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今回は暴力的な表現があります。
いつも読んでいただき本当に有難うございます!
本当に嬉しくて幸せです。
腕が痛いわ……。
どうして私はこんなに粗末な小屋に閉じ込められているのかしら。
さっきまで普通に学園の中の森を歩いていたのに。
確か、誰かに思い切り後ろから殴られたのよね。物凄い激痛が背中に走って、その後の事はよく覚えていないのよね。多分、そのまま倒れたのだろうけど。
学園の中といえども危険ね。
後ろから襲い掛かってくるなんて本当に卑怯だわ。
やっぱり悪女は命を狙われるって事かしら。それくらい私は凄い人になったって事よね?
素晴らしいわ!
なのに、まんまと捕まってしまうなんて……。
悪女は絶対こんなみっともない目には遭わないはずよ。
皆に知れ渡る前に絶対にここから抜け出してみせるわ。
とりあえず、この後ろで結ばれている腕の縄をほどきたいのだけど、どこにも刃物らしきものは見当たらないし……そういえばジルはどこにいるのかしら。
一緒に歩いていたから、多分一緒に捕まったはずよね?
ガンッと扉が思い切り開く音がした。
あら、そんな開け方をしたらそのぼろぼろのドアが潰れてしまうわよ。
ガタイがいい男性三人が小屋の中に入ってきた。
格闘家みたいだわ。
こんな小さな小屋にそんな体の人達が三人も入ったら狭いわよ。
一人でいいから出てくれないかしら。
そうだわ、ジルの事を聞かないと。
「一緒にいた少年はどこにいますの?」
私の言葉に三人とも反応した。
鋭い刃のような目で私を見下ろす。
「ああ? 嬢ちゃん、口の利き方には気をつけろよ」
「いますのって気持ち悪」
「けどよ、すっげえ美人だから後でこの子で遊ぼうぜ」
「まぁ、殺せって言われているぐらいだしな」
「そうだな、たっぷり遊んでやろうぜ」
格闘家みたいな三人がにやけながら会話をしている。
私の背筋がゾワッと凍った。
なんて気持ち悪いのかしら。
いっそのこともう魔法で……使えないわ。
何度指を鳴らしてもどの魔法も使えない。
嘘でしょ。どういう事?
「パチンパチンってうるせえんだよ」
私は一番体格のいい男にお腹を蹴られた。
「っつうぅ……」
……痛い。嘘でしょ。本当に蹴るの?
信じられない。こんなに人に蹴られるのって痛いの?
全く動けない。本当に痛いわよ。
指を鳴らす音にトラウマでもあるのかしら?
そこまで怒らなくてもいいでしょ。
「見ろよ。呻いてるぜ」
色黒の三人の中でリーダー的存在の人が私の方に顔を近づける。
「こいつの目、黄金だぜ。まじで顔綺麗だな」
まじまじと私の顔を見ながらそう言った。
ああ、もう、殴りたいのに体が動かないわ。
「汚い顔をこちらに近づけないでいただきたいわ」
口だけは動くのでかろうじて私はそれだけ言った。
色黒男は一瞬固まったがすぐに私の胸ぐらを掴み私を持ち上げた。
今にも私を殺しそうな目でにらむ。
こんなにも殺意のこもった目を見るのは初めてだわ。
そんなに私の事を殺したいのかしら。
「その度胸は認めてやるが、あんまり調子に乗るなよ」
そう言うのと同時に私は思い切り頬を殴られた。
「……っ!」
男の人の拳ってこんなに強いのね。
ああ、歯が一本折れたわ。
自分の口から血が垂れているのが分かる。
鮮明な赤が床に散らばる。
私はそのまま床に倒れこんだ。
殴られるのってこんなにも痛いのね。
頭にまで響くわ。ずっと脳がズキズキしているもの。
初対面でこんなにも酷い扱いを受けたのは初めてだわ。
格闘家三人組はそのまま小屋から出て行った。
扉は開けっ放しで行くのね。
ああ、本当にどうして私はこんな目に遭っているのかしら。
彼らの雇い主は一体誰なのかしら。
昨日ヘンリお兄様に悪女になりたいって言ったところなのに……。
いきなりこんな醜態を晒したくなんかないわ。
何とかしてここから抜け出せる方法はないかしら。
体は動かないけど、頭は動かせるわ。
……これは一体何かしら。
私は自分の首に何かがはめられているのに気付いた。
首輪?
どうして首輪……ああ、そういう事ね。
これのせいで私は魔法が使えないんだわ。
多分、これ魔力を封じ込める首輪よね。
これを持っているって事は貴族としか考えられないわ。
つまり、彼らの雇い主は貴族って事よね……?