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第十五夜 抹茶豆腐の白玉ぜんざい

仕事がつらい……。でも、小説書きたい(´;ω;`)


「お待たせしました『抹茶豆腐の白玉小豆ぜんざい』です」


鮮やかな緑色の豆腐はひし形に切り分け、もちもちの丸い白玉とひんやりとよく冷えた甘い黒い餡子の汁が綺麗なコントラストをなす。横に添えられた銀色のスプーンをとる。銀のスプーンの上でダンスを踊るように揺れる緑の抹茶豆腐。それを贅沢に口の中へ放り込む豆腐小僧。



「んー……!んまぁ……っ!!」


滑らかに越された豆腐の甘みと抹茶のほろ苦さが合う。

更によく冷えた餡子の汁は抹茶豆腐と一緒に食べると美味しい。

大好きな白玉は最後まで残し、暫くは抹茶豆腐とぜんざいで楽しむ。


「店長、ここで作られてる豆腐と豆乳を使った和菓子は全部豆腐小僧さんが作った豆腐や豆乳で作られているですか?」


「そうだよぉ~!豆腐小僧君のお家が作る豆乳とお豆腐は栄養もあって絶品だからねぇ~。前にアク君に出した料理の中にも豆腐小僧君が作ったお豆腐を使ったんだよぉ」


確かに以前の料理に出てきたあの白い『シラアエ』という料理はとても旨かった記憶があった。


「俺んちの豆腐小僧一族は初めて人に喰わせてカビを生やさなければ晴れて立派な一人前の豆腐小僧として認められる……。くっ!辛い修行時代、今思い出すだけでも涙がでちまう……」


辛い修行時代を思い出し、ちょっぴり涙が出でしまう豆腐小僧。


「え、カビが生えるんですか……」


「うっす!それが豆腐小僧の性質なんですよ」


「うん。だって、豆腐小僧だもんねぇ?」


『仕方がないよぉ~』と呑気にサクラは今は言っているが、お客にカビを間違って生やしてしまったらまずかったのでは?と思うアクア。

まぁ、そこはきっとサクラが豆腐小僧の豆腐に対する腕を信じていたのでこれぽっちも心配などしていなかったのであろうが。


「ここの店が俺が作ったの豆腐を使ってくれっから、異世界の人たちにも豆腐の良さも知ってくれるし、ここで豆腐を使った菓子を食べて噂を聞いた人外が妖怪商店街店にある俺んちの豆腐屋来てくれて豆腐も買っててくれるんだ。今じゃ常連の客も出来て……。だから、本当に『月見草』には世話になってます」


昔、豆腐小僧の一族は他の妖怪たちに騙され多額の借金を背負わされたことがあった。一族皆で路頭に迷いかけ困っていた頃、優しく手を差し伸べてくれたのが歴代の『月見草』の店主たちであった。

それからは必死に豆腐小僧の一族も人が食べてもカビを生やさない豆腐作りを勉強した。

そして懸命に重ねた努力もあり、ついに一族は仕事を持つことができどん底からここまで上り詰めることができた。

もし、歴代の『月見草』の店主に拾われてなかったらと思うと貰えなかったらと想像するだけで豆腐小僧は背すじがぞっとした。

なので、お世話になっている『月見草』には本当に感謝の言葉しか出なかった。



「ごちそうさまでした!」


あっという間にぜんざいを平らげ、緑茶を飲みきった豆腐小僧。



「じゃ、俺は仕事に戻ります!サクラの姉さん、アクアの兄貴!!お先失礼しますッ!!」



丁寧に頭を下げ、その足は忙しそうに店から立ち去っていた豆腐小僧。

大量にある豆腐を見て「今日はせっかくだから湯どうふでも作ろうかなぁ~?」 っ と、ぽつりと呟いたサクラの言葉にアクアは密かに今晩のご飯に楽しみを抱いたのであった。

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