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第34話「特務班始動-3」

 翌朝、俺、トキさん、ソラさんの三人は朝食を討伐班の女子寮で食べ終えると特務班の挨拶回りと言う事でまずは治安維持機構本部に置かれている開発班の出張所にやって来ていた。

 なお、開発班は機材を置くスペースや試用を行うためのスペースを確保する関係で本拠地は治安維持機構の本部が有るアメノヤマではなく、ジャポテラス神療院が置かれている北西部に在る。

 ちなみに医療班も本拠地は此処では無く神療院に併設される形だそうだ。


「で、ここが開発班の出張所か」

「ちょっとした物なら十分此処で作れそうではありますね」

「何と言うか羨ましいですねー」

 開発班の出張所は独立した建物になっており、建築関係でも試している事が有るのか基本的にはトライ・ジャポテラス様式ではあるが色々と混ざっている感じだった。


「とりあえず中に……」

 俺は開発班への挨拶をするために建物のドアに近づくとノックをするために片手を上げる。

 そして、ドアを叩こうとした瞬間……


「「「!?」」」

 建物の中から周囲に向けて突然の爆音が響き渡り、俺たちは一度顔を見合わせると状況を把握するためにもそれぞれの装備を手に取った状態で扉を開けて中に突入する。


「バッカもおおおぉぉぉん!!」

「はっはっはー、別に爆発程度で済ンだンだからいいンじゃねえか?」

「これは……どういう事だ?」

「さあ?」

「アタシが聞きたいですよ」

 そして中で見たのは……ずんぐりとしたツナギを着たオッサンが正座をさせられている髪の毛を赤青黄緑の四色に染め分けて色ごとに束ねている青年を叱りつけている光景だった。

 二人の頬に微かではあるが煤が付いている点や、周りに居る他の開発班と思しき人たちが遠巻きにまたかと言った空気を纏いながら眺めている辺りからして先程の爆発音にはこの二人が関わっており、しかもよくある事態と言う事が分かる。

 ただまあ、あくまでも俺の推測でしかないからとりあえず情報を集めて事態を正しく認識しておくか。

 と言うわけで手近なところに居た開発班の人間を捕まえた俺はこの状況についての説明を求めておく。


「あ、ああ。アンタが例の特務班なのか。えーと、この状況についてだよな。まあ、簡単に言ってしまえばいつもの事だから気にしないで欲しい所ではあるけど、それでも説明しておくとだ」

「いつもの事?」

 そいつは何故か微妙に頬を赤らめて時折どもりつつもこの状況について説明してくれる。


「ああ、あっちのツナギを着ているずんぐりとした方が我らが開発班の総班長鵜飼(ウカイ)さんで、もう片方が開発班の恥さらし……ああいや、開発班の奇人こと茉波(マツナミ)だ」

「ふうん。それでそれで?」

「え、えーとそれでな……」

「はいはい。アキラお姉様。後はアタシが聞いておきますからアキラお姉様は開発班の総班長さんとやらに挨拶をしておいてください」

「あ……」

 と、具体的に何が有ったのかを聞く前にソラさんが割り込んできて俺を二人の元に向かわせようとしたため、俺はやむを得ず今も怒っている鵜飼開発班総班長とそれを何でもないと言った様子で聞き流している茉波さんとやらの元に向かう事になる。


「おいおい、鵜飼のオッサン。なンか用件が有る奴が来たみたいなンだが?」

「ん?ああ、特務班の御姫様御一行か。悪いが今はちょっと立て込んでいるんでな。また後にしてくれ」

「後にしてくれと言われてもな……そもそも何が原因でさっきの爆発は起きたんだ?」

 俺がさっきの爆発について指摘すると鵜飼開発班総班長は僅かに舌打ちをしながらも先程の爆発についての説明をしてくれる。


「簡単に言えばこの馬鹿が実験でミスして爆発事故を起こしたんだよ。幸いにしてウチはウカノミタマ様の加護が有るから頬に煤が付いて機材が幾つかぶっ壊れる程度で済んだがな」

「へー、ちなみにどういう実験だったんだ?」

 で、俺がその言葉を発した瞬間に鵜飼開発班総班長は言っちまったなと言う表情をして頭を抱え、茉波さんはよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに顔を輝かせる。

 ああうん。これはやってしまったかもしれない。

 そして茉波さんは立ち上がると設計図のような物を取り出して語りだす。


「ふふん。聞いて驚くがいい。なンと神の種類は問わないからとにかく神力を込めることによってその量に応じて駆動する動力装置だ!これが実用化されれば馬車なンて必要なくなるぞ!それだけじゃない……」

『ほう。これは面白いな……』

 で、説明が始まったのだが……イースは子細に至るまで理解出来るようだが、俺にはさっぱり理解できん。

 とりあえずどんな神の力でも同じように変換して色々な事に使えるって事だけは何とか分かったがな。

 そして説明が佳境に至ろうとしたところで……


「いい加減黙ってろ!」

「がふっ!?」

 鵜飼開発班総班長の鉄拳が茉波さんの頭に炸裂して強制終了させられた。

 まあ、何を言っているのかはまるで理解できなかったし別にいいか。


「はぁ……さて、特務班への協力についてだったな。それについてはある程度なら便宜を図ってやる」

「ある程度……か。まあ、開発班にも開発班の都合が有るわけだし、よほどの状況でなければこちらとしてはそれで構わないです」

「物分かりが良くて助かるな。ああそうだ、何なら特務班からの依頼を優先的にやる人員についてはそっちで選んでくれても構わないぞ。開発班の仕事ってのは信用と信頼が大切だし、出張所にも一通りの面子は揃っているからな」

「分かりました。なら開発班の中をちょっと見回らせてもらいますね」

「おう。俺たちの仕事の邪魔をしなければ好きにしていいぞ」

『ほう。それは良い事を聞いた』

 で、今日俺たちが開発班にやって来た本題については話が始まると同時に難なく終わり、俺とイースは他の開発班から話を聞いていたトキさんソラさんの二人と合流すると開発班の中を見回り始めることにした。

 ところでイース?なんか妙にあくどい笑みを浮かべていないか?お前。

挨拶回りは『迷宮』内での重要な生命線の一つは装備品と言う事で開発班からです。


08/01誤字訂正

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