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馬車を降りると大量の眩しい光が目に差し込んできた。
ここがフィン様のお屋敷!?
流石光の魔法、こんなに輝いているお屋敷見た事ないわ。
目がチカチカするわ。サングラスが欲しいけど、この世界にあるわけないわよね。
「アル、ヘンリ、アラン! ようこそ!!」
ニコニコした少年がこちらに走ってくる。
「アリシア、来てくれて有難う! 君と話してみたくて連れてくるようアランに頼んだんだ」
フィン様は満面の笑みでそう言った。
ああ、この笑顔で全国のショタコンを虜にしたのね。なんて輝いた笑顔なのかしら。
「お招きいただき有難うございます」
スカートを軽くつまみお辞儀をした。
フィン様はそんなに畏まらないで楽にしてって言ってくださったけど、悪女はいかなる時も気は緩めないものなのよ。
私達は客間の方へ案内してもらった。どうやらお兄様達は初めてフィン様のお屋敷に来たようではなさそうだ。
「どうぞ」
フィン様が大きな扉を開いて下さった。見た目は少年だけど紳士なのね。
私はお礼を言って部屋に足を踏み入れた。
部屋にはカーティス様、エリック様、ゲイル様、そしてデューク様が机を囲んでいる大きなソファに腰かけていた。
もしかして私も今日から仲間入り?
それは困るわ、悪女は人とつるまないのよ。
机には地図が置かれていた。どうして地図? もしかしてもう私国外追放されるの?
何かそんなに悪い事したかしら。覚えのない所で悪い事をしているのならもう立派な悪女ね。
案外短い道のりだったわ。
「楽にして」
フィン様がキラキラ笑顔でそう言って下さったのだけれど、この状況で楽になれるわけないわ。
コンコンッと誰かが扉を叩く音がした。それから大きい扉がゆっくり開く。
私は一瞬で自分の背筋が凍るのが分かった。
自分の目を疑った。疑わずにはいられなかった。
どうして国王様がここに来ているの? 偽物じゃないわよね。
絶対に本物だわ。だって、貫禄が半端ないもの。
お兄様達が頭を下げる。私も少し遅れて頭を下げた。
待って、私国王様直々にお出ましになるぐらいの罪を犯したのかしら。
「頭を上げよ」
威厳のある声が部屋に響く。私達は頭を上げた。
歳をとっているといえどもやっぱり美形よね。
瞳がデューク様より少し濃くて何故かとても知性を感じるわ。
「君がアリシアか」
私が国王様をじっと見ていると、フッと優しく笑って私を見ながらそう言った。
大人の笑顔ってどこか余裕があって素敵だわ。
「こんにちは、国王陛下」
さっきフィン様の前でしたのと同様に国王陛下にお辞儀した。
「君の事は聞いている」
「私の事を……?」
私は驚きのあまり声がかすれた。
「少し聞いてもいいかね?」
なんの事か分からず私は、はい、と答えた。
国王様はソファに腰を下ろすと、お兄様達も腰を下ろした。
あら、私だけ仲間外れ?
私は立ったままその様子を見ていた。
国王様は少し地図を眺めてから顔を私の方へ向けた。
その知性溢れる瞳が私を試そうとしているように見えた。
「アリシア、君は世界の中でのこの国の位置をどう見ている?」