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依頼を受けた修太郎が合流場所に着くと、そこには防具を囲んで揉めている四人の男女の姿があった。
「もういいわ! 私が
「えええ!
「それも私がやるわっ! あんなエロじじいに任せるくらいなら一人でやるっ!」
「バーバラねえちゃんが荒れてる……」
「私ローブ見てきてもいい?」
まるで統率の取れていない集団がそこにいた。
全員が揃っているのを見て、反射的に修太郎は嫌なことを思い出す。
(前回は怒鳴られちゃったな……)
リヴィルに怒鳴られたのが少しトラウマになっていた修太郎は、恐る恐る声を掛けた。
「あの、こんにちは」
「あっ! 召喚士の子きたよ!」
修太郎に気が付いた
「お、君
一気に自己紹介したのは
年の近そうな修太郎を見るや否や、嬉しそうに近寄ってくる。
「僕は修太郎、13歳! 召喚士になったばかりのレベル10!」
「同い年じゃん! 〝友達〟になろうぜ」
よろしくなと肩を組んでくるショウキチ。
「友達……」
噛み締めるように復唱する修太郎。
我慢してきた感情が、その一言で一気に崩れた。
「え、え、どうしたの?」
困ったように修太郎を見る
必死に耐えているが、修太郎は泣いていた。
口を強く結びながらも肩を上下に震わせ、短く「ひっ、ひっ」と嗚咽している。
突然閉じ込められたデスゲーム。
奇跡的に助かるも周りは魔物ばかり。
唯一の癒しであるプニ夫もこの場にいない。
頼られた。
罵られた。
大人の醜い部分を見せられた。
大人の弱い部分を見せられた。
そして目の前で起きた人の死――
修太郎の心はとっくに限界を迎えていたのだ。
魔王達の前で弱音を吐かなかったのは、主とその配下という絶対的な距離感があったから。今まで会ってきたプレイヤー達も、修太郎を「レベルの高い屈強なプレイヤー」として接している。
心のどこかに常にあった〝孤独感〟
求めていたのは〝友達〟だった。
でもそれは今まで叶わなかった。
修太郎は13歳。
まだまだ未成熟で孤独な子供である。
年が同じであるショウキチから掛けられた思い掛けない言葉によって、ずっと押し殺してきた感情が解き放たれたのだった。
「え、俺……」
突然泣き出す修太郎に困惑の表情を向けるショウキチ。
同じくケットルもまた、男の子の涙を前に狼狽えている。
「おいで」
その胸の中で、修太郎はさらに声を大きくして泣き続ける。
「うああああああ!!」
この
レベルの低い召喚士だが、少し前まで剣士レベル31の強者で戦闘能力も高く自立した子である――そう聞いていただけに、少し身構えていたバーバラは、折れてしまった修太郎を見てどこか安心していた。
「大丈夫。大丈夫だよ」
優しく背中をさするバーバラ。
パーティは修太郎が泣き止むのを見守った。
『……』
主の
修太郎の泣き声を、ただ黙って聞いていた。