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森林からの帰り道――
行きと同じく警戒は怠らぬまま、しかし一同は新しく仲間となった可愛らしい召喚獣に興味津々の様子である。
「やーんかわいいです! 殺伐とした世界にこんな癒し!」
チラチラと後ろを振り返りながら、
特に女性陣からの視線に晒されながら、修太郎に抱かれる形で
『注目の的だね』
『……屈辱的な格好です』
不満の声を漏らすシルヴィア。
しかしその尻尾は忙しなく左右に揺れている。
「なーんだ、召喚獣ってもっとかっこよくて強そうなやつだと思ってたのに」
つまらなそうに愚痴る
「そんなことないよ。シルヴィアはきっとすごく強いよ?」
「そんな子犬が? 前に見たロボット召喚獣のほうが百倍もかっこよかったぜ」
『この鼻垂れ小僧め』
胡散臭そうにそう答えるショウキチ。
悔しそうに歯軋りするシルヴィア。
「今まで見かけてきた一般的な
「大きさ的に
バーバラとキョウコが冷静に分析する。
召喚獣や従魔には特殊なステータスとして〝タイプ〟が存在する。これはプレイヤーで言う所の職業と同じ扱いであり、このタイプに沿ってステータスやスキルを習得していく。
たとえばアイアンは盾役タイプに該当していた。これはmobのステータス画面から確認することができる。
デミ・ウルフの素材を媒体とした獣型は、
理由は〝死にやすいポジション〟だから。
死にやすいポジションをなるべく避けたいプレイヤー側からしたら、死ぬ可能性が高いタンクや近距離アタッカーをmobやNPCに任せられるなら、これ以上のことはない。
逆に最も軽視されるタイプはヒーラー。
AIに回復を一手に任せる不安感が拭えないという、デスゲームでは至極真っ当な理由であった。次点でバッファーも、近い理由で敬遠される立場にある。
「ねえねえ修太郎君。シルヴィアのタイプって――」
キョウコがそう尋ねようとした時だ。
『来る』
修太郎の腕から離れ、降り立つシルヴィア。
耳を立て、3時の方角に視線を向けている。
電撃が走るようなバチチッという音。
陽炎のように空間がぐにゃりと歪む。
再びの静寂――
しかし、森の中は確実に何かが変わっていた。
第21部隊の面々は悪寒のようなものを感じ取り、怖気と共に鳥肌が立つ。それは
シンと静まり返る森林――
目の前に、巨大な黒狼が立っていた
《boss mob:ネグルス Lv.37》