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前回に引き続き今回もグロイ表現があります。
読んでいただき本当に嬉しいです。
有難うございます!
「アリシア、こんな事ぐらい簡単に解決しなさい」
私もジルも固まった。
ウィルおじいさんが初めて私に厳しい事を言った。
……涙が止まったわ。
「君はこれからもっと辛い事にぶち当たっていくんじゃ」
ウィルおじいさんは低く重みのある声でそう言った。
「君は私に世の中で一番の悪女になりたいと言っただろう? あれは嘘だったのか?」
「いいえ……。なりたいですわ」
私は力強く答えた。
「なら、こんなところでつまずいていてはだめだ。君が目指している悪女は一体どんな悪女なんだ?」
「志を高く持って、綺麗事が大嫌いで、筋を通して、表情をあまり出さなくて、思慮深く、どんな時も冷静な判断を下せる、強い悪女ですわ」
私はたどたどしくなりながらも最後まで言った。
自分で言って、自分で改めて理解した。
そうよ、私は強い悪女になるのよ。
ヒロインになんか負けないくらいの悪女よ。
「そうだ、アリシア」
ウィルおじいさんは優しく私に微笑んでくれた。
「アリシア、頑張れ」
ジルが私の方を力強い目で見ながらそう言った。
やってやるわ。私は世の中で一番の悪女になるのよ。
人一人救えないくらいで悪女なんて名乗れないわ。
考えなさい、アリシア。しょうもない魔法をどう使うか。
皮膚がただれているのよね……、あれで元に戻るのかしら。
とりあえずやってみるしかないわよね。ぐだぐだ考えている暇なんてないもの。
私は指を鳴らした。肌を綺麗にする魔法。
オーラが女性を優しく包んでくれる。
本当に綺麗になっていくわ。火傷も治せるなんて。ニキビを治す以外にも使えるのね。
どうしてこれをもっと早くに思いつかなかったのかしら。
顔もどんどん綺麗になっていくわ……、思っていたより若いのね。
私より少し年上ぐらいかしら。それに、綺麗な顔立ち。まぁ、ゲームには不細工がいないものね。
壊死している部分はどうすればいいのかしら。
流石にもうこの足の肌を再生することは出来ないわ。
もう腐った後だもの。死にかけならまだ治せたかもしれないけど、死んでしまっていたら再生させることは不可能だわ。
……切断しか方法はないわよね。
壊死の手術って壊死している所よりずいぶん上を切断するのよね。
つまり、彼女の太ももを切断すればいいのよね。
切断は私の剣でするしかなさそうだわ。
麻酔なしで切断すると痛みでショック死してしまうかもしれないわ。
闇魔法は治癒と破壊の魔法だったっけ?
破壊……、肌の組織を破壊する魔法。
じゃなくてもっといい魔法があるはずよ。
アリシア、頭を動かして、よく考えなさい。
……痛みを十秒だけなくせる魔法。十秒で人の足なんて切断出来るわけないわ。
もし出来たとしても魔法が解けたら痛みが襲ってくるわ。
けど、怪我なんだもの痛みはつきものよ。
後は、止血の方法が問題よ、……細胞を繋げる魔法、これって血管でも出来るのかしら。試した事がないから分からないわ。
でもそれしかないもの。
私は自分の剣を抜いて水で綺麗にした。
ついでにマントも綺麗にしておきましょ。
私はマントに汚れたものを綺麗にする魔法をかけた。
よし! これで準備は整ったわ。
「何するの?」
私はジルの質問を無視して、彼女の鳩尾に一発拳を入れて気絶させた。
自分の足を切断されているところなんて見ない方が良いもの。
私は剣を握りゆっくり息を吸った。
勝負の時間は十秒だけ。
絶対に失敗は許されないわ。一発で決めるのよ。
自分の持っている全ての力を手に集中させた。
自分の心臓の鼓動が速くなるのが分かる。
大丈夫よ、私。私は大きく息を吸った直後、パチンッと指を鳴らしてすぐに私は大きく剣を振りかざし、勢いよく振り下げた。
ボトンッと彼女の右脚が地面に落ちた。
血が大量に出ている。私はもう一度指を鳴らした。
段々血が流れる量が少なくなっていく。
「ああああああああああ!!」
全部魔法が終わる前に彼女が目覚めた。
十秒経ってしまったんだわ。今、暴れられたら困るわ。
「ジル! 彼女を抑えて」
私がそう言うと、ジルはすぐに彼女の肩を抑えた。
「痛い痛い痛い痛い痛い!」
足を落としているんだから痛くて当たり前よ。
私は止血されたのを確認して、マントを良いサイズにちぎって足の周りに巻き付けた。
「助けて、痛いよ。苦しい、痛い痛い痛い痛い」
「ああ、もう、うるさいわ! あなたが助けを求めてきたのでしょ? 生きたいのならこれくらい我慢しなさい!」
何度も言うけれど、私は良い人なんかじゃないのよ。
こんな時って聖女なら励ますんだろうけど、私は悪女よ。
優しい言葉なんて一切かけないわ。