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第八夜 つぶ餡たっぷり粒々小豆シェイク①

こんにちは、作者の食欲の塊と申します。

昨日、サイトを広げみるとブックマークがすごく増ええてて『ふぁ!?』って思わず奇声をあげ、自分の目を疑ってしまいました(笑)(その後、見間違いかなと思いもう一度みて合ってると分かると『ふぁ!?』ともう一度叫ぶ)

読者のみなさま、ありがとうございます!これからも応援よろしくお願いいたします。

では、小説を今日もお楽しみくださいませ…!!

アクアが異世界へと来てから五日目。やっとこっちでの生活に少しずつ慣れ、薬のおかげでまだ完治とまでは言わないが大分怪我の具合も良くなった。アクアは自ら進んでサクラの手伝いをできる程元気になった。

取り合えず急いでサクラはアクアの生活に必要な服は古箪笥から若い頃、渋三朗が着ていた服が見つかりサイズが合いそうなので複数枚引っ張り出し(アクアが着られるよう改良はしてしまったが)まだ完全ではないが日用品もある程度、用意はした。

肌に当たる心地よい風と、新緑の木漏れ日が初夏の始まりを知らせる。今日は土曜日、学校も休みなので落ち着いて昼の営業に専念できる。朝の神社の掃き掃除も終らせ、アクアと一緒に畳のリビングにて今日の朝ご飯、ぱっりと芳ばしく皮ごと焼いた鮭のお茶漬けをまったり食べていた所であった。

よく脂の乗った炙り鮭とよく焼かれ皮、そしてあっさりとした茶漬けがまた食欲を刺激する。

正にこれが理想の日本人の食事風景だろう。


「アク君もここの生活に少しずつ、慣れてきたねぇ」


「いえ…店長が色々と親切にしてくれるので」


「あっ!でも、テレビをつけた時のあの『くせ者っ!!』って、魔法でいきなり攻撃して壊しちゃったのは驚いたなぁ~…」


「ヴッ……!本当にその件はすいませんでした」



それは昨日、サクラが明日の天気を確認しようと何気なくテレビをつけた瞬間のことであった。

アクアは突然赤い箱の中から現れた人に驚き、反射的につい昔の癖で水で生み出した苦無(クナイ)に似通った複数の刃を容赦なくテレビへと投げつけた。

それはもう洗練された迷いのない鮮やかな技で、画面の中のお天気お姉さんの顔面に的中した。ついでに『ボンッ!』っと派手な爆破音と共に、見事にテレビの息の根も止めてくれたのであった。アクアにとってここ最近に起きてしまった出来事で一番苦々しいものとなってしまった。


「ううん、私の方こそごめんねぇ?説明するのすっかり忘れてたよぉ。異世界のお客さんの中にもテレビ見たいっていうお客さんもいるから、つい忘れてたぁ~。…びっくりさせちゃったよね?」


「い、いえ僕は大丈夫なんですが…それよりあのてれび、というもので何か調べようとしていた訳ですから店長が困まってしまうのではないかと……」


アクアの尻尾がへにゃりと下がる。それとなく顔も落ち込んでいる。


「んー。確かに困るは困るけどお店の方にももう一台置いてあるし、暫くの間はそれでお天気予報は見るから大丈夫だよぉ」


「本当に、すいませんッ……!」


アクアの本で得た知識は異世界での生活ではまったく意味を持たず、自分の体験で慣れていくしかなかった。


「そんなことより~」


サクラは目をキラキラさせてアクアを見つめる。


「びっくりちゃってあの時は聞き忘れちゃっけど、アク君って魔法使えたんだねぇ~」


「はい、僕の魔力は水系統なので水系統の魔法なら大体なんでも使えますよ」


魔法には生まれ持った魔力により系統が決まっていた。風、水、火、地、雷の基本五系統なのだが稀に二つの特殊な系統である光、闇という珍しい系統を持つ者が生まれ、とても重宝される身となる。

アクアは魔法で手から水を取り出し、サクラの目の前で自由自在に形を変えてみせた。すると更にサクラは目を輝かせた。


「うわぁー!アク君、すごいねぇ~」


「店長はもしかして系統なしなんですか?」


系統なしとは言わば魔法の使えない人間・魔族のことを現す言葉であり、特に魔族の国では差別用語として使われることもあった。


「私だけじゃなくてこの世界の人はみ~んな、魔法は使えないよ」


「えっ、では料理を作る時の火の魔道具は?なのネジを捻ると出てくる澄んだ水の魔道具は??」


魔道具とは魔法が使えない人もしくは系統別の魔法を使えるよう開発された、魔力を込めた魔石がはめられた道具のことである。アクアはここにある物全て魔道具だと思っていた。


「アク君、あれはねぇこの世界では科学って言うんだよ」


「カガク……」


アクアは始めて耳にする言葉であった。


(成る程、この世界は魔法は存在しないがその代わりにカガクというものが発展したわけか)


「アク君~、ご飯食べ終わったら包帯交換しようね」



今日も朝から鮭の茶漬けをアクアは二回おかわりした。満足したら、アクアはきちんと食べ終えた皿を流しの中へと運び、包帯を変えるためサクラの前で腰を降ろし上着を脱いだ。サクラは丁寧に肩、腕を包帯を取り返え、腹と背中を覆っていた包帯も取る。

もう腹の怪我は傷一つなく綺麗に塞がっていた。


「凄い……!もう、怪我治っちゃってる」


「店長がくれたコロッポクルの秘薬のおかげでもありますが、僕は魔族の中でも特別丈夫なんで……」


「うん、じぁこれならお風呂も入れそうだねぇ」


「えっ、ふ、風呂ですか?」


サクラが必ず夜に入っている風呂というもの。水を温かくした湯を浴び、浸かるらしい。

サクラはくんくんとアクアの体を嗅ぐ。


「アク君、少し匂うよ~?」


(ッ!!?)



アクアの世界にも水浴びという習慣はある。アクアも流石に水浴びぐらいなら普段はしているが、湯を浴びたことはなかった。怪我のせいもあったが久しく水には使っていなかったアクア。そして、何よりサクラの言葉に些かショックも受けていた。


「そ、その僕は水浴びでいいんで……」


「えっ!なんで?」


「えーっと……僕の世界は温かい水の中に入る習慣がなかったものですから」


「どうして?気持ち良いよ??」


「…………」


「?」


あんな純粋な目で首を傾げながら言われて断れる奴が要るだろうか?

「肩と腕は濡らしちゃダメだよ~」っと、サクラ言われその事を頭に入れつつ、重い足取りでアクアは風呂場へと向かって行ったのであった。



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