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「お兄様達は何を出し物にするおつもりなの?」
私がそう尋ねるとアルバートお兄様が苦笑した。
「それが全く考えていないんだ」
「じゃあ、私は何をすればいいのです?」
「アリシアちゃんにはこんなのが良いって言う提案をしてほしいの」
リズさんが横から割り込んできた。
あら、今こそ私の悪女っぷりを発揮よ。
「リズさんには聞いていませんわ」
私は笑顔を作ってそう言った。
一瞬で部屋が静かになった。
これよ、この空気よ。私が生み出したかったのはこの冷たい空気感!
「アリシア? どうしたんだ?」
アルバートお兄様が私の顔を覗き込む。
どうもしていませんわ、お兄様。
私は今、自分の職務を全うしているだけですわ。
「っていうか、アリちゃんとリズって知り合いだったんだね」
カーティス様が場を和ませようとする。
「そうなの。前に魔法学園で会ったのよ」
「ああ、あの時!」
せっかく私が冷たい空気を作ったのになんだか台無しにされたみたいだわ。
あの空気のまま私とリズさんはバチバチに睨み合うっていうシナリオを私は考えていたのに。
「アリシアは何か案ある~?」
フィン様が明るい声で私に声を掛ける。
案ね……。デューク様とリズさんがラブラブになればいいのだから、正直なんでもいいのよね。
だから、今はリズさんを虐める事に専念しましょ。
「リズさんって全魔法扱えますのよね?」
「ええ」
リズさんが少し警戒した顔で私を見る。
うふふ、その顔が見たかったの。
ヒロインが悪役令嬢に警戒するなんて…これからの展開が楽しみすぎるわ!
「それを活かせばいいのでは? 折角そんな能力持っているのに使わないなんてもったいないですわ」
私は口角を片方だけ上げながら笑った。
今の顔! 誰かに写真を撮ってもらいたいわ。まさに悪女の象徴のような笑みよ。
「有難う」
え?どうして私、お礼言われているのかしら?
「能力を褒めてもらえて嬉しいわ」
皮肉のつもりで言ったのよ!
もう! なんて鈍感なの! だからヒロインは苦手なのよ!
私の好感度を上げようとしてどうするのよ。
貴方ヒロインでしょ?
ちょっとぐらい嫌そうな顔しなさいよ。そこでデューク様に助けを求めるのよ?
何ちゃっかりお礼なんて言っちゃっているのよ。
「確かにそれはなかなかいい案だな」
ゲイル様が頷く。
待ってください、この案に乗らないで欲しいわ。
なんですのこれ。新手の虐めですの?
まさか悪女の私を虐めているの?
フッと誰かの笑い声が微かに耳に入ってきた。
私が少し戸惑っていると、優しい笑みが私の目に入ってきた。
今私、笑われたの?
……デューク様に笑われたわ。
もしかして私が虐められているのを楽しんで見ているのかしら。
虐められているのを楽しんで見ているわりには私に優しく甘い眼差しを向けているのだけど……。
これはどういう意味で捉えたらいいのかしら。