 今度は斡旋所の所長を見る。


「あの、所長さん……報酬を多めにもらうことってできますかね? 交渉で……」

「通常の倍ぐらいよこせってか? お前らそれが通るとでも?」

「……ダメか」


 借金が全部返せたとしても、彼女たちは明日を生きていかなければならないのだ。

 ならば実質報酬ゼロで、命がけの仕事をすることになる。

 奇跡が起きてなお、アマゾネスの未来は暗かった。


「あの……ガイカク・ヒクメ様。雇っている間、衣食住の面倒を見てくださいますか?」

「その場合、報酬減らすけどいいか?」

「……それだと借金返せない」

(やっぱコイツ経営のセンスがないな……いや、センス以前か……)


 単純な算数もできていない傭兵。

 それを見てガイカクは嘆くが……。


(よく考えたら、人のことを心配している場合じゃなかったな)


 自分の状況を思い出して、ガイカクは正気に戻っていた。


「……よし、じゃあこうしよう。お前たちは傭兵として働いてもらうが、身分は奴隷扱いだ。働いて自分を買い戻せるまでは、俺の元を離れない。その条件でいいなら、お前たちの借金はこの場で全額返すし、衣食住の面倒も見る」

「……三食ちゃんと食べられますか?」

「命がけで働いてもらうんだから、そこは保証する」


 ガイカクの譲歩を聞いて、所長は安堵のため息をつきながら手を叩いた。


「その条件が妥当だな……契約書も作っておくから、ちゃんと署名しろよ」

「ふぁい……」

「お前ら、マジで感謝しろよ? こんなお前らに命を預けてくださるんだから、不義理な真似するなよ。ほら、団長なら頭下げろや」


 斡旋所の所長としても、傭兵を奴隷に落としたいわけでもない。

 彼は彼女の頭をつかんで、机に叩きつけつつ、自分も頭を下げていた。


(早まったかもしれん……)


 よく考えたらこいつに命預けるんだなあ、と思ったガイカク。

 彼はちょっと後悔していた。



 伯爵の元へ出向いていたガイカクが、大勢の武装した女傭兵たちを連れて、拠点へと帰ってきた。

 それを見てゴブリンや獣人、オーガは不思議そうにしていた。だがエルフやダークエルフは、来るべきものが来たか、と覚悟をしていた。


「みんな、集まってくれ」


 道中ですでに話を聞いていた人間の傭兵たち、アマゾネスたちはすでに顔をこわばらせている。

 普通なら信じないところだが、いろいろと状況証拠がそろっていた。

 今まで伯爵がショーを演じていたこと、ティストリアが伯爵に会いに来たこと。それを合わせて考えれば、ありえなくはない。

 というか、もうすでにお金を貸してくれる人もいない自分たちを、騙すわけがないと思っていた節もある。


「あのクソデブがバカな真似をしたせいで、俺たちの存在は騎士団にバレた。だがしかし、総騎士団長のティストリアは俺を雇用しようと……俺たち全員を、騎士団として召し上げるとおっしゃった!」


 ガイカクは拠点の女たちへ、力強く宣言を始める。

 自分の不安をぬぐうため、兵の士気を保つため、彼は虚勢と知って皆を奮い立たせようとする。


「俺は、この話に乗る! これから俺たちは騎士団として……任務に就く!」


 騎士の強さを知る者たちは、それと同じ仕事をするのだと、心胆を震わせていた。

 だがしかし、その顔には希望があった。

 この男がやる気になっているのだから、勝算はあるはずだと。


「今までにない困難が、無理難題が、強大な敵が、俺たちの前に立ちふさがる。他の騎士団と同じ成果を、俺たちは求められる!」


 ガイカクは、しっかりと困難であることを理解している。それを惜しげもなく晒していた。


「だが、不可能ではない! お前たちがエリートではないとしても、この俺がいる! 天才違法魔導士ガイカク・ヒクメが、その叡智の限りを尽くしてお前たちへ戦術と兵器を授ける!」


 如何に己が脆弱なれど、この男が傑物であると誰もが認めている。

 誰も知らないことだが、ティストリアでさえそう発言している。


「俺は約束する……俺に従うのなら、お前たちには生存と勝利への道が開かれると!」


 その男の約束には、言葉には、虚飾はないと信じられる。


「これより……この天才魔導士ガイカク・ヒクメを団長とする……」


 彼は、騎士団の設立を宣言した。



「底辺奴隷騎士団の旗挙げだ!」



 最悪のネーミングだが、真実だった。


「おお~~! 旦那様、格好いい!」


 ゴブリンたちは大いに喜び、拍手をしていた。

 おそらく、よくわかっていないものと思われる。


「……親分、それ辞めようよ」

「先生、他のにしましょう……」

「族長……一族の名前は、もっと大事にしてください……」

「御殿様、そこは正直にしなくていいんですよ」


「ねえみんな! 私たちアマゾネス傭兵団は、奴隷ではあっても底辺じゃないよね?!」

「いいえ、底辺です。少なくとも貴方は底辺奴隷です」


 他の種族たちは、そろってテンションが下がっていた。

 騎士になっても、この男の兵器を使っても、危険な任務に就いても、嫉妬や羨望の対象になっても……。

 それでも自分たちは奴隷のままだし、眠っていた才能が目覚めたわけでもないのだと。


「うおおおお! やってやるぞ~~!」


 この『底辺奴隷騎士団(仮)』の命運は、この男が握っていた。

次回は12:00投稿予定です。

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