カレンダーに付けられたハートマークの意味は……?
これは自慢になってしまうが、私の妻はとても可愛い。
それはもう私なんかには勿体ないくらいであり、何故彼女と結婚することができたのか、正直今でも不思議に思っている。
彼女との結婚生活はとても幸せではあるのだが、同時に不安も多い。
いつ愛想を尽かされるかとか、イケメンに奪われるかなど、ついついネガティブなことばかり考えてしまう。
時折、愛する彼女のことを信用できないのか? などと見当違いなことを言ってくる輩がいるが、本当にわかっていない。
彼女のことは信用しているのだ。信用できないのは、自分自身なのである。
世の中には、自分より優れた男などいくらでもいる。
彼女は恐らく普通とは異なる基準で私を選んだのだろうが、それだってきっと上には上がいるだろう。
だから、妻の行動や言動に別の男がチラつくたび、私は不安で押しつぶされそうになるのだ。
そう、妻に罪はない。
悪いのは全て私なのだ。
……私の、ハズだ。
「紘さん? どうしました?」
「っ! い、いや、なんでもないよ」
妻には日記をつける習慣がある。
何が書かれているか見せてもらったことはないが、本人曰く他愛ない内容だそうだ。
私も日記の内容にまで踏み込むつもりはないので確認しようとは思わないが、先日意図せず見てしまったページがある。
……カレンダーのページだ。
今月は特に予定もないハズ。
それなのに、そこには何故かハートマークが付けられた日があったのだ。
女性の使うハートマークなど意識すべきではないと思いつつも、やはり気になってしまう。
私が憶えていない何かの記念日という可能性はあるが、私は自分が凡夫であるからこそ記念日は絶対に忘れないように注意している。
妻の家族や、私の家族の記念日ということもない。
では一体、あのハートマークはなんだというのだ……
「う~ん、様子がおかしいですね? ……もしかして、日記見ました?」
「っ!? い、いや、そんなことは!」
我ながら酷い誤魔化し方である。
「紘さんのエッチ」
「ち、ちが、見たのはカレンダーだけで……」
「カレンダー? それで何でそんな――あっ、そゆことですか~♪ 紘さん、この日って何の日かわかります?」
「……わからない」
「そんなことありません。気づいてないだけで紘さんは絶対覚えてます。一旦私のことは考えないでください」
え、悠衣子のことじゃない……?
「っ! もしかしてその日って――」
「はい、紘さんが初めてホームランを打った、私が一目惚れした日です♪」
野球部時代、唯一打ったホームラン。
実は、人生で唯一打ったホームランでもあったというね!