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 泣き疲れたのかジルは寝てしまった。

「アリシア、有難う」

 そう言っていつものようにウィルおじいさんが私の頭を撫でた。

 あら、私、お礼言われるような事していないわ。

「私、酷い事ばかり言いましたわ」

「しかし、事実じゃ」

「聖女みたいな方ならあんな事言わないと思いますわ」

 私がそう言うとウィルおじいさんは目尻に皺を寄せて笑った。

「聖女みたいな人の言葉だったらジルには届かなかったと思うぞ」

 じゃあ、私リズさんにも勝てたって事かしら?

 ……勝負もしていないのにそんな事を考えるなんて馬鹿げているわね。

「あ! そう言えば、私、汚れたものを綺麗にする魔法を使えるようになりましたの」

 ウィルおじいさんが固まった。

 目がなくても驚いているのが分かる。

 魔法が使えるようになったなんて魔法が使えない人の前で言うなんてやっぱり失礼だったのかしら。

 でもウィルおじいさんはそんな事で怒るような人じゃないわ……。

「アリシア、君は今何歳なんじゃ?」

「十歳ですわ」

 どうして急に歳なんて聞くのかしら。

 ウィルおじいさんは顎に手を置いて難しい顔をしている。一体どうしたのかしら。

「ウィルおじいさん? どうかしましたの?」

「ああ、いや。そうじゃアリシア、その魔法を今やってくれないか」

「分かりましたわ。どこにすれば?」

「この部屋全体を綺麗にする事は出来るかい?」

「やってみますわ」

 この部屋の隅々まで綺麗にすることを想像する。

 いつも私は目を瞑りながら想像するのだけどこれって目を開けたままでもいいのよね?

 正直なところ失敗するのが怖くて目を瞑っていたのよね。

 けど自分で魔法をかけているところ見たいし。

 私は目を開けて指を鳴らした。

 この部屋全体が汚れも埃もすべてなくなるように想像する。

 するとどんどん部屋が煌めくオーロラみたいなものに包まれる。

 とっても綺麗だわ。キラキラ輝いて素敵……。

 椅子や机、ベッドにもそのオーロラみたいなものがかかっていく。

 そしてゆっくり消えていった。私こんな事出来るのね……。

 自分でした事に自分で驚く。これは自画自賛してもいいわよね?

 見違えるわ。さっきまでの部屋が嘘みたいよ。

 黄ばんで汚れていた窓も埃だらけだった天井も見るに堪えなかった床もピカピカよ。

 部屋を綺麗にしただけで空気ってこんなに変わるのね。

 淀んでいた空気が新鮮な空気に変わったみたいだわ。

「空気が綺麗じゃ。重く暗かった空気が軽く明るくなった。凄いな」

 ウィルおじいさんはそう言って私を褒めてくれた。

 ウィルおじいさんに褒められると本当に嬉しいのよね。

 今日はいい夢を見れそうだわ。


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