第五十七話:『本に挟まれたまま百年たった栞の紐の部分』
「ただいま戻りました」
『おかえりなさ……どこかに行っていたのですか』
「紅鮭師匠の担当の神様の所に遊びに行ってました」
『貴方はもう少し異世界転生待ちの人間であることの自覚が必要ですね』
「転生を案内する神様について色々教えてもらいました。転生させてくれる神様の益になる行為を学ぶのも大事ですよね」
『そこまで自覚しろとは言ってない。人生をやり直す立場であることだけを自覚しなさい』
「神同士、互いに影響を与える程その力が増す的なお話とかはなかなか面白かったですね」
『まあそうですね。世界を創り出せない神などは質の高い人間の魂を確保し、異世界転生させることで創造主とのコネクションを作ります。世界を創るよりは楽ですが、手間であることには違いないので、異世界人を求める創造主達にも需要はありますね』
「凝り性な創造主なら自分で転生者を選んだりするのでは」
『いますよ、そういう神も。ですが先程も言いましたが、手間なのですよ。人間の魂を回収するシステムも世界ごとに作り直す必要がありますので』
「俺の住んでいた地球以外から人間を呼び出すのは手間ってことですか」
『はい。並行世界や限りなく地球に近い場所もありますし、他の創造主が創った生命体の存在する惑星だってあります。星一つごとに専用の手続きやら必要なのです』
「ああ、なるほど。自分の世界を主軸にしたい創造主からすれば、異世界人を招待してその変化を求めたいのに、せっかく用意した転生システム先の惑星が合わなかったら無駄手間になると」
『ええ。人間のスペック自体はそう大差があるものではありませんが、その惑星に生まれたという変化は案外馬鹿にできません』
「文明の発展度合いでも結構大きそうですしね。俺の時代の人間と、千年前の時代の人間じゃ持っている常識が違うわけですし」
『そうですね。地球の場合魔法の存在が空想の域であり、文明の発達には科学が使われているので人気はあります』
「異世界転生者の強みって基本的には思考の差異ですからね」
『貴方の場合は異常なまでの適応能力ですかね。ゴキブリですら信仰心を持ちかねない対応力ですから』
「褒められている気がしない」
『評価はしますが、褒めたくはないですからね。何度も転生させてしまったことで変異してしまったミュータント的なポジションです』
「普通に人なんですけど。あ、最近は骨を九十度曲げても折れなくなりましたね」
『本当にこの人外を異世界転生者として送り出して良いのか悩みたくなってきますね』
「意外と適応しようと意識し続ければ、体って変化するものですよ」
『それは普通、何十、何百と世代を経て変化するものです。貴方一代で完結しないでください』
「転生しているので、実質五十八回は世代を経ていますよ」
『中身一緒でしょうに。……ちょっと待ちなさい。私の記憶が間違えてなければ、貴方の転生回数は五十六回ですよ。元の人間だった時を合わせても五十七回ですよね』
「あ、向こうに遊びに行ったついでに一回転生してきました」
『コンビニ感覚で転生するなと、あれほど』
「まあ特にやらかしてはいないですよ」
『その言葉を信用できる存在がこの世に存在しないと理解しているのですか。大体どうして向こうで転生などと』
「以前女神様の元で紅鮭師匠と一緒に転生したじゃないですか。その時の紅鮭師匠が『転生する時の感覚だが、神によって違いがあるのだな。勉強になった』と言っていたので、俺もちょっと興味を持ったんですよ」
※五十一話参照
『私の安請け合いが原因でしたか。まあ咎めるのだけは止めておきましょう。ところで向こうで転生する時の感覚はどうでしたか』
「そうですね。丁寧でした」
『つまり私は雑と』
「語彙力が乏しいので、上手くは言えませんけど……。向こうの神様が行う転生では、自身の細胞の一つ一つの隔たりがやんわりとオブラートのように溶けていき、全てが混ざり合う形で個の魂として変化していきます。その感覚に恐怖はなく、温かい海の中で心が洗われていくような心地よさと、自分が新たな生命として転生する感動と生きようと言う思いがじんわりと湧いてきましたね。視覚や聴覚、五感の全てが消えていくのに、その方がありがたいと思えるような不思議な体験でした」
『普通にレビューできていますね。私の転生の感想を聞きましょうか』
「人間大砲に詰め込まれ、一方的過ぎる理不尽な暴力で全身を粉砕され、恐怖すら感じる暇もなく自分の存在を消し飛ばされるような感じですかね」
『つまり私は雑と』
「俺は好きですけどね。女神様らしいので」
『微塵も嬉しさを感じませんね。ほら、さっさとお望みの転生をする時間ですよ』
「ではこちらのディスプレイをタッチしてください」
『ガチャ画面が表示されてますけど、もともと転生先のハガキって紙媒体だったのでは』
「デジタル化の時代ですから、無駄な紙の消費は避けようかなと」
『私の世界に時代はきませんがね。まあポチッと』
「お、これは転生先確定演出ですね」
『どうして転生先以外が出る仕様になっているのでしょうかね』
「安眠寝太郎さんより『本に挟まれたまま百年たった栞の紐の部分』ですね」
『巻物の紐を思い出す転生先ですね』
※第十一話参照。
「紅鮭師匠に栞に転生しないか聞いてみましょうかね」
『普通なら即答で断る案件ですが、貴方が誘うと頷きそうなのが嫌ですね』
「あ、紅鮭師匠担当の神様から連絡がきました。もう紅鮭師匠転生しちゃっているそうです。急いで転生すれば同じ世界に間に合うかな」
『オンラインゲームのマッチングを狙うんじゃないんですから。ただかち合う可能性は高そうですね。色物同士ですし』
「神様同士で一緒に転生者を送りつけて、どっちが活躍するか競う遊びとかあったりしそうですよね」
『それは否定できませんね。まあ私にはできませんが』
「女神様も最近友達増えているじゃないですか」
『送りつけるのが貴方の時点で負け確定でしかないからです』
◇
『手紙が届きましたね。ああ、紅鮭のところの。彼が私の知らないところで転生していた時の情報を送ってくれたのですね。どれどれ、二足歩行の――』
「ただいま戻りました」
『タイミングの悪さだけは褒めたくなりますね、貴方は』
「ありがとうございます」
『褒めてないですよ。紅鮭担当の神から海産物が届いているので、食事の準備をお願いします。あと報告。本に挟まれたまま百年たった栞の紐の部分でしたね』
「はい。俺は伝説の魔術師、マーガリンの秘伝の魔術が記載してあった魔術書の栞の紐として転生してきました」
『一文字増えただけで庶民感しか残らなくなってますね。そして展開がデジャヴ』
「その魔術書に残された秘伝の魔術、それはどんな過酷な環境でもあっという間に快適な空間へと変貌させる魔術です」
『そこは一緒じゃダメでしょう。せめて何かしらあっさり風味にする感じにするとかですね』
「そんなもの本物のマーガリンでも塗っていれば良いじゃないですか」
『これ私の発言の方に非があるんですかね』
「いやあ霧ヶ峰空調を思い出しますね」
『忍術を魔術に変えればまったく同じ説明文ですからね』
「マーガリンは人間嫌いでしたので、この魔術が世間に広まらないように封印をしようとします」
『割と世界の為の魔法を創っておきながら、人間嫌いとは。人間の方は好きそうなのに』
「その時に手に取り忘れたのがそう、この俺、栞が付随した紐です」
『どう考えても紐の方が付随していますがね。まあ封印するのに栞を挟む必要はないですよね』
「割とボケてましたからね、マーガリン。途中まで読み直していたのを忘れて、突然本を封印しましたし」
『わりと貴方の気配を感じて封印した凄腕の魔術師である可能性を挙げたいところです』
「一応抗議はしたんですけどね、オリーブオイルを滲ませながら」
『もうその時点で本の未来が見えましたね』
「そして時は流れ百年後」
『世界が天変地異によって五十度を超える熱帯、または氷点下を下回る冷帯にでも変貌しましたか』
「いえ、普通にマーガリンの弟子の弟子であるオバターが本を見つけましたね」
『一文字増えただけで頭が悪そうに感じますね』
「オバターは封印されていた油まみれの本を見て、『この本にはきっとマーガリンの秘伝の魔術が記されているに違いない』と確信して本を手に取ります」
『百年間オリーブオイルまみれの本を手に取ろうとする覚悟はなかなかですね』
「しかしその瞬間、オバターの手から本が叩き落されます」
『貴方が本から取り出されたら存在が終了すると判断して、手を生やして叩き落としたと読みます』
「いえ、普通に他の兄弟弟子であったンジャムの妨害ですけど」
『一文字増えただけでネイティヴ感ありますね。てっきり某騎士伝説にちなんだラインナップと思ったのですが、パンに塗るシリーズですね。しかもマーガリンだけ捻りなし』
「互いに高みを目指す魔術師同士、やはり伝説とまで呼ばれた魔術師の秘伝は手に入れたいところ。二人は本を奪い合い、激しい戦いを繰り広げます」
『物語の本筋と言うよりは、その後敗れた魔術師が勇者と関わりを持つプロローグ的な印象がありますね』
「戦いは熾烈を極めましたが、ついに決着。倒れた二人の上で雄叫びを上げる俺の姿がありました」
『今回は割と動く方針でしたか』
「本が封印されている間、ずっと寝てましたからね。目が覚めたらドンパチ騒ぎで迷惑だったので」
『百年間寝続けるというのもどうかと思いますが。まあ何もできないはずの栞の紐ですから、寝ていたほうがありがたいまでありますが』
「俺は二人を正座させて叱りつけます。本の近くで魔法をバチバチやって、燃えたらどうするんだと」
『オリーブオイルでテカテカしている栞の紐に正座させられ、正論で殴られる魔術師達が哀れに感じますね』
「あと本を乱暴に扱うな、叩き落された時ちょっと痛かったじゃないかと」
『痛覚オプションだけは標準装備してますよね。百年間本に挟まれる人――紐生だと分かっていながら良くつけようと思いましたね』
「オリーブオイルのおかげで全身ローシ――」
『貴方の晩餐は貴方自身にすると言うのはどうでしょうか』
「不思議な力によってピンポイントで背骨が砕かれた。まあ臓物とかをぶちまけられると女神様の夕飯が俺になっちゃいますしね」
『そういうことです』
「俺も流石に自分自身を食べてとか、ヤンデレムーブはちょっと勇気がでないですね」
『私からすれば消し炭にする直前の姿形が異なる程度の違いしかありませんがね。むしろ背骨が砕けているのに良く立っていられますね』
「圧縮したオリーブオイルで代用できるじゃないですか」
『代用できてほしくないですね』
「それでええと、そうだ。オバターとンジャムを叱った後、どちらが正式にマーガリンの魔術書を継承するか、俺が立会人となって見守ることになったんですよ」
『栞の紐風情が立会人とほざきますか』
「栞だったら貫禄ありましたかね」
『立会紐が立会栞になったところで何が変わるのか』
「立会栞ってなんだか人名っぽいですよね」
『わかる。本を片手に変な異能力使いそう』
「やはり伝説の魔術師の秘伝の魔術を継承するには優れた魔術師であることを証明することが不可欠。なのでいくつかの魔術に関する試練を与え、より多く突破できたものが本を手にする資格があるということになりました」
『まあ分かりやすい展開ではありますね』
「第一の試練、利きオリーブオイル」
『関係ない試練がくることは知ってた。利き酒みたいなノリでオリーブオイルの見分けをすることの意味とは』
「この世界ではオリーブオイルはポーションなどの材料に重宝されているんですよ」
『ポーションを多用する冒険者の肌とかテカテカしてそうですね』
「両者とも十の問題のうち、九問正解でしたね」
『どっちも詰めが甘い』
「まあ俺が用意した異世界産のオリーブオイルでしたからね」
『むしろ分かったら異世界人疑惑ですね』
「第二の試練、滝行」
『試練ぽさはありますが、魔術師要素を寄越しなさい』
「魔術師だからと貧弱では研究に没頭しきることなど不可能ですからね。プロの魔術師は並大抵の戦士よりもタフでなければなりません」
『魔術師が前衛できてしまうと、基本的な前衛職に価値がなくなってしまうのでは』
「この世界での基本職は魔術師、聖職者、忍者の三択でしたね」
『後衛職しかいない。いえ、忍者は……後衛職ですかね』
「ここはオバターが一歩リードしました。ンジャムも惜しかったんですが流石に流木が直撃してはきつかったですね」
『滝行で流木直撃とか、普通なら死にますよね』
「第三の試練、百人一首」
『それただの競技』
「魔術師たるもの、あらゆるものを瞬時に結びつける能力は不可欠。最初の単語一つで全体の流れを推察する判断力を培う百人一首は世界共通の鉄板修行でしたよ」
『ものはいいよう』
「こっちではンジャムがリード。オバターも両肩両腕の関節を外してリーチを伸ばすまでは良かったのですが、伸びても腕が動かなくなってはダメでしたね」
『百人一首で片方が両肩両腕の関節が外れて垂れ下がっている光景って、軽いホラーありますよね』
「本来ならば三本勝負でしたが、第一の試練の引き分けの影響もあり案の定拮抗してしまいました」
『案の定ですけど、案の定とか言わないであげなさい』
「いっそ両者と俺の手合わせをして、より良い一撃を入れた方が勝者とも考えましたが……まあ自重しました」
『手も足もない栞の紐に手も足もでない光景が想像に容易い』
「ええ。流石に両者とも一撃も入れられなかったのは判定材料にならないなって思いました」
『やっちゃってたんですね』
「ちなみに手足はありましたよ」
『栞の紐にあっちゃダメな部位なんですがね』
「でも結構デフォルメチックで可愛いと思いますよ」
『オリーブオイルが滴っている時点で論外ですがね』
「まあ結局面倒だったので、殴り合いで勝負を決めさせることにしました」
『三本勝負が完全に無駄になってますね』
「両者とも試練の影響で満身創痍一歩手前、それでもマーガリンの秘伝を継承せんと必死に戦いました」
『満身創痍一歩手前なのは人外に手酷くやられたからでしょうね』
「流木の直撃により頭部からの出血が止まらないンジャム、しかし彼は最後まで諦めずに戦い続けました」
『魔術師なのだから治療しておけば良かったのでは』
「百人一首の影響で両肩両腕の関節が外れたままのオバターも負けじと戦います」
『魔術師以前に関節をはめ直しておけば良かったのでは』
「二人にとってその程度の負傷なんて、まったく問題にならなかったのです」
『まあ一番のダメージソースは手も足もある栞の紐でしょうからね』
「二人とも得意な魔術に頼ることなく、男らしく全てをぶつけ合います」
『魔術要素は残してほしかった』
「戦いは三日三晩続き、観衆たちも決着の時を今か今かと手に汗握って眺めていました」
『観衆いたんですか』
「戦っている二人もそうでしたが、応援していた観衆たちもそろそろ限界でしたね」
『三日三晩の観戦は辛いでしょうね』
「俺も手に枕握って二人を応援し続けていましたよ」
『三日間しっかり睡眠とってたでしょ』
「最後に互いの頭突きが炸裂し、ダブルノックダウン。テンカウントが闘技場中に響き渡ります」
『闘技場でやってたんですか』
「結果はレフェリーのテンの声と同時に引き分けとなりました。ですが観衆たちは二人の健闘を讃え、拍手喝采でした」
『そこで貴方が乱入しなかったところに精神性の成長が感じられますね』
「この結果には解説のフェリックも号泣。あ、これがその時の写真ですね。フェリックの隣に写っている栞の紐が俺です」
※第十一話参照。激戦を繰り広げた忍者。
『まさかの同じ世界線でしたか。……そうなると少し変ですね。貴方が件の忍者と出会う前、百年ほど巻物の紐になっていましたよね。そうなると時間軸として貴方が二人いたと言うことになりますが』
「特に問題ありませんよ。フェリックは御年百二十歳でしたから」
『雑な設定合わせを見た。って、この忍者見た目変わってなくないですか』
「あの時散々オリーブオイルを浴びせましたからね。きっとそのせいです」
『オリーブオイルにそんな効能はないと思いますがね。……おや、それとは別に気になったのですが、件のイケメン忍者が手に入れたのも同じ内容の忍術でしたよね。たしか世界中に伝授して、それで世界を冷房効きすぎな世界にしていたような』
「チッチッチ、女神様は忘れているようですね。フェリックの入手した『空調の術』は確かに効果が一緒ですが、消費するチャクラがかなり多いと」
『忘れていませんよ。貴方が途中でチャクラではなく電気代と言い出したのは』
「マーガリンが編み出したのは魔術、つまりチャクラではなく魔力を使って同じ効果を得られる、新たな原動力を元に使える手法だったのです」
『電気やチャクラではなく、魔力を使用して世界の気候を管理できるようになったと言うことですか。世界中にありふれた技術を昇華させたあたり、マーガリンという魔術師は結構有能だったのかもしれませんね』
「魔術書はオバターとンジャム二人のものということになりました。実力を認めあった二人は仲良く手を取り、マーガリンの残した秘術を世界へと伝授する旅へと出発します」
『これ見方を変えると新技術の発案権を巡った狡い争いなだけだったような』
「二人のおかげでより電気代を節約でき、エコな新時代が到来することになりました」
『魔力とすら言わなくなりましたね』
「これは後日談ですが、俺はかつて激戦を繰り広げた友フェリックの元に居候させてもらい、彼の忍者帝国の発展に貢献しました」
『齢百二十の忍者が不穏な動きをしていますね。貴方の貢献という言葉も怪しいですが』
「魔術が発達し、忍術の勢いが落ちる中、フェリックは忍者達の立場を護る存在となっていたんですよね。俺もどちらかといえば忍術派なので」
『そうですね。このへんから貴方に妙な小技が身についていますからね』
「俺の最期ですが、フェリックの葬儀の時、大切にしていた栞として一緒に燃やされました」
『物としての扱いは悪くないと思いますが、生きている物を一緒に燃やすというのはどうかと思います』
「オバターやンジャム達の方に行っても良かったんですけどね。まああの世界で一番仲が良かったのはフェリックでしたから。彼と一緒にあの世界での紐生を終えられるなら、それも悪くないかなと」
『……なんと言いますか、久々にしみじみした感じで終わりにきましたね』
「あ、お土産ですけど忍者帝国の特産品でオリーブオイルを使ったハンドクリームです。どんな手荒れも一回塗るだけでたちまち完治するというすぐれものですよ」
『貴方との思い出が特産品になっていますね。私は神なので手荒れなどという症状は起きないので、使い所はなさそうですが……香りは良いですね。芳香剤くらいには使えますか』
◇
「そういえば紅鮭師匠とマッチングできなかったなぁ」
『異世界転生先でマッチングを狙わないよう』
「あ、メールだ。紅鮭師匠はよくわからない世界で本の栞として転生していたそうです。でも喋るオプションを搭載し忘れ、手も足も出ないまま最後の持ち主と一緒に火葬されたとか」
『……普通は翻訳オプションを搭載する程度で、喋れるなんてオプションを搭載する必要がないですからね』
「視界もなかったそうですけど、終始ぬるぬるしていたそうです」
『でしょうね』