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STAGE:2-3

「マイスターがおっしゃる、よい考えとは?」

「アレを使えば大丈夫のはず」

「"アレ"?」



 そうして自分の居住空間を掘り当ててはリラックスするかの如く座して、器用に前足を使ってはその両前足の間で丸いモノを転がしている存在の方を指さす。



「アレを放り込んで、斥候的な役目をやってもらうという訳だ」

「斥候的な・・・」

「どうせ生命体じゃないし、ちょっとやそっとの事がおころうとも丈夫だろうし」

「たしかに、私たちよりかは基本的な耐久性という意味では上かもしれません。種族的にもそういった物理的な耐性は高いとは思います」

「だろ?なら、採用するしかない」



 そうと決まれば、その両足の間で転がされていた物を掴み取っては、骨っ子から「返して!返して!!」的な視線?感情?みたいなのを全てスルーし、



「というわけで・・・行け!回転する月の石たちローリングムーンストーンズ!!(のうちの一つ)」

「えっ!そちら!?」



 クイック投球モーションの如くに小さく振りかぶっては、JオーJオーの物語に出てくる背後霊を呼び出すような掛け声と共に、ダンジョンの入り口に向かって投げつける!!


 もちろん、名前がそれっぽいなという事を意識しての行動である。


 そして、その球の後を追うように尻尾を全快で振り回して追いかける骨っ子。


 そのまま流れる様に飛び込んでいっては、フィルターの壁に突き刺さった状態で止まる骨っ子。

 それは見事に前足部分までしっかりと完璧に突き刺さっていた。という表現が正しいぐらいに。



 一方の回転する月の石たちローリングムーンストーンズといえば、普通にフィルターをそのまま素通りしていっては消えていったが、その何というか、その対称的に骨っ子の方のインパクトが大きすぎる。



 なにせ、それは見事に身体の後ろ半分だけが、フィルターの壁から生えている形で止まっていたのだから。



「・・・」

「・・・」

「何がしたいんだ、アレ」

「さ、さぁ・・・」




 ただただ、こちらの視線を一身に受けている存在。

 そんな存在はといえば、しばらく止まっていたかと思えば、急に後ろ脚をジタバタさせてもがきはじめ・・・


 お、フィルターに後ろ足をかけ・・・ようにもそのままフィルター通過して今度は後足が埋まり、残った表面に出ている身体部分を上下前後左右にと振るわせ始めてるが、一向に進展せず・・・ついには完全停止していた。



「動かなくなったな・・・」

「動かなくなりましたね・・・」



 パッと見た目で言えば、蒼い炎みたいなのを纏った、でっかいドアノブ?的な恰好でフィルターの壁に突き刺さっているオブジェ的な何かが完成している状態だった。



「どうしようか、アレ」

「どうしましょうか」



 二人して、いま起きた事の状況を、ただただ眺め見ているだけになっては、しばらく何言う事もなく時が過ぎ去っていた。

 そんな一時停止している録画番組みたいな状況を、再生させるかのようにディアーナから声がかかった。



「ところでマイスター。一つ質問が」

「質問?完璧かつパーフェクトな方法に質問とは」

「はい。仮に成功したとして、その"回転する月の石たちローリングムーンストーンズ"からの報告を、どうやって受けるのでしょうか?と」

「・・・」

「・・・」



 そう言われてみれば、どうやって報告うければいいんだ?


 そもそも、意思疎通ってできたっけ?できたよな?できるよね?


 オブジェとしての行動指示を与えたら、ちゃんと行ってたし、指示の理解力はあるはずだ。


 だが・・・あれ?回転する月の石たちローリングムーンストーンズって、インプット的な事はできてもアウトプット的な方法が・・・ない?


 見た目が防衛専門な自衛に特化した集団で、実験的に作られてた偵察端末みたいな恰好の大きさだったから思いついてやってはみたが、得た情報を受け取る方法がまったくもって思い浮かばない・・・



「はぁ・・・わかりました。やはりここは私が赴くべきでしょう。マイスターはここでお待ちを」

「その、それはだな、やっぱり危ないと思うわけで、現に突き刺さって微動だにせずドアノブ化してるオブジェが通過もせずに、あんな状態でとどまる事はやっぱりおかし・・・ん?あれ?」



 そう言いながら視線を半丸のドアノブ化した存在へと視線を向けると、そのドアノブがフィルターの奥へと徐々に埋もれてるような・・・



「埋もれていってる?」

「そう、みたいですね」



 そんな二人の視線がそこに釘付けにされているまま、ドアノブがそのままの姿でダンジョン内部へと引きずり込まれる様に消えていった。



「・・・」

「・・・」



 ど、どうなる?!ドアノブ!!



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