前へ次へ
8/13

合流と六角戦


 俺の名は岩原いわはら新之助しんのすけ


 俺は関ケ原で、徳川軍を出迎えていた。


 なぜ俺が?


 という疑問はもうない。


 それぐらいには慣れた。


 ただ、徳川殿はどうだろう?


 出迎えが俺で怒らないかな?


「お主が岩原殿か。

 拙者せっしゃ、徳川次郎三郎でござる」


 怒らないようだ。


「上総介殿からスマホで連絡を頂いておるのでな」


 そうでしたか。


 俺……失礼。


 私は岩原新之助です。


 この度は上洛へのご助力、ありがとうございます。


 徳川家の武勇が加われば、上洛は成功したも同然。


 心強く思います。


「なんのなんの。

 上総介殿の上洛とあらば、駆けつけぬわけにはまいらぬ。

 軍の末端に加われること、ほまれといたす」


 ははは。


 はい、これで形式的な挨拶は終了。


 それで、どのあたりに布陣したいですか?


「できるだけ安全な場所で」


 手柄は?


「参加させてもらえるだけでありがたいのだ。

 でしゃばったりはせぬ」


 了解しました。


 しかし……


 徳川軍は総勢で三十人ぐらいだよな?


 形だけの参加とはいえ、少なくない?


 武装もしてないし。


「なにをおっしゃる。

 当家の精鋭ベストメンバーでござる」


 徳川殿の説明によれば、なんでも徳川家は少し前まで一向宗や今川家と争っていたそうだ。


 サッカーで。


 ……


 サッカーで?


「《一向宗FC》はなかなかの相手でござった。

 まあ我が《三河みかわSC》が勝ちましたが」


 前半で6得点しても手を抜かず、結果12対0の大虐殺だったらしい。


「試合前、《三河みかわSC》のチーム改革を行いましてな。

 それが功をそうしました」


《一向宗FC》に移籍した選手に、戻ってくるようにとの交渉も上手くいったとのこと。


「まあ、何人かはそのまま《一向宗FC》に残ったので、ボコボコにしてやりましたがな。

 いまさら戻りたいと言ってももう遅い……というやつでござる」


 はぁ。


「《FC駿河するが遠江とおとうみ》は強かったでござる。

 センターバックにいる朝比奈選手がチームを統率してダイレクトパスで繋ぐサッカーをしてくるのでござるが、ミッドフィルダーに入った当主の彦五郎殿が攻守においてかき回してくるのでござる。

 ああ、かき回すと言っても足をひっぱるという意味ではござらんぞ。

 あれは……ファンタジスタというものでござるな。

 ときおり、こちらの想像を超える動きをしては得点に絡んでござった。

 ファンタジスタはパスサッカーとの相性は悪いはずなのでござるが、あれは見事でござったなぁ」


 勝ったと言わないってことは、負けたのかな?


「2対3で負けたでござる。

 ですが、決して彦五郎殿に負けたわけではござらん。

 ファンタジスタすら計算に入れる朝比奈選手が凄いということでござる!

 あと、ゴールキーパーの関口選手もナイスセーブの連発でござった!

 フォワードの岡部選手も、得点チャンスを逃さない動きは見事!

 見習いたい!」


 ……けっこう今川家を持ち上げるんだな?


 ちょっと意外だ。


「拙者、以前は《FC駿河遠江》の育成枠におりましたので。

 当時、岡部選手には、いろいろとお世話になったでござる。

 孕石はらみいし選手にも……別の意味でいろいろとお世話になったでござる。

 絶対に忘れぬでござるよ。

 ははは」


 いろいろあるんだなぁ。


「なんにせよ。

 試合が終わればノーサイドでござるよ。

 孕石への恨みは忘れぬが」


 さわやかなのか、陰湿いんしつなのかどっちかにしてほしい。


「人間、二面性はあるものでござるよ。

 それでは、上総介殿と覚慶かくけい殿にご挨拶をさせてくだされ」


 そうでした。


 こちらです。


 先に上総介殿のところに案内し、続いて覚慶のところに案内する。


 あ、覚慶がお金の話をしたら切り上げたほうがいいですよ。


 お金を貸してくれって話か、投資しないかって話だから。


 聞く価値ないです。




 徳川軍と合流できたので、上洛軍出発!


 なのだが、覚慶の一団は後方待機というか関ケ原から動かなかった。


 てっきり覚慶の一団も一緒に行動するのかと思っていたのだが……


 なんでも、未来の将軍を狙うやからがいるらしく、それを用心して安全な場所にいるそうだ。


 いいのか、それで?


 まあ、上総介殿は邪魔者がいなくて喜んだけど……


「織田家につゆ払いを命ず」


 そんな大上段の命令が届いたので、上総介殿は覚慶のところに殴りに行った。


 上総介殿、ご注意を。


 覚慶は『あ●たのジョー』を読んでます!


 ハ●マオの技、使ってきますよ!


「こっちは『は●めの一歩』を読んでおる!

 叩きのめしてくれる!」


 えーっと、頑張れー!


 結果は語らない。


 あ、応援コールは「まっ●のうち」ではなく「ひっつまぶし」だった。




 上洛に動いた織田軍は南近江で浅井家と合流。


 浅井家の当主、新九郎殿との挨拶は上総介殿がやった。


 義理の兄弟だからね。


「お市は元気か?」


「元気ですが……尾張や美濃の配達代行業者が北近江まで配達せぬこと、ずっと怒っております」


「尾張や美濃からだとな。

 一応、毎月なにかしらワシから送っておるが……」


「あれには助けられております。

 ただ、此度の上洛でこのあたりが織田家のものとなれば、配達代行業者に期待しても」


「ワシがどうこうできるわけではないが、気を配ろう」


「よろしくお願いします」




 六角家とぶつかったが、戦わずして六角家は降伏してきた。


「もう少し、常識的な戦力でお願いしたい」


 俺に文句を言われても困る。


 六角軍の前でデモンストレーションをしたのは上総介殿だ。


 派手に爆破していた。


 地形が少し変わったかな?


 なんにせよ、六角家が抵抗せずに降ったのはありがたい。


 その感謝を込めて、織田家と六角家で軽いレクリエーションが行われた。


 なにかを一緒にすることで、連帯感を高める効果に期待してだ。


 今後は六角家も仲間だ。


 ……


 なぜ、レクリエーションの内容がカバディなんだ?


 俺、カバディのルールをよく知らないんだけど?


 ほら、六角家の皆さんも困惑してらっしゃる。


 とりあえず、カバディを題材にした漫画を読む時間を与えましょう。


 あとは実践で。








徳川家康  将来の天下人。江戸幕府を作った凄い人。

      幼少期、今川家で人質として暮らす。(将来の幹部候補として育成されてた)

      田楽はざまの戦いで今川義元が破れると、しばらくして三河で独立した。



孕石選手  孕石主水。家康が今川の人質時代に虐めたとされる人。あとで復讐される。

      でも、エピソードを調べると悪いのは家康のほうで、主水は被害者っぽい。



浅井新九郎 浅井長政。北近江(東側)の支配者。信長の妹のお市が奥さん。





配達代行業者       ウー●ーイーツとか出●館のこと。

ルビにしようと思ったけど、●がルビ化しなかった。


カバディを題材にした漫画 『灼●カバディ』のこと。


前へ次へ目次