052 s
ウル水門――
かつて存在した町の中心に、流れていた川の向きを変える役目で設置された巨大な水門。塩害に悩まされたその町の守り神として重宝されたその水門も、町が侵攻によって破壊されたことで人々が去り、廃れ、今は使われていない。
美しかった水門は小汚い緑色の小人達の住処として、かつて栄えた町の朽ちた姿を今も見守っている。町の残骸を根城にゴブリン達が多く住み、侵入者を容赦なく襲う危険なエリアと変わり果てていた――
「
「いっけね!」
ウル水門にある朽ちた宿屋の前で、第21部隊が戦闘をしていた。
戦場に
「
向かいくる二体のゴブリンに対峙するミサキは、誠の的確な指示に目を丸くしていた。彼は敵の攻撃を一手に引き受けている上に、後ろにいる味方の動きさえも把握しているからだ。
「《連射》」
ゴブリン達の悲鳴が響き渡る。
「ショウキチに《癒しの衣》」
タァン! タァン!
二体のゴブリンが吹き飛ばされる。
連続する破裂音と同時に二体のゴブリンはたちまちその体を爆散させ、戦闘完了を告げる音と共に戦利品画面がポップした。
「ショウキチ、お前また攻撃を欲張っただろ? 余計な被弾したらバーバラの仕事も増えるし、お前自身も痛いだろうが」
「残り8%とかだったからつい……」
「ケットルは分かってるよな。外すリスクを考えて範囲を優先するのは間違いじゃないが、敵視が剥がれるのを嫌う盾役も多い。三体未満の場合は俺が狙う敵を優先撃破だ」
「うん、ごめんなさい」
先に進みながら、誠は二人の子供を注意する。
その内容はとても的確で、言い方もそこまで尖っていない。彼らに配慮していることが分かる。
一頻り戦闘指南を終えた誠は、ミサキに向き直る。その顔は驚きに染まっていた。
「しっかしミサキさんの攻撃はほんとエグいわ。命中精度も鬼だし」
「うんうん。ショウキチ達の実践訓練終わったらミサキさんが処理する流れが一番早いわね」
呆れるような声で言う誠とバーバラ。
ミサキはそれに苦笑いでしか返せない。
セオドールから貰った装備品が普通じゃない事を知ったのは、店売りの商品と見比べた時だ――特に銀弓の性能が高いため、貰った矢と合わせると威力は異次元になる。
だから特別な銀の矢はしまっておいて、ミサキは店で売っている最安値の矢を60スタック(100本×60)ほど購入しそれを使うようにしている。
矢は消耗するが、これでもこの辺一帯のmobには