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「アリちゃん、リズをメインにする出し物どんなのが良いと思う?」

 私にそんな事聞かれても知りませんわ。

 カーティス様も私がリズさんを敵対視している事に気付いて欲しいわ。

 というか、どうして平民のリズさんが生徒会のメンバーなのよ。

 ……優秀だからよね。

 そもそもリズさんがメインになるようにするなんて悪役令嬢の私がするべき事じゃないわよ。

 でも私が提案した事だから自分で言った事にはちゃんと責任を持たないとね……。

 なんだか悪女への道が遠ざかっているような気がするわ。

「リズさんが最も好きな魔法はどの魔法ですの?」

 私の質問にリズさんは少し頬を赤らめる。

「水魔法よ」

 ……左様でございますか。

 なんだか前世でリア充爆発しろって言葉が流行っていた理由が分かる気がするわ。

 人の幸せって自分にとっては楽しくないものね。人によるんだろうけど。

「では水魔法を最もよく使う出し物にするのはどうですか?」

 リズさんは顔を真っ赤にした。

 あら、林檎みたいですわ。男の人はこんな反応に落ちてしまうんだわ。

 確かに初々しくて可愛らしいもの……、私ったらまたリズさんの事を褒めているわ。

 彼女は私のライバルで、私に虐められるのよ。意識を引き締めないとうっかり褒めちゃうわ。

「デューク様と二人で何かしたらどうです?」

 私がそう言うと、デューク様に軽く睨まれた。

 恋のキューピットになってあげようとしているのにどうして睨まれたのかしら。

 相思相愛なら普通喜ぶべきじゃない? 確かに彼が私に好意を抱いてくれているのは分かるけど、それは恋愛感情じゃないわよね? どうしていきなり不機嫌になるのかしら。

 もしかして私に名前を呼ばれる事さえ不愉快だったとか!

 きっとそうに違いないわ!

 名前を呼んだだけで私を睨むなんて、私は悪女だって認められているのと同じことですわ。

「デューク様、リズさんと組んで何かをするでよろしいですか?」

 やっぱりデューク様は私に名前を呼ばれると不機嫌になっているわ。

 これで私も随分立派な悪女に近づいたんじゃないかしら。

 思わず口が緩んでしまいますわ。

「具体的には何をするんだ?」

 エリック様が私に聞いた。

 具体的に? そこまで考えていなかったわ。

 とりあえずラブラブ作戦なのよね?

 ラブラブと言えば何かしら……。

「抱き合ったりしたらいいのでは?」

 私は考えていた事をそのまま口に出してしまった。私の言葉に全員が固まった。

 ……確かに飛躍しすぎてしまいましたわ。けどそこまで驚く事なのかしら。

 皆の表情がこわばっていきますわ。私そんなにまずい事を言ったの?

 空気が一気に冷たくなる。

 さっき私が頑張って作った空気になっているわ。

 けどこれは私が作ったんじゃなくて……、デューク様?

 まさか私とリズさんのバトルを見たくてわざわざこの空気をもう一度作ってくださったのかしら。

 なら、喜んでお見せしますわよ、私の悪女っぷりを!

「アリシア、話が極端すぎるぞ。ハハハッ」

 アランお兄様が冷たい空気を破壊しようと無理に笑う。

 折角の冷たい空気が……。

 皆もアランお兄様の笑いにつられて笑う。けど皆さん顔が引きつっていますわよ?

「アリちゃん、もうちょっと能力に関係あることをしよう!」

 そう言ってカーティス様が完璧に冷たい空気を壊した。カーティス様もかなりぎこちない笑顔だったけど……。結局その日は何の案も出なかった。

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