PART29 その魂、烈火の如く
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【いつか世界を】TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA【滅ぼすために】
『13,568,449 柱が視聴中』
【配信中です。】
〇red moon 待って待って待って本体の台詞!?!?!?!
〇鷲アンチ おいルシファー本体出てるぞおい!!!!
〇日本代表 スレ書き込んどいた、もうワケ分かんねえ
〇トンボハンター 初見
〇つっきー しょけうわああああああああルシ様が喋ってる!?
〇苦行むり さっきの脚本家って結局IP抜けた?
〇日本代表 だめだった、ていうかあれも下請けっぽいんだよな
〇つっきー この走者に深く、深く感謝します
〇みろっく ルシファーの女さんがいらっしゃいますね……
〇火星 えぇ……マジで……マジでルシファー本体が出てるのか……
〇無敵 散々やり込んだと思ってたのにこの女俺たちのプレイ時間を粉砕してそんなに楽しいか
〇日本代表 気持ちは分かるけど、大体あの雷野郎のせいだからな……
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「覚えたぞ、マリアンヌ・ピースラウンド」
名を呼ばれ、なんかもう呆然とするしかなかった。
「人の身でよくそこまで練り上げた。称賛に値する」
ほ、褒められてる? これ褒められるのか?
困惑に周囲を見渡す。みんな流石にぽかんとしていた。
いやまあ、そうか。大悪魔、わたくしを褒めてるのか。フフン、悪い気はしないな。
「フッ……お褒めいただき光栄ですわ、地獄の支配者。大悪魔ルシファー。アナタから賞賛されるのは誇りであると同時、当然ですわよ。わたくしこそが、最も優れた者ですから」
「そなた、本当に誰が相手でも対応変わらんの……」
国王アーサーが呆れたような声を上げる。
だが、ルシファーが、明確に首を横に振った。
「違うな。お前より優れた戦士とは何度も相見えた」
「な……ッ!?」
「そして、その尽くを滅殺してきた」
こいつ、負けたくせにマウント取ってきやがった!?
「ハハーン! 負け惜しみですの? 結果として勝利したのはこのわたくしですわ! ざまあみなさいですの、べーっ!」
「やめなさい」
「あぶっ」
全力で煽り倒していると、隣のジークフリートさんが頭にチョップしてきた。
地味にいてぇ、ちょっと涙出てきた。
だがそうしていると、ルシファーはもう一度首を横に振る。
「違う。おれはお前を賞賛している」
「……はい?」
「この大悪魔ルシファーは知っている。本当に厄介な敵とは、力自慢であること、賢いこと、冷酷であること、そのどれでもない」
「……ッ?」
「ただ迷いなく強いこと。純度の高く、透き通るような強さを持ち、まっすぐ、迷いなく戦い続けられること。そうだ、美しいかどうかこそが肝要なのだ」
言葉を並べながらも、ルシファーが静かに右手を差し伸べてきた。
攻撃かと周囲の人々が警戒するが、違う。そういうのじゃないこれ。
「ああ、マリアンヌ────お前は美しい」
「は? 当たり前ですが?」
横でロイが頭を抱えるのが見えた。
なんだ、文句あんのか。
「お前という存在、確かに、このルシファーに刻まれた。故にお前も刻め。我が名はルシファー……天より追放されし者。この世界をいずれ滅ぼす者」
「はぁ……えっと、これ自己紹介だったりします?」
「いや自己紹介って、お見合いじゃないんだから」
「肯定する。お前にはおれの存在を刻んで欲しい。人間らしく言えば……おれの名前はルシファー。今後ともよろしく」
「よろしくしたくないが!?」
流石にユートが声を上げた。
まあ確かに、端末でこんだけ被害出たんだからあんま来て欲しくはねえよな。
それはそれとして。
「名乗られては仕方ありません。こちらも名乗りましょう!」
「あ、やっぱそうなるんだ」
完全に諦めきった声色でリンディがぼやく中。
わたくしは右手で天を指さして叫ぶ。
「わたくしは世界の頂点に輝き、誰よりも先を駆け抜ける女! 覚えておきなさい。ええ、刻みつけなさいッ! わたくしの名前はマリアンヌ・ピースラウンド! 立ちはだかる者全て、絶死を覚悟なさい!!」
「おお……素晴らしい名乗りだな、マリアンヌ……」
「ちょっと待って! あんた大悪魔のくせに、美的感覚がマリアンヌと同類なの!?」
「貴様は……マリアンヌの友人か。すまない、次に来るときは、何かの手土産を持ってこよう……」
「えっ、あ、お気遣いどうも……じゃないわよ! 今外堀埋めに来たわよね!?」
「人間はこうして付き合いを深めるとベリアルから聞いたぞ。物を贈ることは前提であり、自分は礼を理解した存在だと示す意味があるとな」
「礼儀以前に世界が吹き飛びそうだったんだけどぉ!?」
「凄いですわねリンディ、大悪魔相手にも怖じ気づかないなんて」
「好きでやってるわけじゃないわよこのクソボケ共!」
地団駄を踏みながらリンディが悲鳴を上げる。
今まで全然気づかなかったけど、ここ最近、もしかしたらリンディって母性滅茶苦茶強いんじゃないかって気がしてきたな……
〇TSに一家言 そうわよ
〇太郎 お前じゃ勝負にならないぐらい母性あるよ
【は? あったまきた! 負けませんが? わたくしの圧倒的勝利ですが!?】
〇適切な蟻地獄 「負」の文字に反応するbotなのか?
〇無敵 お前が積んでるそのエンジンは法規制するべきなんだよな
静かに対抗心を燃やしている間にも、隣でリンディが大悪魔に対してあーだこーだといちゃもんをつけていた。
「大体地獄を統べる大悪魔なんでしょう!? 何でそんなやつが、マリアンヌに用があるのよ!」
「ああ、確かにその理由は気になりますわね。婚活でもしにきたんですか?」
「えっ? 何です? こんかつ……?」
ユイさんが聞き返し、他の連中も首を傾げる。
あ、これこっちの世界にはない言葉だったんだ。
「情報を検索……婚活。合コンやお見合いパーティーへの参加、結婚相談所や情報サービス会社への登録など、結婚相手を見つけるための積極的な活動か」
「アナタ今ググったでしょう!?」
ルシファーがすらすらと婚活の概要を言って、流石に絶叫した。
おいそのアクセス権限よこせ! フロムソフトウェアのHPにアクセスさせろ! なんか新作出てる!? 後ヨコオはどうなってる!? なあ!?
発狂寸前で詰めよろうとするわたくしに、ルシファーは訝しげに問う。
「結婚相手というのを、人生を共にするパートナーと言い換えても構わないだろうか」
「えっ? え、ええ。ほぼ同意義でしょうね」
「ならば肯定する。おれは婚活をしている」
「はい??」
「世界の滅びは確定した。遠い先であろうと、おれが目覚めし時、必ずこの世界は滅亡する」
淡々と。
もう決まり切った、決定事項を連絡するように。
大悪魔は世界の終わりを告げた。
「だが、おれにとって世界の滅びは最終目的ではない。ならば、その後を見据え……共に過ごしてくれる存在が欲しいと、思ったんだ」
「……それ、で?」
「マリアンヌ──お前こそ、その存在に相応しいのかもしれん」
その言葉を聞いて。
わたくしとルシファーの間に、何人か割り込もうとした。
行動の予兆を察知し、手で制する。
「……光栄ですわね。世界の終わりを見届ける特等席というわけですか」
「そうだな」
「ならば断言しましょう。世界は滅びませんわ」
「ああ、お前ならそう言うと思った」
少しだけ口元をほころばせた後。
だがルシファーはすぐ、鉄のように冷たい無表情に戻った。
「しかし事実は事実だ。おれは世界を滅ぼす。決定事項だ」
「先ほども言ったでしょう! 何度やっても結果は同じ! 百度戦えば百度わたくしが勝ちましょう! 故に! 世界の滅びは訪れません!」
わたくしと大悪魔の視線がぶつかり、火花を散らす。
──だが、ルシファーがふっと顔を伏せた。見れば彼の身体は、既に半ば粒子となって解けていた。
「時間だ」
「……そのようですわね。次はできれば、お茶でもしましょうか」
「フッ、いいな。楽しみにしておこう……また、会いに来る」
「いや、やめてくれんかのう!?」
国王アーサーがガチの絶叫を上げた。
ルシファーがばいばいと手を振ってくる。逡巡してから、わたくしは手を振り返す。
「……マリアンヌ。最後に一つだけ」
「はい?」
「端末顕現は4つ。そのうち1つであるこの身体、かなりの制限がかかっている。端末故ではない、恣意的なものだ。召喚術式が半端に改変されている……気をつけろ。おれの力を、悪用しようとしている者がいるぞ」
「なるほど……いや、世界を滅ぼすのなら、アナタがアナタの力を最も悪用しているのではなくて?」
「…………おお」
「馬鹿すぎません!?」
感心したような表情を浮かべて、彼の頭部がてっぺんまで光の粒子に還った。
最後の最後にとんでもねえイベントを挟みやがって。
あ~~、マジ疲れた。
思わず蹲りそうになる。てか座り込みたい。いいすか? 自分、マジで座っていいすか?
その瞬間だった。
目の前に、配信画面とは別の画面が立ち上がった。
SYSTEM MESSAGE ▼
条件を満たしました ▼
【血染の花嫁/天魔来たりて】ルートが解放されました ▼
【?】
〇鷲アンチ 草
〇太郎 草
〇外から来ました 草
〇無敵 ? じゃないが
〇日本代表 ああああああああああああああああああもおやだあああああああああああああああああ
なんかまた新規ルートが解放されたな。
随分とものものしい名前のルートだ。わたくし、虐殺ですとか言っちゃうの?
【ていうか……何? ルートとは分岐するものではなくて? 解放されたらアナウンスされるものなのですか?】
〇適切な蟻地獄 通常EDなら特にそういうのはないけど、隠しEDは√突入のための条件をクリアしたらアナウンスが入るよ
〇みろっく 今回のこれはどういうルートなん?
〇火星 いや……こう……もう言葉が出てこねえ……
【えぇ……? 大丈夫ですか?】
〇火星 大丈夫じゃない……これ、簡単に言っちゃうと世界滅亡するEDの中で唯一バッドエンド扱いされてない、まあメリバってやつなのかな。ルシファーからの好感度を稼ぐと突入できると言われていたんだ
〇みろっく 言われていた?
〇苦行むり ……ルシファーって端末顕現しかしないから、本体の台詞なんて今まで一言も確認されてないんだよ
〇火星 好感度上げようがなさすぎて永遠に確認できないから、ライターがギャグで言ってるEDだと思ってた……マジか……マジで実在するのか……
【なんだかよく分りませんが……追放エンドにカウントしてもいいのでしょうか? もしそうなら全力で狙いますわ!】
〇第三の性別 判定は?
〇日本代表 世界から追放されなきゃいけないのに世界を滅ぼしてどうすんだ馬鹿
〇外から来ました だそうです。解散
〇日本代表 あとルシファーが積極的に顕現狙い始めるのがチャプター10個分ぐらい前倒しになったけど、世界滅びたら失敗扱いなので、ご愁傷さま
【あーーーーーーーーーー
あ~~……えっと、これってえ……】
〇無敵 要するにラスボスがこれから先のRTAを全力で妨害してくるようになった
〇スーパー弁護士 お前、ツーアウトってわけ
やっぱりな。ハッハッハ。
ああああああああああああああああああああもおやだあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!