Q:守護獣を状態異常にさせる為に、どうやって空から引きずり落とす?
「八雲姉妹、三女のマーちゃんです!得意な事は殴って殴って殴り殺すことでーす!マーちゃんは姉妹の中で、一番力持ちなのです!」
見た目八雲で中身が違うその子は、自身をそう名乗った。やはり八雲姉妹……次女が確か、剣術系だったな。で、三女は聞いた感じフィジカル系統………ふむ。
「成程、ちょっと握力調べても?」
「いいよー!はい!」
「どれどれぁああああああアアアアアアアアアアア!!!!?」
「にゃーー!!!?」
「何をしているんだいご主人様!?って言ってるよ。本当に何をしてるのマスター?」
フフ、フハハ……そりゃあ勿論、八雲姉妹の力を知るために決まってるじゃないか…!お陰で左手が文字通りペチャンコになっちゃったけどね……!すこちゃん様の回復で徐々に元の形に戻っていってるぜぇ……!あったけぇなあ…!
「にゃう!にゃうう!!」
「次から変な真似するんじゃねえ、殴るぞ!って言ってるぜ。大将、これは俺も同意だわ」
「返す言葉も無いね!!」
はい、反省タイム終了。茶番はここまで!!自分でばら撒いておいてなんだけどね!!
「ほんじゃ、シロカネ姐さん、火炎、冬華!やっておしまーい!!」
「おうよ!」
「っしゃあ!行くぜ行くぜ行くぜぇーーーー!!!」
「了解だよ、マスター!」
よし、殺る気マンマンだね。大変よろしい!
で、今プレイヤーの皆さんは何をしているのかってーと――
「おら、食らえ毒!!」
「大人しく麻痺れオラァ!!」
「ヒャッハー!!汚物は綺麗に消毒じゃー!!!」
「ぬるぽ」
「ガッ!!」
はい、御覧のように、皆でありったけの状態異常付与効果を持つスキルを使って、頑張ってモビーディックを薬づ………じゃなかった、状態異常にしよう!という感じで、皆で頑張って攻撃しています。
状態異常って、かなり厄介なんだよね。毒食らうとHP削られる。麻痺ったら動きを制限させられる。火傷だとHP減少と同時に、属性攻撃耐性が著しく低くなったりするし……状態異常、中々侮れない。
てかさっきから、古のネット用語喋ってばっかの人いない?さっきも聞いたぞ?そのフレーズ。
『ブオオオオオオオ!!』
と、ここでモビーディックの動きに変化が訪れた。
『オオオオオオオオオ!!』
「あっズリィ!?」
さっきまでは攻撃しながら浮遊していたモビーディックだったのだが、ここに来て一気にさらに上空へと昇って行ったのだ!
成程、考えたな!そのまま上空で居られたら、こっちの攻撃は勢いとかの問題で届かない可能性がある!逆にあっちからの攻撃は、しっかり届く!守護獣の癖していやらしい事しやがる!!
「おい、どうすんだよあれ!?」
「お前、ちょっと飛んであれどうにかしてきてくれ」
「無茶いうなよ!?」
「クソォ、どうしろってんだ……!!」
プレイヤーの皆さんも、突然のモビーディックの行動に頭を抱え始めた。いや、マジで遠いなぁ…どーすんの?あれ。
「ちっ!俺の糸も、あそこまで行かれたら届かねぇ…!」
「こういう時に、飛行系の妖怪の存在が欲しくなってくるな…」
パッと周りを見渡しても……やはりというか、飛行タイプのプレイヤーとかはいなかった。鳥人系……一人も見当たらん。そんな確率ある?
「大将!俺なら飛べるぜ!火車の力を見せてやるぜ!」
「……却下で」
「何故だ!?」
「単身であの巨体に勝てる訳ないだろ?頭を使いなさいよ」
「うぐっ…!」
そうなんだよな……しかも火車は文字通り火の車だ。水属性のモビーディックとは致命的に相性が悪い。歯磨きした後のミカン並みに。
「あそこまでとどく、おっきなからだがほしいー…」
「にゃうにゃう」
「世海君の成長した姿が楽しみだね!だそうっす!世海さん、海坊主っすもんね!可能性は大っすよ!」
『Hmm...…困りましたね。』
かと言って、ここでただ黙って見ている訳にもいかないのが現実なんだよねぇ。さて、どう攻めるべき…?
「王様ー!私良い案を思いつきましたー!」
どうしようか悩んでいたら、マーちゃんが元気よく挙手をした。
「ん?何、マーちゃん?」
「えーとですねー…」
マーちゃんが提案してきた案は……何というか…かなり脳筋思考だった。
が、現状打つ手無しなこの状況の中では、その手が最善策である…はず!
「……うーん、他に手段も思いつかないし…それで行くか」
『とても面白いOperationだ!気に入ったよ!』
「おもしろそー!」
と、他のメンツからも軒並み高評価。やはり脳筋が全てを解決してしまうのか……!?
「よし、そうと決まれば……周りのプレイヤーのみなさーん、集合~」
「ん?」
「なんだなんだ?」
「どうした盟友!我の手が必要か!」
モビーディックが上空に上っている今、作戦会議をするなら今しかないので、すぐさま他のプレイヤーを招集。一気に集まって来たので、俺はマーちゃんの策について説明をする。
「成程、その手があったか!」
「やはり小細工なぞ不要…!全ては筋肉が解決するのか!!」
「マジかよプロテイン買ってジムに登録しなきゃ」
「パワーisジャスティス」
「フハハハハ!流石は我が盟友!その案、乗った!!」
「お義父さんの作戦、いいですねぇ~!」
「流石はお義父さん!略してさすおと!!」
全員乗り気だ。流石は【AO】プレイヤー、皆変態だ。あと、お義父さんって言った奴出てこい。うちの子は全員やらせはせんぞ!!!
よし!茶番終わり!そんじゃ早速、行動開始と行きましょか!
「ではでは皆さん、土魔法で巨大な”玉”をお願いしまーす!シロカネ姐さん、頼んだ」
「あぁ、任せな舎弟!」
「応よ!」
「元気よく行ってみよー!!」
「やるぜやるぜ!超やるぜぇー!」
「お前も手を貸せ、アルマ!」
「お手伝いお願いねぇ、六ロク君~」
先ず初めに、土魔法を扱う人たちに頼んで、巨大な岩を生成してもらう。具体的には、ドドンと兎に角デカく。え?全然具体的じゃない?知るか!ノリで良いんだよこういうのは!
という、かーなり大雑把な指示をプレイヤー+召喚獣&使役モンスターに頼んで作ってもらった結果、公園にある小山をもう一、二回りほど大きくなったサイズの岩玉が誕生した。想像以上のもんが出来上がっちゃったなぁ。
まぁ、予定通りだな!よし次!次の工程はこれ!
「シロカネ姐さん、出番です!」
「おぉよ!」
「あと、毒使ったり罠仕掛けたりする、工作班の皆さんもお願いしまーす!」
「あいよぉ!」
「えぇ!?この岩全部に毒とか塗りたくりまくっていいのか!?」
「遠慮するな、ドンドン塗れ…!!」
という指示を出して、シロカネ姐さんたちが、岩に状態異常を付与する魔法とか妖術とか薬品とか、その他諸々をこれでもかとぶっかけていった。最初はただ茶色かった岩玉も、なんというか……形容しがたい、物体に対して極めて冒涜的なものを感じる色合いへと変化していった。
物体に対して極めて冒涜的なものを感じるってなんだ??
「まぁいいや。次、またもシロカネ姐さん!プラス、鍛冶師の皆さん!」
「舎弟の為だ、頑張るのが上に立つものの仕事さね!」
「補強なら任せろ!」
「俺達に強化出来ねぇもんはねぇ!」
「こんな時は役立たずだっていう汚名、晴らしてやるぜコンチキショー!!」
続いて、シロカネ姐さんが色々あった岩玉に、蜘蛛糸を巻き付け、投げやすい形にしていく。で、無いだろうけど、万が一の事も考えて、鍛冶職人の皆さんに頼んで、糸や岩玉の強度を上げて貰った。これで迎撃を食らった時とかでも、ある程度は耐えられる!筈!
そんで、最後!!
「マーちゃん!ド派手に頼むぜ!」
「はーい!!」
「支援魔法の使い手の皆さんもお願いしまーす!!」
「元気モリモリにしてやんぜぇ!」
「元気百倍!アンパ」
「お前それはダメだバカやろ!?」
最後の仕上げとして、支援魔法の使い手の皆さんが、マーちゃんに大量のバフを与えた。
「うおおぉーー!!!力がみなぎってきたぁー!!!」
そうしてパワーアップしたマーちゃんは、岩玉に結び付けられていた蜘蛛糸を握りしめると……
ズ……ズズ……!!
「ふんぬぬぬぬぬぬ……!」
ズゴゴゴゴゴゴ……!!
「おりゃあああああああああああ!!!」
ブォォオン!!!
力いっぱい振り回し始めたぁー!!
ゴゥン!ゴゥン!ゴゥン!ゴゥン!ゴゥン!ゴゥン!
めっちゃ重低音の風切り音を出しながら、マーちゃんは岩玉と共に回る回る!物凄い勢いで回っております!
そして、遠心力とかでかなり勢いがついたそれを……?
「おおおおおおおおおお!!持ってけドロボー!!!」
ぶん投げたぁー!!!
投げられた岩玉は、物凄い勢いでモビーディックが上昇した場所にまで飛んでいった!
『ブオ!?』
勿論、それに気づかないモビーディックではなかった。水魔法を使った攻撃で、突如襲い掛かって来た岩玉を食い止めようと動き出した。
が…!しかし、岩玉の方が、モビーディックより早かった!!
ガゴオォォン!!!
『ゴオオオオオオオオオ!!!!?』
クリーンヒットだああああああああああ!モビーディックの顎に直撃ぃ!!
もろに岩玉を食らったモビーディックは、白目をむいて、上空から落下してきたぁ!
「よーし、狙い通り!こっから先は、俺達物理&攻撃魔法のアタッカーの出番だぜぇ!!」
『おおおおおおおおおおおお!!!』
そう、これこそがマーちゃんの考えた作戦よ!
題して、『攻撃が届かないなら届けるようにすればいいじゃない大作戦!』
流石マーちゃん!俺達に出来ない事を、平然とやってのける!
そこに痺れる!憧れるぅ!!