066
一連の話を聞いていた修太郎は落ち込んだように呟く。
「皆を連れて歩けると思ってたのに、僕がそこまで考えてなかったせいだ……」
「何をおっしゃいますか。むしろ
エルロードはフォローを入れつつ、その根拠を説明していく。
「主様が交流なさっていた時間、上空から召喚士や従魔使いに該当するプレイヤーを散見した限り、その殆どが〝獣型魔物〟を使役していました。人型の魔物は使役が難しい可能性があるといえるでしょう。我々は周囲に溶け込むのが目的であるため、その点も考慮すべきかと考えます」
エルロードの分析は概ね当たっていた。
まず召喚士がmobを呼び出す方法として、通常の召喚とランダム召喚の二種類が存在する。
通常の召喚は、呼び出したいmobの種類に沿ったアイテムが媒体として必要となる。
たとえば鳥型のmobを呼び出したい場合、羽根や嘴といったアイテムが必要となる。呼び出される種類は多岐に渡るのだが、例外なくその媒体に沿った種類が召喚されるのだ。
アリストラス周辺にいる多くの召喚士や従魔使いが獣型を連れている理由として、デスゲーム化に伴い迅速な戦力増強が必要となったため、最もレベルの低いmobであるデミ・ラット(レベル1〜3)か、森林内に生息するデミ・ウルフ(レベル2〜5)から媒体を得て召喚・使役したプレイヤーが多い――という背景がある。
対して人型mobは発見例が少ない。
故に、その媒体を入手しにくいのである。
ゴブリンは知能の低さから獣に区分されるため、人型mobとしての媒体にはならない。つまり、序盤で人型mobを使役するには実質ランダム召喚しか方法が無かった。
ランダム召喚は〝魔法石〟というアイテムを媒体に数多ある種類のmobから文字通りランダムに選出された個体が排出される。
しかしどちらも、
人型のmobの出現率は極めて低い。
それだけレアリティが高いという意味だ。
それは、戦闘連携が取りやすいという点以外に大きな利点が存在するからである。
その理由として、20歳以上のプレイヤーならば結婚システムや
各町に存在する〝娼館〟の存在で、その可能性に気付く者もいるだろう。
それは従魔使いにも同じ事が言えるのだが、こちらは職業スキルである〝交渉術〟による時間を掛けた説得や金品を貢いだり捕縛などで条件をパスできる場合もあるため、人型mobを仲間にするために、多数の召喚士が従魔使いに転職するという混沌とした時期もあった。
しかし人型mobは軒並み知能が高いため、邪な目的のプレイヤーからのアプローチには靡かない。
結局の所、テイミングの成功例は極めて少なく、人型mobを使役するプレイヤーはごく僅かとなっていた――
「分担ができて分かりやすくなったではありませんか。私と
言うなれば、人型と獣型に分かれるという意味ですね――と、エルロードは付け加えた。
修太郎はシルヴィアを眺めた後、チビ黒竜となったセオドールを見て「シルヴィアもあんな風になれるんだ」などと考えていた。
「なーんだ、俺も居残り組かァ」
つまらなそうに頭の後ろに手を回すバートランド。
「スライムのように形状変化のスキルを習得すればその限りではありませんが。誰かのように、スキル持ちを自分の世界で募ってみたらいかがですか?」
釘を刺すように言いながら、エルロードは二人の魔王を横目で見る。
バンピーとガララスは何のことだと言わんばかりにとぼけて見せた。
「なら、最初は誰にしよう……」
選べるのはプニ夫、シルヴィア、セオドール。
そう言いながら、修太郎が周囲を見渡すと
「恐れながら主様――!」
一人の魔王が立ち上がった。