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いつも感想や誤字報告など本当に有難うございます!

貴重なご意見や素敵なお言葉を頂けて本当に嬉しいです。

大変申し訳ないのですが、これから実生活が忙しくなるので、感想への返信を控えさせていただき、本編の更新に専念したいと思っています。

いただいた感想はすべて読ませて頂いております。これからもよろしくお願いします。

「ジョンソン家のニールだ」

 デュークはあっさりと答えた。

 ……誰?

 貴族なんだろうけど誰か分からない。ジョンソン家なんて聞いた事がない。    

「ニールって……誰ですの?」

 アリシアも目をパチクリさせてデュークを見ている。

 アリシアも知らないんだ。

 僕は内心ホッとした。

 無知だという事を僕は恥ずかしいと思っている。

「土の魔法を扱えるジョンソン家だよ」

 ヘンリがそう言った。

 それでもアリシアは分かっていない様子だ。

「お茶会の時にリズ派だった男……アリにお前って言った奴だよ」

 ヘンリが少し呆れた様子でそう言った。

 それでようやく誰か分かった。

 ああ、あの馬鹿か……。キャザー・リズの信者のうちの一人。

「私がリズさんにとって目障りな存在だから私を消そうとしたって事よね?」

 アリシアが嬉しそうに明るい口調でそう言った。

 ……アリシアもある種の馬鹿だ。

 私は誰かに消されそうになるレベルの悪女になっているんだわって顔に書いてある。

 あんな危険な目に遭ったのにそんな考えになるアリシアは……馬鹿だと思う。

「アリ、嬉しがる事じゃない」

 そう言ってヘンリは小さくため息をついた。

 僕はもっと凄い陰謀でもあるのかと思った。

 デュークと目が合った。

 目が合ったのは初めてだ。

 瞳だけで彼は聡い人なのだと分かる。

「僕はジル」

 無意識のうちに口から言葉が漏れていた。

 生まれて初めて自分から名前を言った。

 三人とも驚いた表情で僕を見ている。

 デュークの目にはもう殺意はなくなっていた。

「俺はデューク」

 そう言ってデュークは軽く笑った。

 男の僕でも見惚れてしまうぐらい綺麗な顔をしている。

「ジルは頭の回転が速いんだな」

「私の助手ですよ?」

 デュークの言葉にアリシアが誇らしげにそう言った。

 僕は胸が熱くなった。

 アリシアが僕の事を自慢している。

 それがこんなにも嬉しいなんて……。

 僕はこの感情を初めて知った。

 心が物凄く温かくなって涙が込み上げてきそうな感情。

 数年前は貴族なんて全員いなくなればいいと思っていた。

 けど、今は生きていて欲しいと思う。アリシア、ヘンリ、それにデュークにも。

「やっぱり変だよ」

 僕は思っている事をそのまま口に出してしまった。

 三人の視線が僕に集まる。

「だって聖女だからって世界を救う……そもそもこの国を平和にする事すら出来ないと思うよ」

 僕がそう言った事に対してアリシアは目を見開く。

 ヘンリもデュークも僕の意見には同意してくれているように見えた。

「キャザー・リズもキャザー・リズの取り巻きも全員本当に馬鹿だから」

 僕は冷たく言い放った。

 アリシアがいくら気にしていないとはいえ、僕はアリシアを殺そうとしたキャザー・リズ達には相当腹が立っていた。

「さりげなく私のお兄様達も貶しているわよね?」

「まあね」

 僕がそう言うとアリシアの表情が緩んだ。

「やっぱり恋って怖いわね」

 アリシアは笑いながらそう言った。やっぱり何故か嬉しそうだ。

 こんなに可愛らしい表情をしているのに、さっきはあんな狂気を宿していたなんて信じられない。

 僕はずっと気になっていた事を聞いてみた。

「どうして心臓に一発で刺せたの?」

 僕の急な質問にアリシアは固まり、暫く考え込んだ。

 ヘンリとデュークも僕の言葉に驚いている。

 まさかアリシアが一発で心臓を刺して殺したとは思わなかったのだろう。

 アリシアは言おうか言わないでおこうか、心の中で葛藤しているように見えた。

 そして、小さくため息をついて口を開いた。

「実はあれはまぐれなのよね。心臓の場所っていうか体の仕組みは本で読んで理解していたのだけど、まさか本当に一発で出来るとは思わなかったわ。……刺さってよかったわ」

 僕は予想外のアリシアの答えに言葉を失った。

 やっぱりアリシアは変わっている。こんな令嬢を見た事がない。

 ヘンリとデュークも驚きというか、もはや呆れた目でアリシアの事を見ている。

「そろそろ小屋から出た方がいいのでは?」

 アリシアは外を見ながらそう言った。

 そうだ、忘れていた。

 外にはキャザー・リズ達がいたんだ。

「そうだな」

 デュークはそう言って指を軽く鳴らして壁をなくした。

 さっき気付いたけど、指を鳴らす魔法と鳴らさなくていい魔法があるみたいだ。

 アリシアはいつも鳴らしていたからそういうものだと思っていたけど、さっきのヘンリとデュークの治癒魔法の時は鳴らしていなかったし……。

 僕は魔法が使えない人間だからその辺はよく分からない。

「じゃあ、行きますか」

「え、何!?」

 ヘンリとアリシアの声が重なった。

 気付けばアリシアがデュークに片手で持ち上げられていた。

「降ろしてください」

「怪我人だろ」

「自分で歩けますわ」

「暴れるな。落ちるぞ」 

 アリシアは顔を真っ赤にして抵抗している。耳まで真っ赤だ。

 アリシアの照れている表情を初めて見た。

 今日はアリシアの色々な表情を見る日だな。

 デュークはどこか嬉しそうだった。

 けど、本気でアリシアの事を心配しているのがデュークの表情から伝わった。

「ジルも暴れるなよ」

 そう言ってヘンリが僕の事も持ち上げた。

「は? 僕は自分で歩ける」

「足が折れていた人に言われても」

 そう言ってヘンリは意地悪そうに笑った。

 ヘンリは鍛えているから僕が抵抗してもどうにか出来るような状況じゃない。

 というか、僕の足はいつの間にか完治していた。

 ……魔法って凄い。

 僕は改めて魔法の凄さを知った。

「足は治って」

「いるけど安静にしておきましょう」

 僕が最後まで言う前にヘンリがからかった調子でそう言った。

 けど、ヘンリの表情からも僕を心配しているのが分かった。

 僕はそのまま黙ってヘンリに従う事にしておいた。

 心配されるのは……悪い気はしない。

 そして僕達はようやく小屋を出た。

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