43 十歳 ウィリアムズ家長女 アリシア
現在十歳 ウィリアムズ家長女 アリシア
魔法学園に侵入したのをまさかお兄様達にバレてしまうなんて。
アルバートお兄様のあの笑顔で説教されるのって本当に恐怖なのよね。
今日はもう寝ましょ……って思ったけど寝る前に軽く筋トレしておかないとね。
サボったらすぐに衰えるんだもの。
私は腹筋をしながら今日一日を振り返った。
ヒロインのリズさんにも会えたし充実した一日だったわ。大満足よ。
可愛くて知性もあって、モテモテになるのも分かる気がするわ。
……ダメよ、アリシア。彼女は私の敵なの、褒めてどうするのよ。彼女は私に虐められる運命なのよ。
そんな事を考えながら筋トレを終わらせた。
私はあくびをしながらベッドに潜った。
今日は魔法の練習をするわよ!
私は朝から図書室に向かった。もうお屋敷にいる皆が、私が図書室に行っている事を知っていた。
前にロゼッタにうっかり言ってしまっただけなのに、結構一瞬で皆に知れ渡るのね。
私が図書室に入ると話し声が聞こえた。
あら、先客?
私は声がする方へ足音を忍ばせながら近づいた。
「彼女は異端児だ」
「だが今普通に暮らしているぞ」
「それでもあいつは危険人物だ」
「その言い方はないだろう!」
誰の話をしているんだろう……。
異端児って事は、もしかしてリズさん!?
もう危険人物になっているの?
これってお父様の声よね?
もう一人誰だったかしら……。聞いた事あるのだけど、思い出せないわ。
それにしてもリズさん、もうお父様達に目をつけられているのね。
「悪かった。言い方を変えよう。彼女の思考力は並外れている」
「ああ」
「彼女の愛国心は我々に比べたら薄い」
「敵に回すと厄介だという事が言いたいのか?」
リズさんの事なのにどうしてお父様は怒っているのかしら。
これ以上盗み聞きしない方がいいわよね。
私はそっと立ち上がり図書室を出ようとした。
ドンッと音を立てしまった。
痛ッ!
……肘を本棚にぶつけてしまいましたわ。
「誰だ!」
野太い声が図書室に響く。
そうなりますわよね。ああ、逃げたいわ。
でもここで逃げたら悪女としての威厳がなくなるもの。
そんなの私のプライドが許さないわよ。
私は本棚から二人の前に姿を現した。
お父様と、ゲイル様のお父様のジョアン様?
二人とも目を丸くしながら私を見ている。
確かに二人の会話を聞いてしまった私も悪いけど、本当に誰にも聞かれたくないのなら図書室なんかで話さないでほしいわ。
二人とも何か喋ってよ。この気まずい空気どうすればいいのよ。
……私から喋ればいいのかしら。
「こんにちは。アリシアです」
私は何事もなかったかのように挨拶をした。