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今回はグロイ表現が出てきます。


いつも読んでいただき本当に有難うございます!

読んでいただけて本当に幸せです。

 やっぱり広場には地面に人が沢山寝転がっている。

 私は人を起こさないようにしながら噴水の場所まで足を進めた。

 ……泥水だわ。

 今ここで魔法を使ったら私は間違いなく注目を浴びる事になる。

 どうしましょ……。

 何か良い案がないかしら。

「く、る……、しい」

 迷っている暇なんかないわ。

 アリシア、覚悟を決めなさい。今ここでこの女性を助けられなかったら悪女失格だわ。

 強いものは弱いものを守ってあげないといけないのよ。

 私は、噴水の近くに女性を優しくおろした。パチンッと指を鳴らした音が広場に響く。

 泥水は煌めくオーラに包まれてどんどん綺麗になっていく。

 地面に寝ている人たちが体をゆっくり起こすのが分かる。

 私は自分が着ていたマントを外し、水につけた。

「アリシア!?」

 ジルの声が近くで聞こえた。

「何してるの?」

 ジルが私の元に駆け寄ってきた。

 後ろにウィルおじいさんも見える。

「早くここから離れた方が良い! 皆が起きるよ!」

 ジルが大きな声で私に叫ぶ。

 けど、ここで私は彼女を見捨てるわけにはいかないのよ。

「何をしているんだ?」

 ウィルおじいさんが遅れて私の元に来た。

「彼女を助けますの」

 私はジルとウィルおじいさんの方を見てそう言った。

 いくら反対されても私はここをどきませんわよ。

「助けてやりなさい」

「え?」

「じっちゃん!? 何言っているの?」

「早くその女性を助けてやりなさい」

 ウィルおじいさんは私に向かってそう言った。

 長年一緒にいたら私の性格も分かってくれるのね。

 流石ウィルおじいさんだわ。

 私は綺麗な水につけたマントを強く絞った。

 やっぱり私、腕筋は凄いのね。水がどんどん絞られていく。

「水が綺麗だ……」

 寝転がっている人達が起き始めた。

 今、邪魔されたら困るわ。

 私は魔法で壁を噴水の周りに張った。

 私の壁は透明に黒色の幾何学的な模様があるの。

 本で読んだんだけど、属している魔法によって壁が違うみたい。ちなみに霧の壁は水魔法。

 私は壁がちゃんと作れているのを確認して、マントでその女性を拭いた。

 マントがどんどん汚れていく。

 泥の塊がなかなかとれないわ。

 ……違うわ、皮膚がただれているわ。

 私は驚きで手を止めてしまった。

「アリシア、大丈夫?」

 ジルが私の顔を覗き込む。

「こんなの普通だよ。もっと酷い人達がここには沢山いるよ」

 ジルが真顔でその女性を見ながらそう言った。

「彼女は多分、放火された家に取り残された少女じゃろう」

 ウィルおじいさんが寂しそうな顔をしながらそう言った。

 ……私、彼女を救えないわ。

 闇魔法なんてしょうもない魔法ばかりだもの。

 傷を治す事なんて出来ない。

 私はまたゆっくり体を拭き始めた。

 ……右の膝から下が壊死しているわ。多分、火でやられたんだわ。

 正直、見ているだけでもしんどい。こんな状態を初めて見たわ。

 彼女をどうやって助ければいいの?

 落ち着かなければいけないと分かっているのに頭の中がパニックになって何も考えられない。

 自分なら助けられるって……、なんて愚かな考えだったのかしら。自分の事を過大評価しすぎだわ。

「アリ、大丈夫? 僕に出来る事はある?」

 ジルが心配そうに私を見る。

 頭がうまく回転しない。自分で自分の呼吸が荒くなるのが分かる。

「アリシア、大丈夫だ、落ち着きなさい。ゆっくり息を吐くんじゃ」

 私は言われた通りにゆっくり息を吐く。

 ウィルおじいちゃんが私の背中をさすってくれている。段々落ち着いてきた。

「魔法は使い方じゃ。どんなに意味のない魔法でも物凄く役に立つ」

「そんなの分からないですわ」

 私はむきになってそう言ってしまった。

「君は賢い、必ず彼女を助けられる」

「そんな根拠のない事を言わないで欲しいですわ。命を救うのは私には重すぎましたの。無理ですわ!」

 ウィルおじいさんが言ってくれた言葉が嬉しいはずなのに、なぜか声を荒げてしまった。

 今までこんな事に直面した事がなかったんですもの。

 どうすればいいか全く分からないのよ。今まで本で読んできた知識も思い出せないわ。

 本当に何の案も出ないのよ。

 私は無意識に涙が溢れ出ていた。

「アリシア……」

 ジルが私を見つめる。

 とめどなく涙が溢れる。自分で止める事が出来ない。

 自分の意思に反してどんどん涙が出てくる。

「自分に甘えるな」

 ウィルおじいさんの言葉が私の耳に響いた。


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