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第22話「討伐班候補生-9」

「さーて、それじゃあまずは改めて自己紹介をしておきましょうか!アキラお姉様にトキ姉ちゃん!」

「う、うん」

「よろしくお願いしますね」

 さて、無事にと言っていいのかは分からないが、グループが決まったところで俺、田鹿さん、その妹さんの三人と、見えてはいないが俺の肩に居るイースを含めた三人と一柱は教室の片隅に集まって自己紹介を始めていた。

 自己紹介と言ってもより正確に言えば、自分が何が出来て何が苦手なのかと言うのを予め仲間に伝えておき、『迷宮』内での活動の円滑化をするためのミーティングと言った方が正確なのかもしれないが。

 ちなみに穂乃さんは恨めし気にこちら……正確には妹さんを睨んでいる。正直怖い。


「まずはアタシこと田鹿ソラ!得意なのは特製ハンマーとタヂカラオ様に頂いた怪力を組み合わせた攻撃で、アタッカー役になります。他にもサーチャーとしての活動も出来ます!ソラって呼んでくださいね。アキラお姉様!」

「あ、ああ、うん。よろしくソラさん」

 妹さん改めソラさんが俺の手を握り、顔を近づけながらそう言ってきたので俺は多少曖昧ながらも了承の返事を返しておく。

 が、俺の言葉に対して微妙に満足していないのかソラさんは不満げな顔をしている。

 と言っても同年代の女性を呼び捨てにするのはまだちょっと難易度が高いかな……と言うか何でソラさんは俺の事をお姉様って呼ぶのだろうか?明らかに地雷で聞くと拙い事になりそうな気がするから聞かないけれども。


「むー……“さん”は要らないのに……まあ、まだ親密度が足りないからしょうがないか」

「?」

「……」

『何か妙な単語が出たな』

「こっちの話です。次トキ姉ちゃんよろしくー」

「分かったわ」

 ソラさんが軽く呟きながら俺から離れ、ソラさんに言われて今度は田鹿さん……ああいや、この場合トキさんと言った方がいいか。トキさんが自己紹介を始める。


「では改めて、私は田鹿トキと言います。専門は巨大盾とタヂカラオ様の怪力を合せた防御です。それとアシテコウ様の力によって軽い怪我ならその場での治療も可能です。なので、ディフェンダーとヒーラーを兼ね備えている事になりますね」

『ふむ』

「なるほど。これからよろしくトキさん」

「ええ、よろしくお願いします」

 トキさんの自己紹介が終わったところで、俺はトキさんと握手を交わす。

 さて、最後は俺だな。


「俺の名前はアキラ・ホワイトアイスで、右目で睨んだものを氷に変えられる。後はスリングによる遠距離攻撃だな。役割で言えば……ジャマーとシューターって事で良いのかな?」

「良いと思いますよー」

「ありがとう。二人ともこれからよろしく」

 俺はここ一週間で習った事を思い出しつつ自分の役割を端的に表す言葉を言う。

 実を言えば、『迷宮』内で各人が負う役割についてはその内容からある程度まとめられており、基本的には七種類に分類される。

 その七種類と言うのは、


・モンスターに接近して直接攻撃を行うアタッカー

・モンスターに対して遠距離から攻撃を行うシューター

・モンスターの攻撃から仲間を守るディフェンダー

・傷ついた仲間を癒すヒーラー

・モンスターや罠を探し出すサーチャー

・モンスターの活動を何かしらの方法で阻害するジャマー

・味方の活動を何かしらの方法で支援、補助するエンハンサー


 である。

 尤も実際に『迷宮』に潜る討伐班は少数精鋭を是としているため、一人で最低二役、場合によっては三役以上こなすのが当然であり、一つの役割しか担えない人間はよほどその一つの錬度が高くないとまず討伐班での居場所は無いだろう。

 なお、『迷宮』に挑むにあたっては最低でもディフェンダー、サーチャーの二役にアタッカーかシューターのどちらかは必須と言われている。

 で、この分類に従うと俺の場合はイースの魔眼が一応ジャマー判定で(効果が強過ぎる気もするが)、スリングによる攻撃がシューター扱いとなる。


「ところでアキラお姉様?」

「何だ?」

「アキラお姉様の肩に乗っている八本足の蜥蜴についての説明は無しですか?」

「『!?』」

 ソラさんの言葉に俺もイースも驚きを露わにする。

 だがそれもしょうがないだろう。

 現在のイースは非実体化状態であり、普通の人間の目には決して見えていないはずなのに、ソラさんにはそれが見えているのだから。

 俺は本当に見えているのかの確認を取る意味でトキさんの方を向く。するとトキさんは俺の視線でその意を介したのか口を開く。


「私もどこの神様の力なのかは知りませんが、どうにも妹には本当に見えているようです。あ、私には見えていませんから」

「なるほど」

『うーむ、非実体化状態の神を捉える目を与えられる存在などそれほど居なかった気がするのだがな……』

「あ、声は聞こえていないから何を言っているのかは分からないです。ごめんねー」

「ふむ。姿だけなのか」

 どうやらイースの姿がソラさんに見えているのは間違いないらしい。

 でなければ今のタイミングでイースが喋っているとは言えないだろうし。


「まあ、そう言う事なら紹介だけはしておこうかな。コイツはイースと言って、俺が契約している神なんだよ。この前見せた魔眼はコイツの力の一つな」

「なるほどなるほど。神の分体が憑いているだなんてアキラお姉様は本当に凄いんですねぇ」

「ありがとう(分体?流石に丸ごと一柱取り込んでいるとは思われていないのか)」

『そのようだな。無用な騒ぎを起こす必要はないだろうし、そう言う事にしておいた方がいいだろう』

「(だな)」

 どうやら俺がイースの頭を指先で撫でながら言った説明で、ソラさんは一部勘違いしたらしい。

 が、わざわざ訂正する必要も無いので訂正はしておかないでおく。神を丸々一柱取り込んでいるとか言って騒ぎになっても面倒だしな。


「まあ、いずれにしてもだ。イース共々改めて二人ともよろしく」

「はい!よろしくお願いしますねアキラお姉様!」

「よろしくね。アキラさん」

 そして俺は改めて二人と握手を交わした。

グループ結成ですよー

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