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第12話「タカマガハラ-3」

始めに、天照大神様並びにその信者とファンの皆様に対してお詫びを申し上げさせていただきます。

いやうん。どうしてこうなった。

と言うわけで各自覚悟を決めてからどうぞ。

 スサノオ様が女性を連れていってから俺とイースの主観でおおよそ一時間後。


「待たせて悪かったな」

「いえ、何の事やら」

『我らは何も知りませぬ』

「……。そう言えばそうだったな。うん。とっとと話を進めるとしよう」

「話を伺いに来たぞ客人」

 スサノオ様はそう言うと先程とは別の場所に座り、スサノオ様が席に着いたところで戸の先から男女問わず美人が多いとされている神の中でもまたワンランクは間違いなく上の美貌を持った女性が現れ、先程までスサノオ様が座っていた場所に座る。


「まずは自己紹介をしておこうか。私の名前はアマテラス。ここジャポテラスに所属する神々の長であり、汝ら人間たちを守護するものである。今日は遠路はるばるよく来てくれた」

「い、いえ!こちらこそお招きいただき誠にありがとうございます!」

『わ、我のような末席の神如きの為にお時間を割いていただきありがとうございます』

 女性は長く美しい黒髪をまとめ上げ、衣服に詳しくない俺でも最上位の物だと理解させられるシンプルでありながらも清潔感と高級感の漂う絹の衣服を身に纏い、万人が至上と認めるように整った目鼻立ちの顔で俺に向けて聞いただけで脳の奥深くまで蕩けそうな声を発する。

 ああうん。やっぱりさっきの何かは別人だったんだな。どう考えたってこれとイコールでは繋がらない。

 だって、今目の前に居るアマテラス様に対しては信仰心の有る無しとか関係なしに頭を垂らさずにいられないもの。


「そう畏まるでない。私に話が有るのだろう。申して見よ」

「『は、はい!』」

 俺とイースは緊張極まる中で先程スサノオ様の話した内容をアマテラス様に話していく。

 そして幻想は此処までだった。


「と言うわけ……」

「ZZZ」

「で……す?」

「……(スサノオ様は無言で拳を握りしめている)」

「えーと……」

「起きろやこの馬鹿姉貴が!」

「はっ!?ち、違うのよスサノオちゃん!これは決して色んなMMOを渡ってボスマラソンを200時間ぐらい続けていたら眠くなったとかそう言うのじゃないのよ!?」

「台無しだボケエェ!」

 スサノオ様が立ち上がり、アマテラスを正座させると俺には何を言っているのか聞き取れないスピードで説教を始める。

 話している途中で何となく気づいていましたとも。ええ。この人が目を開けたまま微動だにせず寝てる事は。ええ、気づいていましたとも……気づきたくなかったけど……。

 それにしても流石神だなー。一部意味の分からない言葉も混ざっていたけど200時間も不眠不休で動けるのは流石としか言えないなー。スサノオ様が怒っている事からして仕事じゃなくて遊びっぽいけど……。

 とりあえず完璧な美人なんて居ないのはよく理解できた。


「で、結局のところあの女なら他人の信仰の縁を一方的に切る事も可能か?」

「出来る出来ないで言えば可能かな。でも、さっき言った200時間の間はずっと一緒に居たんだけど?」

「そんなの何の証拠にもならねえのは、姉貴もよく知っている事だろうが」

「だよねー。現に今も私の分体の一つが彼女と一緒にとあるMMOでボス(パラサゼブブ)相手にマラソンしてるし。どうする?直接呼んで問いただしてもいいけど?」

「あー、呼べるなら一応呼んでおいてくれ。俺は直接会った事が無いから、一度会って気配を察せるようになっておきたい」

「『?』」

 俺もイースもスサノオ様とアマテラスの言葉に首をかしげる。

 さっきから意味の分からない単語が幾つも出てくるからどうにも二人の話の内容が理解できない。

 と言うか分体ってどういう意味だ?


「ん。ああ、そっちの蜥蜴ちゃんレベルには無理な話なんだが、俺や姉貴クラスの神なら自分の身体を分けて別々に行動させる真似も出来るんだよ。当然分けたら分けただけ一つの体あたりの力は落ちるけどな」

「『へーー』」

 スサノオ様の説明に俺とイースは素直に感嘆の声を上げるしかない。

 自分が何人も居て、その全てが同一の意識の元に動いているって言うのは普通の人間である俺には中々に理解しがたい感覚だが、それが出来れば複数の作業を同時にこなせるようになるのだからその利便性は言わずもがなだろう。

 で、俺とイースが感心しているところにアマテラスが口を開き、


「そうそう。現に私だって本体、ここに居る私、あの子と一緒に居る私以外にも、お仕事用の私や細かい作業をする私とか行列に並んでる私とか、色々な私が居るもの」

「うん?本体と仕事が別?」

 とりあえず、その言葉の中に聞き捨てならない内容が有ったので思わず聞き返してしまう。

 いやまあ、本体は末端に指示を出すのを専門と考えれば別におかしくは無いのかもしれないけど、何か今アマテラスが言ったお仕事の内容と俺が想像するお仕事の内容に差がある気が……。


「えーと、お仕事ってのはね……」

 と、ここでアマテラスが俺よりもスペースが無いはずの胸元をまさぐり、彩りが鮮やかな表紙で厚みがあまりない本を取り出そうとする……


「それをこの世界に持ち出すんじゃねえ!?」

「オウフ!?」

 が、その前にスサノオ様が全力でアマテラスの側頭部を蹴飛ばして吹き飛ばす。

 ただ、アマテラスの手から空中に向かって本が投げられたため、俺は思わずイースと契約して強化された動体視力で本の表紙を観察してしまう。

 本の表紙には……スサノオ様をモチーフにしたっぽい女性と、美しい顔立ちの男性が描かれていた。


「スサノオ様?あっ!えっ!?」

「フシュー……」

 と、ここでスサノオ様が空中にあった本を手に取ると一瞬で消し炭にすると、次の瞬間には俺の頭を鷲掴みにしていた。

 手からは明らかな怒気が伝わってくる。


「アキラ、イース……世の中には知るべきでない事もある。分かるな」

「は、はい……」

『か、かしこまりました……』

 そして有無を言わせぬ重圧を放つ言葉に、俺もイースも全身を震わせながら肯定の意思を全力で示す。

 と言うかスサノオ様怖い!怖すぎる!例の軍服女とはまた違う方向性で怖すぎる!!これならいっそ意識を失えた方が遥かにマシだから!!


「ようし。分かったら少しの間待ってろ。ちょっとシメてくる」

 スサノオ様の手が俺の頭から離れ、憤怒の形相でアマテラスに向かって行く。

 こうなれば俺としては自分の身を守るのが第一だ。そう言うわけで……


「待って!スサノオちゃん待って!世の中には……」

『アキラ……』

「……。うん」

「問答無用!」

「『俺たちは何も知らない、聞いていない、見ていない』」

 俺もイースも黙って目を閉じ、耳を両手で塞いだ。

 世の中には知るべきでない事も有る。スサノオ様もそう言ったじゃないか。ハハハハハ……。


 ある意味俺の信仰が切れたのは良かったことなのかもしれない。

……。これでも自重した方なんです許してください。

脳内初期プロットはもっと酷かったんです。


日本神話上、天照大神様は男装して素戔嗚尊様を迎え撃ったほど勇ましくお強いと同時に太陽神として恵みを分け与えてくださる素晴らしい神様なんです。

断じて引き籠り神(笑)なんて嘲笑っていい御方ではないのです。

我々は神様方の寛大な御心のおかげでこういうネタが出来るのです。

それを決して忘れないでください。


あっ、本の内容は男女逆転のクシナダ(♂)×スサノオ(♀)のNL本です。性別以外は公式ですね。


……。


どうか命だけはお助けを……>orz

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