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結局その日は貧困村に行けなかった。
私はベッドの上でデューク様からもらったネックレスを眺めた。
本当に美しくてうっとりしてしまうわ。
デューク様って私の事を妹って扱いじゃなくてちゃんとレディーとして扱ってくれている気がするのよね。
これって私だけじゃなくて皆にもしているのかしら。
だって彼はヒロインと恋に落ちるのよね? そしてそのヒロインを私は虐めるのよね?
……ネックレスを返せって言われたらどうしましょ。
でも悪女だったら貰ったものは絶対に返さないわよね。
それにきっと宝石でも自分の身の丈にあったものでなくてもつけるわよね……。
私は起き上がって鏡の前に立ち、ネックレスを首につけた。
これなら剣のお稽古の時も邪魔にならないし一日中つけていられるわね。
それにしても本当に綺麗ね。微かに青く光るダイヤモンド……、なんだかデューク様が近くにいるみたいだわ。
……ってなんて妄想しているのかしら。
彼は国王様の息子で年上でヒロインと恋に落ちるのよ。
余計な事を考えないように私は腹筋を始めた。
次の日、ロゼッタに朝一でネックレスについて聞かれた。
「それが昨日デューク様から頂いたネックレスですか!? なんてお美しい!」
目をキラキラさせて私の胸元を見る。
「……これってダイヤモンドですか?」
ロゼッタが目を見開きながら私の顔を見てそう言った。
「そうみたい」
ロゼッタは目をさらに大きく見開いた。そうよね、そういう反応になるわよね。
やっぱり外した方がいいのかしら。でも私は悪女ですもの。
高価なものはやはり身につけておきたいわ。
それからアランお兄様とヘンリお兄様にも質問攻めにされた。
まぁ、予想はしていたんだけどね。
「「これをデュークから貰ったのか!?」」
「ダイヤモンドだよな」
「ああ、ダイヤモンドだ」
「俺も渡す瞬間その場にいたかったな」
私が答える前に二人がどんどん話を進めていった。
その後も、お屋敷で通り過ぎる人皆にネックレスを褒められた。
お母様はとても綺麗ねってそれだけ言って微笑んでいたのだけれど、お父様は目を丸くして固まった。
そりゃ自分の娘が国王様の息子からダイヤモンドのネックレスを頂いたんだもの、驚くわよね。
それでもこんなに大騒ぎするようなことなのかしら。
お屋敷中が一日その話題になるなんてよっぽどダイヤモンドが珍しい代物なのね。
私はそんな事をぼんやりと考えながら図書室に向かった。