第十四夜 豆腐小僧の『豆腐道』
「こんちぁー!サクラの姉さん!!」
今日の夜の営業も無事終わり、店の片付けをしている最中のことであった。店内に元気な大声が響き渡る。
「えっと……店長にご用でしょうか?」
アクアは今来た人物、金髪のリーゼントに紅葉の葉が描かれた派手な服に姿をした少年に話しかけた。
人間に姿は似ていたが、直ぐに気配で人間ではないことにアクアは気づいた。
「うっす!サクラの姉さんを呼んで貰えないでしょうか!!」
大声で元気に返事をする金髪の少年。大変元気でよろしいのだが、大声が耳に響き、少しうるさかった。
「アク君~、お掃除終わったぁ~?」
すると、アクアの様子を見に調理場の洗い物をしていたサクラが奥から出てくる。
「うっす!サクラの姉さん!!豆腐お届けに参りましたー!」
「あっ、豆腐小僧君。ご苦労様ぁ~」
豆腐小僧と呼ばれた少年は盥に一杯作られた豆腐をサクラに渡した。
「はい、これお豆腐の代金ねぇ~」
「うっす!確認させて頂きます!」
サクラは予め用意していた封筒に入れた豆腐の代金を豆腐小僧に渡し、豆腐小僧も封筒の中身の代金をしっかりと間違えがないか確認する。
「はい、確かに丁度頂きました!!」
「せっかくだからぁ、豆腐小僧くん何か食べてく~?」
「うっす!じぁ、言葉に甘えて頂きます!!」
「それじゃアク君、お席にご案内してあげて」
「はい、分かりました。では、此方のお席の方にどうぞ」
アクアは豆腐小僧を席に案内し、お絞りとメニューを渡す。
「そう言えば、お兄さんとは初めてましてですよね?」
「はい。ここで今働かせもらっているアクアと申します」
「うっす!そうだったんですか、よろしくお願いしますッ!!アクアの兄貴!」
ガバリとアクアに頭を下げる豆腐小僧。金髪にリーゼントという奇抜な姿をしていたが礼儀正しかった。少し暑苦しい感じもするが、それでもすぐに少年の気立てのよさは伝わった。
「じぁ、改め紹介させ頂きます!俺は豆腐小僧!!此の方、豆腐だけを愛し、作り続けてはや百年!まだまだ新米ですがどうぞ、夜・路・死・苦!!」
『豆腐道』と背中に書かれた文字に紅葉柄の特効服が光輝く。熱烈な豆腐小僧の豆腐愛に思わずアクア苦笑いになってしまう。
「ははは……。豆腐小僧さん、メニューとお飲物はどうしますか?」
「あっ、すいません。じゃ、俺の豆腐で作った『抹茶豆腐の白玉小豆ぜんざい』下さい!で、飲み物は冷たい緑茶で!!」
「かしこまりました」
慣れた様子で注文する豆腐小僧の注文を聞き取り、調理場に注文を届けるアクア。