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第十二夜 煎餅屋の燐火

少し風邪を引いてしまったみたいです。

明日、更新できなかったらごめんなさい。

キーンコーンカーンコーン…………



近くの高校に通うサクラは授業も終わり早く店に帰ろと席を立った時だった。サクラの名を呼ぶ声がした。


「サクラ~、一緒に帰ろ」


「うん、燐火ちゃん」


焦げ茶の長い髪を左右に三つ編みに編んだ燐火と呼ばれた少女が鞄を持ちサクラに近寄ってきた。

二人は同い年の幼馴染であった。サクラがこの地来てからの初めての友達であり、常にクラスも一緒で一番の親友であった。性格もサクラとは違い、しっかりとしておりサクラにとってはお姉さん的な存在であったが、同い年という割には燐火は身長が低く小学生と見間違えてもおかしくないぐらいであった。なので、町をサクラと歩いていると「可愛い子ねぇ、貴女の妹ちゃん?」と必ず友達ではなく年下の子として見られる。


「最近サクラってさ、なんだか嬉しそうだよね」


「ん~?そうかなぁ?」


「そうだよ。なんか、楽しそうというか幸せそうというか……」


最近のサクラは特に充実した顔をしていた。


「今、少し怪我をしてた子を引き取っててねぇ。怪我が治るまで家に泊めてあげてるんだけど。可愛いんだよぉ~」


「何?猫でも拾ったの?」


「ううん~、違うよ?」


「え~、じゃあ一体何なのさ?」


「んんー……蜥蜴さんかな?」


ブハーッ!と燐火は飲んでいたお茶を思わず噴いてしまった。


「と、とかげ?!」


「うん!綺麗な色してるんだよぉー」


「へ、へぇー……!そうなんだ…」


(うち、サクラの親友何年もやってるけどまだサクラのことの考えてることが分からないや……)


だが、サクラがそこまで言う蜥蜴?を見てみたい気も今日は何故だかした。


「今日、久しぶりにサクラ家行ってもいい?」


「いいよ~。燐火ちゃんにも紹介しようと思ってたんだ!」


「ありがとう」


(紹介って……蜥蜴に?)


そう思う燐火であったがあえて口には出さなかった燐火。燐火はサクラには特に甘かった。

そして、二人は豊月神社へと向かったのであった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


一方店で留守番をしているアクアは昼間は外の人間に見つからないよう早朝と夜以外には店から出ないように奥のリビングか二階の部屋にいるのだが、今日は世話になっているサクラのため家の掃除をしていた。

するとガタンッと扉が開いた音がし「ただいま~」とサクラの声が聞こえたのでアクアもいつものように「おかえりなさい」と顔を出すとサクラの後ろにいた小さな影と目があった。


(しまった……!)


姿を見られたか……!と焦ると。


「あっー!サクラ!!あっちの人、こっちに連れてきちゃったの!?」


燐火はアクアの容姿よりも異世界の人物をサクラの家に招き入れてしまったことを問題視していた。


(え、僕の姿を見てもあまり驚かない……?)


「あの子がアク君だよー」


呑気にサクラがアクアを紹介をしていると「ダメじゃないか!異世界の人を連れてきちゃ!」と燐火はサクラを注意した。すると、サクラは「えー、でも怪我してたし……。ほっておけなかったんだよぉ……」っとしゅんとした顔で言った。


「うぅ……!確かにそれはそうだけど」


サクラの表情に罪悪感を感じたのか、言葉に詰まる燐火。アクアだけが、話についていけてなかった。


「あ、あの……その方はどなたなんですか?」


「えっとね、紹介するねアク君。この子は餅田燐火(もちだりんか)ちゃん。私の幼馴染で『月見草』でも先代の頃からの古い付き合いでねぇ。この店でも取り扱ってる煎餅を作ってくれてる、老舗の煎餅屋の『餅田屋』の子だよ~!」


「どうも……」


ぶすっとした顔でアクアに一応挨拶はするがどう見てもアクアのことに関しては納得していない顔だった。そんなことはつゆほども知らないサクラは「勿論、お店の秘密も知ってるよ~」と呑気に喋ってる。


「取り合えず、あがらせてもらうよ」


燐火の目には明らかにアクアに敵意が秘められていた。



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