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プロローグ
ある日、部屋の窓が異世界と繋がった。
窓の向こうで目を真ん丸にしていたのは王子様で、これがせめてお姫様だったなら僕だって色々期待したりしたのかもしれない。
とにもかくにも理解しがたい事象。受入れきれない現実。それを幸運ととらえるか不幸ととらえるかは本人次第というけれど。
チートは、特になかった。
ハーレムも、特になかった。
魔法も使えるようにはならない。
僕は勇者様として呼ばれたわけでもなく、相手の国には特に困りごとなどない。神様が僕を異世界に飛ばしたわけでもなければ、悲壮な決意も壮大な運命も何もない。この出会いは全くの偶然。
皆も気をつけてほしい。
世の中には三人、似た人間がいるという。そんな感じで、外見はどうあれ異世界にはどうにも気が合ってしまう人間というのが存在するらしいんだ。
わかっている中で、最低数は三十。
けれどもそれは本当にわかっているものだけだから、取るに足らない行動、思い出せない動作、無意識のうちにしてしまったような仕種がもっとあるだろうというのが定説。
見知らぬ異世界の誰かさんと、恐ろしいほどに行動とタイミングがシンクロしてしまったら、それは交流が始まるサイン。
僕の場合、始まりは屁だった。
ちょっと意味がわからないと思うけれど…少なくともそれが始まりだった。
皆。本当に、心底、気をつけてほしい。