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7. 魔法

 オレは11歳になった。


 やばいことに気がついた。


 オレは15歳から学園に通う。


 そこは魔法を扱う、いわゆる魔法学園と呼ばれるところだ。


 伯爵であるオレが学園に通う必要なんてあるのか?


 と思ったが、学園を卒業していないと舐められるらしい。


 それは駄目だ。


 オレは人を見下すのは好きだが、人に見下されるのは大嫌いだからな。


 オレは今まで魔法なんて一切習ってきてなかった。


 クズ両親が魔法など無駄だと言って、オレに習わせなかったのだ。


 しかし、このままだとオレは学園で笑いものにされる。


 それだけは避けたい。


 死んででも避けたい。


 だからオレはランパードに命じて、領地で一番の魔法使いを呼ばせた。


 王都で宮廷魔術師として働いているやつを無理やり呼んで働かせた。


 金に物を言わせ、優秀な魔法使いを呼ぶとは、なんと贅沢な金の使い方だろうか?


 これだから貴族はやめられん。


 なんでもかんでも金と権力でなんとかなるからだ。


 ふはははは!


 やはりこの世は金だな!


 貴族最高だぜ!


 魔法使いには、家に住み込みで働かせた。


 すべての時間をオレの教育に使うように命じた。


 やつが寝ている間にも部屋に飛び込み「教えろ」と命じたこともある。


 やつは「夜這い?!」みたいに焦っていたが、オレがそんな低レベルなことをするわけがない。


 寝言は寝てほざけ。


 そもそもそまだ子供だぞ?


 そんな気も起こらんわ。


 ハッハッハ!


 領地で一番の優秀なやつをオレのために働かせるなんて、こんな贅沢はない。


 そのおかげでオレの魔法はメキメキと上達していった。


 ふーはーはっは!


 オレには才能もあるようだな!


 金も権力も才能もあるなんて、我ながら恐ろしいぜ!


◇ ◇ ◇


 シャーリックは神童と名高いアーク・ノーヤダーマの教育を命じられた。


 彼女はアークに多大な感謝をしていた。


 彼女の父は先代のガルム伯爵から不当な扱いを受けており、賄賂や不正を父の責任とさせられた。


 裁判にもかけられたが、もともと出来レースのような裁判であった。


 そして後は刑が下るというところで、先代ガルム伯爵が亡くなり、アークがガルム伯爵の爵位を授かった。


 直後、アークはすぐに父の無実を証明してくれた。


 以前と同じように父を伯爵家の使用人として働かせてくれた。


 ちなみに当時彼女は、魔法学園に通っていた。


 しかし、父の不正疑惑によって学園を退学させられそうになっていた。


 アークのおかげで退学を免れ、無事学園を卒業することができた。


 そして今では夢であった宮廷魔術師として王宮に仕えていた。


 しかし、そんな宮廷魔術師よりも多大な恩のあるアークのもとで働くほうが彼女にとっては大事なことだった。


 すぐにアークのもとに行き、アークに魔法を教え始めた。


 アークは勉強熱心であった。


 貪欲に知識を欲し、シャーリックに四六時中質問をしてきた。


 夜中に叩き起こされたときは、さすがに夜這いかと思い驚いたが。


「貴様などに夜這いをするか、馬鹿者」


 アークに言われたときは内心かなりショックだった。


 ただそんな真剣に学ばれる姿勢に、シャーリックは感銘を受けた。


 シャーリックは宮廷魔術師となったことで、少し浮かれていた。


 自信過剰になっていたというべきか。


 しかしアークに仕えることで自分がまだまだ勉強不足だと気づき、勉学に励むとともに、昔から構想していた魔法理論の研究をはじめた。


 その結果、シャーリックは新たな魔法理論を作り出した。


 これによって原作とは違う流れが生まれるのだが、それはまた別の話。


 ちなみに貴族がシャーリックのような平民に対し、教育をお願いすることは稀だ。


 普通の貴族だったら、平民に対し偏見が生じる。


 しかし、アークはそんなこと気にしなかった。


 シャーリックはアークの言った言葉が今でも耳に残っている。


「平民だろうと貴族だろうとどうでもいい。関係ない。

オレは学びたい者から学ぶ。オレは一番優秀な者から学びたいのだ。

だから貴様から学ぶぞ。魔法学園首席シャーリック・ニューセオリーからな」


 そう言える貴族が一体どれだけいるだろうか?


 彼女は魔法学園にいるときも、首席で卒業したあとも、平民という立場で軽んじられることが多々あった。


 正しく認めてくれるという状況にシャーリックは感動していた。


 そしてそんなアークのもとで働けることを嬉しく思った。


 ちなみに、このセリフを吐いた際のアークは『一番優秀なやつから時間を奪うってのは最高に贅沢だぜ!』となどと考えていた。


 もちろん、シャーリックがそれを知るはずもない。


 アークの心情を知らないことが、シャーリックにとって幸か不幸かは誰にもわからない。


◇ ◇ ◇


 シャーリック。


 原作では、主人公たちを支える女キャラだ。


 彼女は本来、宮廷魔術師ではなく一介の冒険者として物語に関わってくる。


 学園を退学させられてしまったために、宮廷魔術師になれなかったというが本来の彼女のストーリーだ。


 アークとの戦いにおいて、冒険者として主人公たちを導く存在である。


 しかし、この世界ではアークの介入によって未来が変わってしまった。


 一番の大きな変化は、やはりシャーリックが魔法理論を考案したことだろう。


 これによって未来がどう変化していくかはわからない。


 しかし魔法理論をアークが学んだことで、さらに原作からストーリーが乖離していくことは間違いない。


 こうしてまたアークは、知らず知らずのうちにシャーリックの運命だけでなく、己自信の運命も変えていくのだった。

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