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第一夜 もしもし?ここは『月見草』です

この小説を手にとり、読んで下さっている読者の皆さまありがとうございます。

初めてまして、そしてこんにちは!

食欲の塊といいます。名の通り、食べることが大好きで、その中で特に和菓子が好きだったのでこんな小説あったらいいな~感覚で作ってみてしまいました。

ついでに読者の皆さまにも和菓子に興味をもっていただけたら嬉しいですね。

なんか文章の誤りやおかしなところも出てくると思うのですが、皆さま、どうか温かな目で御覧ください。(笑)

ある森の中、素早く草木を駆け抜ける一つの小さな影があった。


「はぁ~、すっかり暗くなっちまったなぁ」


すっかり日は落ち、茜色の空もだんだんと暗くなっていく。

この獣の名はペルド。獣人族の末裔でありハイエナ民族を取り締まる若頭であった。

集落に住むハイエナ民族は主に集団の狩りを得意とし、その狩った獣の皮を剥ぎ、それを鞣した物を週に一度、人間の町に売りに出し、そのお金で暮らしている。

ハイエナ民族の作った皮革は丈夫で長持ちすると人気なのだが、ある問題があった。それはハイエナ民族のイメージだった。かつて、大きな戦争のせいで食べるものがなく飢え死にしそうになったハイエナ民族は仕方なく戦死した魔族や獣人族や人間など色々な死肉を貪り喰っていた。

その為、邪悪や野蛮などのダーティーな印象があり、どの種族からもあまりいい印象を持たれにくい。それでも今は集落の生活も安定し、死肉を食べる必要もなくなったので食べてはいなのだが、やはり昔のイメージとやらそう簡単には消えてくれない。

そこでペルドの出番であった。ペルドは特別力が強いというわけではなかったが、商人としての口の上手さと腕は確かだった。ハイエナ民族には珍しい愛想のよさに相手をその気にさせる口の上手さ、そして何より仲間思いで仲間たちからも信頼されているところを買われ、次期長として育てられている。


「今日はここで寝っか」


荷物を下ろして、さっそく火と簡単な寝床を用意する。

準備し終わった時にはすっかり辺りは暗くなってなり空には幾千の星と月が煌めいていた。

月を眺めながらペルドは携帯していた干し肉と干し飯を食べて夕食をさっさと済ませた。


「はぁ~……やっぱ足りねぇな」


集落に帰れば狩りで取った肉がたらふく食えるが全力走っても集落に着くのは明日の夕方あたり。眠らず森の中を走ることなどペルドには造作もないことだったが、基本夜になった動かないのが冒険の鉄則だ。いくら夜行性で鼻もきくハイエナ民族でも夜に森に住むモンスターにでも遭遇すれば危険だった。

人間の町は獣人の足であれば約一日ぐらいで着くのでそれ程遠い距離ではないがその一日のご飯がペルドにはキツかった。

何せ、一日中走り続け商売もしてご飯は干し肉と干し飯のみ。

代々縄張りからの外に出れるのは長と次期長として認められた者のみなので集落の者は外の世界を知しらず「いいなぁ~」と皆に言われるがこの苦労を知ればきっと悲鳴をあげるに違いない。

本当はもっと色んな食べ物を持ちせ、下手に食べ物の匂いがするものを持ち歩けばモンスターに襲われかねなかった。


「こんなことなら、行きに天使の果実(エンゲージベリー)食べなきゃよかった……」


天使の果実(エンゲージベリー)とは集落の近くで取れる貴重な果物のことなのだが、いつも一人で人間の町に売り出る褒美として優先して貰っている。

その果実は苺ように紅く、実にとろけるように甘い。まさに天使という名に相応しい果物。

それを行きの時に小腹が減り我慢できず全部食べてしまったのである。

だが、これも集落の仲間の為である。ペルドは腹の虫を押さえながら、さっさと寝てしまおうと寝床に寝転がった瞬間。


ゴチンッ!


「いってえ!」


思いっきり何にぶつかった音と鋭い痛みが頭部に走る。

後ろを見てみると見慣れない白い三日月模様が描かれている不思議な石があった。


「なんだ?これ」


さっき寝床を作ってた時にはこんなものなかったはず。

恐る恐る触れてみると、白い石が淡い光りを放ち、立派な赤き門へと変わる。


「!!な、なんじゃこりゃ!?」


変な作りをした門だったが、よく見ると不思議といい味もある。ペルドの商売として目が光る。

そして何より、門の奥から漂う甘い香り……。お腹を減らしてるペルドにそれに釣られるなというのが無理な話だった。

赤い門を潜り先に進むと見たことのない大きな建物と小さな店のようなものがあった。

甘い香りはどうやら、この小さな店の方かららしい。

中を覗くと色とりどりの旨そうな菓子ぽっいのが並んでいる。思わずゴクリと喉を鳴らす。

でも、よく見るとこの薄く、大きな純度の高い硝子張りや結構いい材質の木材が使われている。こんなに外装がいいのだ、きっとこの菓子たちもべら棒に高いに違いない。


(中に入っても何も食べれないかもしれない……)



がっくし、と扉の前で項垂れるているとカラカラッ!と目の前の扉の中から「いらっしゃいませ!」と金髪を一つに束ね珍しい青眼の持つ珍妙な格好をした、人間の若い娘が出てきた。

ぽかーんとペルドが呆然としている内に「一名様、ごあんなぁ~い!」と、気づいたら席へと案内されてしまった。


「はっ!」


(しまった。金はあるがこんなところで勝手に使える金なんて持ってないぞ!)


一度入ると、途中から出るに出れない感じになってしまっていた。

でも、食逃げをするわけにも行かないのでどうにかして店から出なければならなかった。

内心焦るペルドだが、店の中を見ると程よい店内の明かりに心地よい店の雰囲気。そして、木々の薫り。



『ふぅ~……なんか落ち着くなぁ』



つい、ほっこり。…………。



『じゃなくてぇッ!』



思わず自分のふきだしにノリツッコミするペルド。


(言え!言うんだペルド!!でないと食逃げ犯になるぞ!!)



「え、えっと~……実は今日は持ちあわせがなくてですねぇ…」


「ならぁ、今日の分の御代は結構ですよぉ~」


「えっ!」


「また来た時にでもいいんで~」



そう娘は言い残し、店の奥へと消えて行ってしまった。次に「いらっしゃいませ」と声をかけてきたのはなんとも屈強で少し固い表情をした蜥蜴の魔族だった。


(じょ、上級魔族!?)


何故こんなところにこんなレベルの高い魔族がいるんだ!?と内心パニックになるが蜥蜴は構わず慣れた手つきでお絞りとメニューを置いていく。



(この魔族の方が店主なのか?それじぁ、あの人間の子は奴隷か何か?にしては小綺麗だったなぁ。そしたら余程お気に召してるんだな)


魔族が人間を、人間が魔族を奴隷にするなどよくある話であった。まぁ、奴隷の話になると獣人族もまったく関係ない話ではない。気の毒ではある話ではあったが。


「こちらメニューです。お客様、お飲み物なんですが『緑茶』と『玄米茶』と『ほうじ茶』の中から冷たいのと温かいのがお選びできますがどれになさいますか?」


「あの、その前に質問なんですけどここってどこなんですか?」


「ここは異世界にある和菓子処『月見草』というところで、簡単に説明すると和菓子という異国の菓子を売っているところです」


(イセカイ??ワガシ??)


ペルドにとっては聞いたことのない言葉ばかりであった。

それに、何故そんな珍しい店があんな森にあったのかも謎だ。


「それでどれになさいますか?」


「へっ!?な、何が?」


「お飲み物は」


「あっ!ごめんよ。え、えっと~……じゃ、リョクチャというので温かいやつで」


「かしこまりました」


リョクチャがなんだか聞けなかったが、そんなことより異国の菓子というのは大変興味深い。


(だが、大丈夫なのか?そんな高そうなものを簡単にタダでなのどと……怪しいな)


とりあえずメニューを見よう。

渡されたメニューを開くとかなりの数のお菓子の名前が書かれていた。その中でも気になったのが、『イチゴダイフク』という甘く煮た豆に紅い果実が入っているという菓子。ペルドはこれを頼むことに決めた。


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