11. 諜報部隊
暇だ。
山賊退治も終わったし、金稼ぎの目処もついた。
なにか面白いことがしたい。
せっかく権力があるんだ。
それを使わないともったいないよな!
というわけで諜報部隊を作ることにした。
理由?
そんなのかっこいいからに決まってるだろ。
伯爵が諜報部隊を抱えているなんて最高にかっこいいだろ。
メンバーは適当に集めた。
軍隊の中から引き抜いた。
ハッハッハッ!
オレは伯爵だからな!
人事権もすべてオレのものだぜ!
こいつらにはオレの娯楽になってもらおう。
まあさすがにまともな兵士を引き抜くのはまずい。
だから軍隊の中の問題児共を集めた。
ついでにカミュラを諜報部隊に入れて、連絡役兼取りまとめ役に任命してやった。
ぶっちゃけ遊びだから、カミュラに任せても問題ないだろう。
ついでに山賊討伐で拾ったシンモラも入れとくか。
諜報部隊を作ったからには、何かしらの目的が必要となる。
正直、目的は何でもいい。
そういえば昔、山賊を倒したときに拠点から変な資料を回収した気がする。
資料には「闇の手の機密文書」と書かれていた。
よし、決めた。
「闇の手の者」とかいう組織をターゲットにしよう。
どうせ大したことない組織だろうが、お遊びの相手にはちょうど良い。
ついでに設定を付け加えておこう。
闇の手の者は世界の滅亡を目論んでいる、ってことにしておく。
ありがちな設定だ。
まあせいぜいオレを楽しませてくれよ?
あ、そうそう。
諜報部隊の名前も決めないとな。
適当に”指”とでもしておくか。
みんなオレの指って意味だぜ!
◇ ◇ ◇
カミュラはアークに命じられて諜報部隊”指”の一員として活動をはじめた。
彼女は荒くれ者が集う諜報部隊をうまくまとめ上げた。
部隊をまとめ上げるのは意外と簡単であった。
全員を倒して自分が一番強いことを証明しただけであった。
カミュラが強い理由は、アークとともにシャーリックから魔法教育を受けていたことにある。
アークには『オレが勉強してる間もこいつ(カミュラ)には働いてもらわないとな!』という考えがあったが、カミュラからすればそんなこと関係ない。
カミュラは勉強の機会を与えていただけたことに感激していた。
そしてアークの期待に応えようと彼女は必死になって魔法を学んだ。
残念ながら、カミュラは一般的な魔法――詠唱魔法――とは縁がなかったが、逆に身体強化は得意だった。
身体強化を習得し、体を鍛え、アークの役に立つために努力を続けた。
さらにアークから古代遺物をもらっていた。
もともとの才能も手伝って、カミュラは一般的な兵士を大きく上回る戦闘力を手に入れた。
その力で諜報部隊をまとめ上げたというわけだ。
カミュラは諜報部隊のトップとして大いに張り切っていた。
部隊のトップを任せられるというのは、それだけ大きな期待を寄せられているということだ。
カミュラはその期待に応えたいと考えていた。
『闇の手の者を根絶やしにする』
それが諜報部隊”指”の目的だ。
闇の手の者たちはガルム伯爵領を占領するために活動していたのだ。
やつらはもう何年も前からガルム領に潜んでいた。
最近のガルム領の荒廃も闇の手の者が一因ということだ。
闇の手の者の目的は途中までうまく行っていた。
実際、アークが伯爵になるまではガルム伯爵領は荒れ果てていた。
アークの介入がなければ、ガルム領は闇の手の者の占領下になっていただろう。
さらにアークは闇の手の者の最終目的は世界の滅亡だと語った。
闇の手の者は、世界に死をばらまくことを目論むとんでもない集団らしい。
カミュラは相手がとんでもなく危険な集団だとは理解した。
しかし主人であるアークがそれに立ち向かうなら、彼女もそれに立ち向かうのは当然のことだった。
こうしてカミュラはアークの言葉を本気で信じ、闇の手の者の殲滅を誓うのだった。