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「アルバートお兄様!!」
私は朝一でアルバートお兄様のところへ向かった。
勿論、走っていませんわよ?
悪女はいつでも落ち着いているんだから。
けど、早歩きは許してもらえるわよね……?
「アリシア? どうしたんだ?」
アルバートお兄様が何事だという顔をしながら私を見る。
「魔法学園の出し物の件ですが、舞台ですか?」
「ああ。舞台で何か披露するんだ」
あら、舞台じゃない。
じゃあ、やっぱりデューク様があの冷たい空気を作ったのはリズさんと私のバトルを見たかったという事でよろしくて?
「いきなりどうしたんだ?」
「いえ、なんでもありませんわ」
「アリシアもフェスに来るよな?」
「勿論ですわ」
アルバートお兄様が何故か含み笑いをした。
何ですの。その笑いは……。
「アル兄、家庭教師もう来てるよ」
アランお兄様が遠くからアルバートお兄様に声を掛けた。
「じゃあな、アリ」
アルバートお兄様はそう言って、去ってしまった。
……魔法学園で勉強して、家でも家庭教師に勉強を教えてもらうの?
真面目なのね。……私も負けていられないわ。
私は図書室に向かった。
よし!
魔法練習するわよ。
私はレベル11からレベル15までの本に目を通した。
……肌を綺麗にする魔法?
なにこれ……。
ニキビや毛穴を無くすって事?
前世でもしこれを使えていたなら、私、無茶苦茶稼いでいたかもしれないわ。
闇魔法ってもしかして一番くだらない魔法が多いんじゃないのかしら。国の五大魔法と言われているのに。
前に見た魔法の種類が書かれている本にも載っていなかったわよ。
魔法大全とかになら書かれているのかもしれないけど……。
一般的には知られていないって事よね。レベル12の魔法だし。
もしかして闇魔法って美容系魔法なの?
実践してみたいけど、私は今のつるつる肌に満足しているし……。
機会があればやりましょ。そんな機会、一生来ない気がするけど。
私はまた本を読み始めた。
今度は肌の組織を破壊する魔法?
ちょっと待って、綺麗にした後に破壊するの?
これって……、私に悪女になれって導いているの?
なんだか急にやる気が出てきたわ。
レベル15だから、これが出来れば今日の目標達成よ!
一番難点はこれを実践できる相手がいないという事よ。
それにしても闇魔法ってたいした魔法ないのね。
他に出来そうな魔法ないのかしら。役立ちそうなのがいいわ。
『レベル14 物を積む魔法 物を動かす魔法をせずとも一気に物が積める』
これもどこで使うか分からないけど、実践してみましょ。
私は本を十冊ほどばらばらに床に置いた。
あとは想像……。
私は指をパチンっと鳴らした。
すると煌めくオーラみたいなものが本を囲い始める。
何度見ても綺麗ね。このダークな感じのオーラが素敵だわ。
どんどん本が綺麗に積まれていく。
あっという間に小さな本のタワーが出来上がった。
我ながら上出来だわ!
今日はレベル14まででいいわよね。
レベル14を習得出来たのならレベル15も出来そうな気がするし。
悪女だってたまには横着も必要よね。
頭の中で自分の行動に無理やり理由をこじつける。
今からジルに持って行く本でも探しましょ!