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INTERMISSION23 VS『灼焔』(前編)

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【勝手にルートを】TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA【作るんじゃあない】

『983,456 柱が視聴中』


【配信中です。】


〇鷲アンチ    おいどうするんだよこれよおなあ!

〇適切な蟻地獄  知らない言葉しか出てこねえ!そういうゲームだったのコレ!?

〇外から来ました 死に設定の多いゲームとは聞いていたが!聞いていたが!

〇つっきー    ルシ様と公然デートなんて、羨ましい……!だけど幸せになってほしい……!私は……私はどうすれば……!?

〇苦行むり    この人ある意味ほんとブレねえな

〇無敵      ……ちょっと世界形成プロセス巻き戻して観測するか?

〇日本代表    それがロールバック弾かれてるんだよ

〇ミート便器   お前それ権能制限食らって……え?

〇火星      は?これまさか神域侵犯案件なのか?

〇日本代表    今も観測できてるのはマリアンヌと繋げたラインを必死に維持してるからで、そのラインも気を抜いたら一瞬で切られそうなんだよね

〇みろっく    ちょっ、え?運営不全起きてるのに干渉できないって……え?

〇日本代表    はっはっは。もう何も考えたくない

〇無敵      お前……ちょっと休め……いや休むわけにはいかないのか……

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 クソデカゴーレムが顕現し、その肩からユートがこちらを見下ろしている。


「それだけの巨体、制御も大変でしょうに」

「お気遣いどうもな。だが、実際そうでもねえんだわ」


 へえ、と相づちを打ちながら、魔力の循環路を確認する。

 分厚い装甲に覆われて詳細を視認することはできないが、やはり足下から魔力を吸い上げているのは分かった。

 正面から砲撃を撃ち込んで、どこまでの痛手を負わせることができるか。やってみないと分からないが……まあ、六節とかじゃ焦すこともできないだろう。



〇火星 だろうな。アレ、モロに十三節詠唱からの正統派生だし

〇ミート便器 どっかの誰かのツッパリフォームとは違う正統進化じゃん



 こっちも正統進化じゃい!

 となるとやはりこちらも、ツッパリフォームを解除し、十三節詠唱の砲撃を叩き込むしかない。

 ただなあ。禁呪の使用は許可されたけど、全力の撃ち合いまでやっていいかどうかは微妙なんだよな。ていうか単純に、禁呪の結界といえど禁呪同士の激突に耐えられるとは思えない。

 まあ結界ぶち壊された国王の顔が見てみたくないと言えば嘘になるが。



〇トンボハンター 国王の胃をいじめるのはやめて差し上げろ

〇101日目のワニ 禁呪二個に禁呪一つで勝てるわけないだろ!



 思えばリザード相手には、最後は無理矢理火力で突破していた。

 あれは成功したから良いものの、格上相手にあんな自爆まがいの特攻しか選択肢がないままでは、命が幾つあっても足りない。


「さて、流星使い。お前の評価を聞きたいんだが……ハッ。いい目だねえ。どうやってぶち壊すかを考えてやがるな」

「端的に言えば凄まじいの一言に尽きますわね。これが戦場なら、ゴーレムは無視して迷わずアナタを直接狙います」

「だろうな。お前が戦士なら。あるいは俺が敵対する兵士ならそうする」


 彼は悠々とゴーレムの頭部に手を当てて、不敵な笑みを浮かべる。

 そして。


「んじゃあさ。命を懸けた戦場じゃなくって、互いの誇りをかけた戦いなら?」

「当然────そのオモチャを粉々に破壊して差し上げますわ!」


 啖呵を切ると同時、わたくしは大きく横に回り込みつつ右手に魔法陣を展開。


星を纏い(rain fall)天を焦がし(sky burn)地に満ちよ(glory glow)──!」


 ツッパリフォームと別枠で起動(ラン)させるのは、三節詠唱の砲撃。

 狙うのは当然、大地と接続した両足!


「砕け散りなさい!」


 隕石を象った魔力砲撃が魔法陣から飛び出し、レーザービームのように脚部を穿つ。

 しかし。


「効かねえなあ!」

「チィ……!」


 煙が晴れた先には、無傷の脚部。当然か。

 ゴーレムがわたくしを見据えると、その右足を振り上げる。一挙一動で大気が爆砕され、余波に身体が吹き飛ばされそうになる。

 ここまでスケールが違うと、攻防が成立しない。何せ羽虫を払うどころか、方向転換するだけで軍隊を蹴散らせる有様だ。


「踏み潰せ!」


 主の命令に従い、ゴーレムが足の裏でわたくしをぺちゃんこにしようとする。

 さっきから見下しやがって!


「おあいにく様! 待ってましたわよ!」


 右手をつうと滑らせる。

 身体前方に計四つの魔法陣を横並びに展開させ、魔力を伝達。


星を纏う者(rain fall)天を焦がす刻(sky burn)地は満たされる(glory glow)!」

「詠唱改変だと……!?」

「──極光は我ら(vengeance)のすぐ傍に(is mine)ッ!」


 詠唱改変による時間差砲撃。

 四つの魔法陣からコンマ数秒のラグを挟んで、次々と砲撃が放たれる。足裏の同一箇所に狙い過たず着弾。



〇火星 威力を落とさず並列化か!

〇適切な蟻地獄 こいつその辺の速度と精度も上がってるな……!



「時間差攻撃か! だが一つ工夫しただけで破れるほどヤワじゃ──」

「────お忘れですか? 十三節詠唱分の威力はもうありますわよ?」


 煙を突き破ってわたくしが飛び込んだのを見て、ユートの顔色が変わる。

 バチリと、右手が紫電を散らす。拳の先から肘にかけてを順に、流星の輝きが覆う。


「右腕限定上限解放! 25%悪役令嬢パァ────ンチッ!!」


 まったく同一の部分に四連射。そこから本命を叩き込む、定石通りの波状攻撃。

 叩きつけた拳を起点に、ゴーレムの全身へと衝撃が通っていく。

 右足がバラバラに砕け散り──破片が、空中に静止した。


「な…………ッ!?」

「どうやら、再生力を甘く見ていたみてーだな」


 大慌てで距離を取る。

 空中の破片が巻き戻し再生のように脚部を復元し、わたくしがいた地点をずしりと踏み潰した。


「言ったはずだぜ? 『灼焔』最大のアドバンテージは持続性……一帯の魔力が尽きない限りは無尽蔵に戦い続けるタフネスこそが売りだ! そこをナメてもらっちゃ困るな?」


 ちょっとこれ本気でどうしようもないのでは? このスピードで再生可能なら、連射で押し崩すんじゃなくて一発で勝負を決める必要がある。

 間合いを計りつつも、冷や汗が止まらない。打開策が思いつかない。

 十三節を叩き込むしか、なくね?


「さあさあ続きだ! 派手に踊ってくれよ!」

「チィィ──!」


 豪腕の一振り。巨腕の薙ぎ払いは、広範囲攻撃として成立するスケールだった。

 両足に出力を集中させ、大きく跳躍し後退する。


「その逃げ方はよくねーぜ、マリアンヌッ!」

「な……!?」


 完全に読まれていた。左腕を振るいながら、ゴーレムは右腕を引き絞っている。

 薙ぎ払いは次の一手への準備動作に過ぎなかったということか。

 着地した瞬間をピンポイントに狙い澄ました、巨躯の右ストレート。緩慢さのない恐ろしいスピード。


「両腕限定上限解放! 20%悪役令嬢ガァァァァァドッ!!」

「そのかけ声本当に必要か!?」


 巨大な拳を、両腕で受け止める。

 接触しただけで強い衝撃が全身を叩く。上半身が消し飛んだかと思った。


「ふ、ぎぎぎ……!」


 だが──拮抗できている。靴底で地面を削りながらも、なんとか耐えられている。


「ぎぎぎぎぎぎっ……!」

「お、おいおい……マジで受け止めるのかよ。やっぱスゲーなお前」


 テッメェさっきから見下しまくり余裕出しまくりだな! クソムカつく!


「マジでお前は俺より先を行ってると、俺は思ってる。だから敬意を持って、お前に勝つ!」

「寝言は……寝て……いいなさい……ッ!」

「いいや──もう布石は打ってる」


 その時だった。

 後ろへじりじりと押し下げられていたわたくしの足が。

 ずぷとイヤな音を立てて────地面に沈んだ(・・・・・・)


「は?」


 大慌てで見渡すと、ぼこぼこと、アリーナの地面が泡立っていた。

 ……ッ!? 液状化している? いいやこれは!


「俺の『灼焔』は、地面を介して大量の魔素を取り込む禁呪。ならよお、考えるべきはこんなゴーレムを造り出すことじゃねえよな。戦略級だってことを考えれば、多分これが本来の使い方なんだろうよ。それは……一帯の地形を丸ごと掌握して、超高熱のマグマで満たすことだ!」



〇みろっく これって、そうなの?

〇鷲アンチ 最適解なのは確かだけど、できるだろうって考察されてたレベル。マジモンを見るのは初めてだな……



 ツッパリフォームの紫電が激しく散る。

 地面が人体を融解せしめるほどに高熱を持っていて、それを弾くために出力を自動で上げているのだ。

 冗談じゃない! こんな不安定な足場で踏ん張れるかよ!


「禁呪以外の戦略級魔法、つまりは十二節詠唱魔法の研究をちょっとしてみたんだがな。あれは戦場を激変させるために、外見すら計算していた。人間の心理も組み込んだ見事な魔法だよ。同時に思ったんだ──その考え方、使えるよなぁ?」


 ゴーレムの肩に乗って、ユートが厭らしく笑みを浮かべる。


「こいつを顕現させりゃ、こっちを見るよなあ! デカイから顔を上げちまう! 足下なんて気にしなかっただろ!? 当然だ、どう見てもこっちが本命なんだから! 強力な魔法であるほど外見は派手なんだからな!」

「……ッ!」


 悔しいが彼の言うとおりだ。手のひらの上で踊らされていた。このわたくしが!

 足下からマグマが迫り、右ストレートが変わらず両腕を封殺している。

 どうにも身動きができない。出力の突破もできない。

 呻きながらも必死に思考を回す。だめだ考えるのを止めたらマジの敗北だ! 考えろ考えろ考えろ!!


「ぐ、ぐ、ぎぎぎぎ……」


 下手に気を抜くと拳に圧殺される。

 このままではマグマに体力を削り殺される。

 どのみち、いずれ力負けして、死ぬ。

 一筋の光明を探して頭脳がフル回転するが、突破口が見つからない。



〇TSに一家言 これさあ……詰んでね?

〇つっきー ルシ様の隣に立つならこんなんで負けんな!



 言われなくても分かってる!

 何か、何かあるはずだ! 少なくとも片方さえ突破できればまだどうにかなるのに……!


「仕上げと行くぜ! 炸裂衝(ネオインパルス)撃拳(・フィスト)ォッ!」

「えっちょっ、そのかっこいい名前はズル──」


 言葉の途中で。

 ゴーレムの右の拳が、内側から炸裂した。

 構成する物質がマグマなら、それを至近距離で炸裂させ攻撃に転じさせるのは実に合理的だ。再生も超高速で行われる以上ノーデメリットに近い。


 いやいや。

 そうじゃなくって。

 お前これ完全に殺す気じゃねえか──!



〇無敵 でもお前、半端にHP残したら第二形態移行して超火力で逆襲してきそうだし……



 叫ぶ暇もなく、わたくしの視界が烈火に埋め尽くされた。

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