第七十三話:『SF世界の宇宙戦艦についてる脱出ポッドの窓ガラス』
「あはは、なにそれウケルー」
『(スマホで通話中。私の空間にどうやって電波を届けているのかはさておき、相手は誰でしょう)』
「だよねー、マジぴえん」
『(しかしなぜ女子高生口調。しかも時代がまばら)』
「それホント墾田永年私財法」
『(歴女……いや、そもそも墾田永年私財法を形容詞で使うのはおかしいですよね)』
「うんうん、それじゃまたねー。……おや、女神様。おはようございます」
『おはようございます。どなたかと通話していたようですが』
「ええ。紅鮭師匠と話していましたよ」
『紅鮭相手の会話がアレですか』
「普通に通話するのもつまらないので、お互いくじで引いたキャラになりきって話すという余興をしておりまして」
『それで、貴方が引いたのは歴女系JKとかですか』
「いえパリピ聖武天皇です」
※墾田永年私財法を発令したお方。
『そっちかー』
「ちなみに紅鮭師匠はラッパー千利休です」
『向こうの声も聞きたかった』
「どんな転生先になるか分からないですからね。自分の個性を出すことも必要ですが、やはり転生先になりきることも大事だろうという考えからの試みです」
『転生者ってのはロクな試みをしませんね』
「主語が大きくないです?」
『良いんですよ。超越した者の視点では主語はどうしても大きくなるものです』
「確かに。魔王とか『これだから人間は――』といつも主語が大きいですよね」
『性別、出身、立場。人間内でのカテゴリなど、大差のない立場の相手を一括りにすることにかどが立つわけですからね』
「人間もピンキリだとは思いますけど」
『太陽にでも放り込めば、どれも大差なく瞬時に蒸発するでしょう』
「規模がでかい。まあ俺も十秒もてば良い方ですし」
『そこは一秒ももたない方が人間アピールできるのですがね』
「転生先次第ではもっといけますよ。魔法ありの世界なら大抵の魔法は覚えられる自信がありますから。炎耐性とかも簡単に付与できるかなと」
『世界を転々とし過ぎたせいで、大抵の世界なら理にも干渉できるようになっていますからね』
「パソコンでいうOSみたいなものですからね。原理とかの感覚を掴めれば、そう難しくもないですよ」
『世界によってはだいぶ仕様が異なると思いますけど、ファンタジーとSFでは勝手が違ったりするのでは?』
「まあそうですね。でも基本的にはSFの方が楽ですよ。世界の住人の方達が大まかな原理を解明してくれているので」
『独自のエネルギー資源とか存在していても、大抵はその有効活用法は研究済みですからね。SF世界の創始時代にもなれば話は別ですが、そうなるとSF要素ほとんどありませんし』
「異世界転生において、先人の知恵の総量は結構重要な要素ですからね。学んで強くなるか、独自に編み出して強くなるかの割合が変わります」
『こういう話題をポンとできるあたり歴戦の転生者感はありますよね』
「転生の手引きとか本にしたら売れますかね?」
『田中が似た本出したらその時点でシェア奪われますよ』
「ならもう出しているからなぁ、無理かあ」
『え、ちょっとそれ欲しいかも』
「初版は完売したそうで、予約しておきますよ」
『売れてるのですね。転生者の質が異常に上がりそうで心配ですが』
「いえ、売れ先は基本的に世界の創造主とかですよ。普通の人に田中さんの出版した本を買う手段とかないですし」
『それもそうですね。しかし創造主にウケが良い要素でもあるんですか?』
「なんでも招く転生者に程よいバランスの強さを与えるコツとかが学べるそうで」
『納得。創造主って人間の尺度とか測るの下手ですからね。ついバランスが崩壊するチートスキルとか与えちゃいますし』
「あんまり強過ぎる力を与えると、達成感とか色々減っちゃいますからね」
『代わりに爽快感を得られるので、一長一短ではあるのですがね。さて、それでは転生のお時間です』
「それでは右腕を光らせ、奇跡のドローを」
『ただのくじ引きに無駄な演出を入れない。……違った、人間が突然腕を発光させないでください』
「では徐々に発光させましょう」
『それはそれでやだ。じゃなくて、人としてできる範囲で工夫しなさい』
「うーん。じゃあ発光しているLEDを右腕に巻きつけましょう」
『制限した立場で言うものなんですが、急にしょっぱくなりましたね』
「大丈夫です、七色に発光するLEDですから」
『ちょっと豪華』
「ノマトさんより、『SF世界の宇宙戦艦についてる脱出ポッドの窓ガラス』これは頑丈そうですね。やりましたよ」
『喜べる要素が一つでもあれば純粋に喜べる才能』
「宇宙戦艦の脱出ポッドって、結構出番多いですからね。実にやりがいがありそうだ」
『脱出ポッドは仕事じゃないんですがね。そもそも窓ですし』
「いざとなれば俺一人で脱出とかもできそうですし、安全性も高いですよ」
『それただの脱出ポッドの不具合では』
◇
『田中の書いた転生の手引き。意外とタメになりますね。でも流暢な直筆サイン入りなのがちょっと気に食わない』
「ただいま戻りました。いやーまさかあんな脱出劇になるとは」
『おかえりなさい。脱出ポッドなのですから、出番があるとしたら脱出劇にしかないでしょうに。SF世界の宇宙戦艦についてる脱出ポッドの窓ガラスでしたよね』
「はい。宇宙戦艦タイタニッキュの脱出ポッドの窓ガラスになってきました」
『氷山にぶつかって沈みそう。この場合は宇宙デブリでしょうか』
「沈むには沈みましたかね。結構スペクタルな感じでしたよ」
『ふむ、そのへんもじっくり語ってもらいましょうか』
「タイタニッキュは宇宙戦争に終止符を打つために造られた、地球の命運を託された最終兵器でした」
『地球の命運を託しているわりにはネーミングセンスに不安しかないですね』
「でも確かに言うだけはありましたね。襲いかかるゴッドゥレジェンドィ星人達の宇宙艇をバッタバッタと薙ぎ倒していましたからね」
『敵の名前を豪華にしようとしているのは伝わりますが、かえって安っぽい』
「でも良いですよね。人類共通の敵に挑むのって。俺もつい雰囲気に流されて熱くなりがちでしたよ」
『空調効いていないだけでは』
「あ、ちなみにこんな感じの丸っこい脱出ポッドです」
『最小限の機能だけを備えたって感じですね。窓も貴方だけですか』
「はい。狭いポッドでしたからね。他の転生者と相部屋じゃなくて良かったですよ」
『相部屋……まあそういう捉え方もありと言えばありですか。ところで、この入口の横についている星のマークはなんですか?』
「え、撃墜マークを知らないんですか?」
※その機体で撃墜した敵機の数を記した塗装。
『脱出ポッドになんで撃墜マークがあるのかと』
「俺もつい雰囲気に流されて熱くなったので」
『脱出ポッドで出撃しないでください。小さな星が七、大きな星が二つ……脱出ポッドで二十七機も落としたのですか』
「いえ、星は敵の分類ですよ。戦闘機七の戦艦二つですね」
『脱出ポッドで戦艦を落とさないでください』
「つい雰囲気に流されて熱くなったので」
『ついででエース機体並の戦果を挙げないように。パイロットとかはいたのですか?』
「脱出ポッドですからね。流石にいませんでしたよ。ただ定期的に面倒を見てくれる整備員はいましたが」
『貴方に関わるのであれば、ある意味物語の主人公といっても良いポジションですね。整備員なのがちょっとインパクト薄めですが』
「彼の名はバーソロミョー=ドルイクゥ。髭と葉巻の似合ういぶし銀の一般クルーでした」
『その男、絶対船長やってた方が良い人材ですよね』
「ドルイクゥは若いころに事故で右手と右目を失い、義手と義眼になっちゃってましたからね。それでも船が好きだからと整備員として採用された感じです。こちら写真」
『脱出ポッドの入り口に寄りかかって葉巻を吸う、髭のナイスミドルですね。マントつけるだけで船長感ありますよ』
「俺は葉巻吸えないんで、ちょくちょく扉で手足を挟んでやりましたけど」
『とんだ不良品ですね』
「煙を吐くなって言っても、聞かないんですもの」
『言っちゃったんですか』
「まあこのご時世、大半の機体にはAIが積まれていますからね。ドルイクゥは俺のことを脱出ポッドのポンコツAIだと勘違いしていましたよ」
『脱出ポッド自体にはAIがなかったのですか』
「俺を異物扱いしていたので、割と始めの頃に排除しました」
『正常に作動していたのに。そもそもどうやって操作したのですか』
「俺の思念を駆動系にリンクさせる感じですね。ある意味俺自身がAIチップの役割を果たしていたって感じです」
『ハイテクノロジーですね。しかし中枢が剥き出しなのは設計的に問題ありませんかね?』
「大丈夫ですよ。日頃鍛えておいたので、戦艦の砲撃くらいなら耐えられます」
『ガラスが鍛えた程度で戦艦の砲撃に耐えないでください』
「それでドルイクゥですが、彼は風貌の厳つさや、性格のガサツさから仲間の輪に入れないことが多く。いつも暇だからと俺のような脱出ポッドのメンテナンスとかをしていたんですよ」
『船長補正ありそうな人物でも、時代や背景が違えば下っ端ですか』
「ドルイクゥはいつも俺に文句を言っていましたよ」
『仕事場の愚痴を言うのは船長補正低そうですね』
「勝手に脱出装置起動させるなよと」
『そっちでしたか。それは文句も言う』
「いやでも、俺の機体って脱出ポッドですからね。出撃するには脱出装置起動させないと外に出れないんですよ」
『脱出ポッドは機体にカウントされませんからね』
「いっつも司令部から中に誰かいるのかと言われてましたよ」
『突然脱出ポッドが射出されたら、司令部も何事かと焦りますよ』
「それなりに暴れた後、いつもドルイクゥが回収しに来てくれたんですよね」
『自分で戻れなかったんですか』
「脱出ポッドって生命維持装置にほとんどの機能を回していますからね。救難信号はずっと出せても、移動用の燃料とかはかなりカツカツなんですよ」
『勝手に射出される無人の脱出ポッドとか、故障案件でしかないですよね』
「そうですね。艦長もドルイクゥにちゃんとメンテナンスをしろと言っていましたよ」
『整備担当ですからね。いつまでも不具合を放置するエンジニアは叱られたでしょうね』
「なので一応出撃前に、司令部に『脱出ポッド壱号、出ます』と通達するようにしました」
『無人の脱出ポッドが出撃宣言してくるのはちょっとしたホラー』
「でもまあ、俺が出撃すればそれなりの戦果に繋がったので、一種のジンクスとして認められるようにはなりましたよ」
『貴方の功績だとは認められなかったでしょうに。しかし妙なジンクスですね』
「俺が射出された先で、敵のエース機や戦艦が謎の轟沈をしていましたからね」
『そもそもどうやって脱出ポッドで戦ったのですか』
「そりゃまあ、このポッドを、ガシャキーンと」
『なんかロボットアニメで主人公が乗りそうな機体に変形している』
「ロボの仕組みとかは、以前足をキャタピラにした際に色々勉強しましたからね。ちょっと頑張ってみました」
※七十一話参照。きゅらきゅら。
『そこ伏線にしちゃうんですか。向こうの世界の人とか突然のオーバーテクノロジーに置いてけぼりですよ』
「脱出ポッドだったので、細かい機体情報を送信する機能とかはありませんでしたからね。脱出ポッドが射出されると、どこからともなく謎の人型ユニットが現れて敵を屠りだすと報告されていましたね」
『経験値とか盗んでいきそうな機体の登場の仕方ですね』
「他のエンジニアも何度か俺の機体を調べ、関連性を見つけようとしましたが、ドルイクゥ以外は気づくことはできませんでしたね」
『その男は気づけたんですね』
「俺の機体の中に葉巻の灰を落としてくれやがったので、ちょっとツマミ出した時に変形を見せてしまいまして」
『自分の中から人を出すために変形するロボはなかなか見ないですね』
「『悪かねぇな。だが、もうちょっとドリルが欲しいな』と言っていました」
『ドリルはロマンでもいらないかなぁ。宇宙世紀ですし』
「つけましたよ。毎回出撃の度に敵の武器を奪うところからスタートするのは大変だったので」
『脱出ポッドですからね。武装はありませんでしたか』
「おまけに座席のシートのところにも小型のドリルを装着しました」
『脱出ポッドの正規の機能が失われましたね』
「一応座れますよ」
『貴方が一応という程度には座りたくなさが伝わる状況じゃないですか』
「ちゃんと回転もします」
『座りたくなさが増すだけですね』
「まあ変形するとは言え、機体の方は普通の脱出ポッドの素材でしたからね。出撃後は結構な頻度でボロボロだったので、ドルイクゥの整備は正直ありがたかったです」
『勝手に出撃するあたり、どこかで投げ出されても不思議ではなかったでしょうからね』
「その度に文句言われましたけどね」
『言うでしょうね』
「俺も言い返しましたけどね。葉巻の灰を中に落とすなって」
『実質的に貴方の体の中ですからね』
「ほんと、ボコボコにしても聞かないんですもの」
『戦艦を落とす機体でボコボコにするのは勘弁してあげなさい』
「しかし宇宙の旅もやがては終わりを迎えます。タイタニッキュはついに最終作戦を成功させ、敵の本部である宇宙コロニーを破壊。戦争を勝利へと導くことに成功します」
『おや、随分とあっさりと最終目標を達成しましたね』
「ですが、その最終作戦は結構無茶なものでした。敵軍の中を強行突破しての特攻のようなものでしたからね。勝利こそ掴んだものの、主力の全てをその一点に注ぎ込んだタイタニッキュは残された敵軍に完全に包囲されてしまいました」
『SF世界ですし、魔王を倒せば世界が救われるとは行きませんか。まあ最近のファンタジーでもその後の方が大変な展開だったりしますからね』
「戦闘機は全て落とされ、全ての武装を破壊され、ついには鹵獲されてしまいます」
『特攻に全ての主力を注ぎ込めばそうもなりますね』
「乗り込んでくるゴッドゥレジェンドィ星人達。残ったクルー達は通常兵装で交戦しますが、数では向こうの方が上。一人、また一人と命を落としていきます」
『本部を破壊した船の乗組員ですからね。恨みも相当でしょう』
「ですがそんな中、最後まで諦めずに戦い続ける男。ドルイクゥの姿がそこにはありました」
『おや、急に主人公らしい』
「ドルイクゥの戦いっぷりは、それはもう凄まじかったですね。敵のレーザー銃の雨あられを掻い潜り、敵を千切っては投げ、千切っては投げ」
『一般の整備員にしては戦闘力高すぎませんかね』
「伊達に人型に変形した俺の機体相手に何度も揉まれてませんからね」
『葉巻のいざこざが相当数あったのですね』
「しかしそんなドルイクゥの活躍も虚しく、人海戦術によってドルイクゥは追い詰められ、ついには敵の射撃を受けて負傷してしまいます」
『そのまま無双するかと思いましたが、SFの範疇で済んだようですね。それで、助けたのですか?』
「はい。そのまま死なれては流石に寝覚めが悪いですからね。ドルイクゥをポッドの中に放り込み、変形して外まで脱出してやりましたよ」
『燃料がカツカツだったと思いますけど、よく脱出できましたね』
「タイタニッキュの艦長が船を爆破させるとアナウンスしていましたからね。ならいらないだろうと燃料庫から適当に燃料タンクをいくらか拝借させてもらいました」
『敵に鹵獲されるくらいなら――といった感じでしょうか。捕虜になれば生き残れる可能性もあったでしょうに』
「どうでしょうね。いつもは多くの人の声が混じっていた司令部からのアナウンスでしたが、あの時はもう艦長の声だけでしたからね」
『ふむ。それで、戦艦から脱出した程度では逃げ切れたわけではないですよね』
「ええ。俺の機体の役割は、中に乗った人間を危機的状況から脱出させることですからね。ここからが本領発揮だと暴れてやりましたよ」
『中に乗った人間は生きた心地はしなかったでしょうね』
「揺れるからせめて座席に座ったらどうだって言ったんですがね、断固拒否されました」
『そりゃドリルついてますからね。その座席』
「敵の砲撃を避け、進路を塞ぐ敵を撃墜し、俺は包囲網を突破しました」
『よもや敵も脱出ポッドがそこまでの動きをするとは思わなかったでしょうね』
「燃料は底を尽きましたが、どうにか敵の追手から逃げ切ることができました。俺は小型ドリルを取り外しつつ、負傷したドルイクゥに再び座席に座れと言いました。ですが、それでもドルイクゥは拒否しました」
『おや、それは何故でしょう』
「ドルイクゥは葉巻を取り出しながら言いました。『お前さんの役割はその席に座った奴を生きたまま護ることだ。これまで散々活躍してくれたお前さんが、役立たずとして見られて終わるのは嫌なんでな』と」
『……負傷は酷かったようですね』
「そうですね。いつもなら灰の一欠片でも落とせば喧嘩をしていましたが、その時は床一面真っ赤でしたからね。怒る気も湧いてきませんでしたよ。ここまで汚されたらもう良いやと、ドルイクゥの取り出した葉巻に火をつけてやりました」
『ちなみにドリルを取り外したり、葉巻に火をつけたりしたのは』
「こう、ニュッと内側に取り付けたロボットアームをですね」
『窓ガラスから腕が生えなかっただけマシとしましょう』
「ドルイクゥは続けます『この脱出ポッドは死体を運んだだけだ。今回は出番がなかったかもしれねぇが、次は誰かを助けてやりな。もう勝手に射出するんじゃねーぞ、お前のような不良品を庇う物好きなんざ、そうそういねぇんだからな』と」
『長旅の中で不具合だらけの脱出ポッドでしたからね。いつ解体されてもおかしくはなかったでしょうね』
「ドルイクゥは最後に葉巻をゆっくりと吸い、床に落ちた灰を見て言いました。『ああ、悪ぃな。また汚しちまったな。へへへ……』と。そのまま彼は長い眠りにつきました」
『ハードボイルドな最期でしたね。主人公の死に方としては少し物悲しさがありますが、格好良さはあったのではないでしょうか』
「いえ、死んでませんよ?ほら、こちら地球に帰還した後の彼の写真です」
『ピンピンしていますね。でも床一面に血を溢す程の怪我ならば、流石に死ぬのでは』
「そのまま放置していれば死んでましたけど、助けがくるまでの間に機械化手術を施しておきましたからね」
『本当だ、なんか服の内側に機械が見えますね。よもや人を改造手術するとは』
「まあ手頃な材料がなかったので、脱出ポッドのパーツを色々使いましたけどね。ドルイクゥの生命維持をする最小限の機能を持ったカプセルを造って、ボトルシップを造る要領で手術をしましたね」
『手術の道具とかよくありましたね』
「ドリル一本でどうにか」
『どうにかしちゃいましたか。脱出ポッドは貴方の体でもあったでしょうに。自らの体を分解しながら、男の命を救ったわけですか』
「脱出ポッドの機能を失った時点で、俺の存在も概念的に死を迎えることになりましたからね。最後のスパートあたりは結構意識を保つのが大変でしたよ」
『……貴方にしては良い事をしていますが、きっと文句を言われたでしょうね』
「まあ余ったからと義手をドリルに付け替えちゃってますからね」
『本当だ、よく見たら右腕ドリルだ』
「股間につけるか悩んだんですがね」
『そうしなかったことが一番のファインプレーですね』
「最期は救難信号を発信させたカプセルを見送り、俺はそのまま一枚のガラスとして宇宙の藻屑となったわけです」
『戦艦の砲撃も弾くオーバーテクノロジーのガラスですからね。ということはこの写真は創造主あたりに依頼したものですか』
「お察しの通りです。あ、これお土産です。回収された俺の体に最後までくっついていたロボットアームです。ちょっとばかり改造して、簡単な思念を送るだけで操作できるようにしてみました」
『便利そうではありますが、そもそも思念一つでやりたいことできますけどね、私』
「お菓子を食べながら携帯ゲームとかできますよ」
『それはちょっとお手軽かもですね』
SFでもファンタジーでも、ギャグ要素はどこにでも現れる。奴らほど恐ろしい存在はない。
風邪で喉をやられ、その声で遊んでさらに喉を痛めた作者です。みなさんはしっかり安静にしましょう。
さて今回のキャラデザ紹介ですが、紅鮭師匠です。
紅鮭師匠単品だとただの紅鮭の画像一枚なので、紅鮭師匠のスタート地点とも言える魔王スペイシャスのイラストもセットです。
おや?と思った方もいるかもしれませんが、そうです。元々魚系の魔王ではありましたが、魔王スペイシャスのときには紅鮭要素はないのです。
彼が紅鮭に拘りを持ったのはスペイシャスのときに主人公と出会い、紅鮭に興味を持ったことが切っ掛けなのです。
以降の転生先ではしっかりと頭紅鮭のキャラとなっておりますのでご安心ください。
書籍ではダルカンモ将軍時のイラストなどもあります。
次回はそのダルカンモ将軍と関わりのあった、カレー皿時代のお話に登場するリアンとクミン。そして少し先のお話に登場する袋を担いだ勇者、ナモシンのキャラデザを紹介しようと思います。