雨中の光

作者: 揺木

雨の日には

常と 違うものが

見えるといいます


私が彼の人を見たのも そんな

降りしきる 雨の中でした


雨の中。

全ての物音をかき消すような、大雨の中。

貴方は黙って、佇んでいた。

言葉も、物音も、発する様子は唯一つもなく。

雨音による静寂をかき消さぬように、と、貴方の心が伺えて。


それが、ひどく、眩しかった。

光など一片もないのに。


だから、私は。

ものも言わず立ち去った、

ただの一言もかけることのできなかった、

貴方を、今も、思い出すのです。