34
私は家に帰るとすぐ図書室に籠った。
夜まで今日は魔法の本をひたすら探すわよ。
部屋の隅から隅まで駆け巡っても全く見つからない。
ふと二階の書物が視界に入った。
そうだわ、二階も本があったんだわ。
私は二階の階段を上ってみる事にした。
二階の書物は一階の書物を読み終わってから読もうと思っていたけれど、そんな事を言っていたら何年かかるか分からないもの。
私は階段を上って一番手前の本棚を眺めた。
……嘘でしょ、ここ全部魔法についての本じゃない。こんなにすぐに見つかるなんて。
最初から二階に行っておけば一瞬で見つかったのに……。
今頃後悔したってしょうがないわ。次の事を考えないと。
私はレベル1の闇魔法の使い方が書かれている本を手にした。
ざっと目を通す。
『レベル1 魔力を持つ者ならすぐに習得可』
という事はじゃあ今からでも出来るってことよね?
もし魔法学園に行く前に私がレベル100まで習得したら魔法学園に行かなくてもいいんじゃないかしら。
まぁ、私の場合はヒロインを虐めたいから行くのだけれど。
魔法学園って確か五年間だから、私が入った時にはヒロインは最上級生って事なのよね。
アリシアってなかなか肝が据わっていたのね。
私はページを捲った。……物を浮かす事が出来る魔法。
とりあえず、やってみましょ。なんだか緊張するわね。
生まれて初めて魔法を使うわ。
『物が浮いている所を想像して、中指と親指をこすり音を出す』
物凄く説明が雑ね。中指と親指をこすり音を出すって指パッチンって事よね?
私は本を床に置いた。
上手くできなかったらどうしましょ。レベル1でつまずきたくないわ。
私は目を瞑り、本が浮かんでいるのを想像した。
それと同時に指を鳴らした。
あら、案外いい音がしたわ。ゆっくり瞼を開いた。
目の前に本がふわふわと浮かんでいた。
……成功?
やったわ! 魔法だわ!
紐でぶら下げられていないし、魔法よ!
こんなにもあっさり魔法って使えるものなのね。もっと難しいと思っていたわ。
でもまだレベル1だしね。
私はレベル1~5の本を一気に読んだ。基本は魔法って念と想像だけなのね……。
よし、頭にやり方を詰め込むだけ詰め込んだから、後は実践するだけね。
私はとにかく魔法を使いまくった。使えそうな魔法から全く使えなさそうな魔法まで。
紙を切る魔法、髪の毛を束ねる魔法、歯を白くする魔法、爪を切る魔法、物を動かす魔法……。
時間を忘れて私は無我夢中でやり続けた。
一日で私はレベル5まで扱えるようになっていた。
なかなかの進歩なんじゃない?
って思いたいけど、レベル5までなら誰でも簡単に扱えるレベルなのよね。
まだまだノミレベルだわ。
それにしてもアリシアって素質は良かったんだから、努力すればもっと凄い悪女になれたんじゃないかっていつも思うのよね。私はゲームの中のアリシアに負けないくらいの悪女になってやるわ。
「アリシア様~」
ロゼッタの声が遠くから聞こえた。
夕食の時間だわ! お腹ペコペコよ。
「今行くわ」
小走りで食卓に向かった。
外からの穏やかな風が吹き魔法書のページが捲れた。
魔法書の注意書きが月光に照らされる。
『魔法を扱えるのは十三歳以上である』