盟友と義娘との再会
「ひぃ~……つ、疲れたねぇ……!」
「ありがとう八雲。お礼の魔石」
「助かるよぉ~……」
モビーディックから何とか逃げ切る事が出来た八雲は、他のプレイヤーが集っているという情報を聞きつけて、元々モビーディックがいたあの広場に向かった。
で、無事にたどり着いたと共にダウン。お礼の魔石を与えて、休ませる。お前は頑張った。いや本当に。
「おい、お知らせ見たか?」
「あぁ、見た見た。こんなの聞いてないって……!」
「まさしく『悪夢』だけどさぁ…!」
……お知らせ?
どういう事だ?えーっと、メニュー画面開いて…………は?
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・イベント情報!
皆様、【Alternative Online】をご利用いただき、誠にありがとうございます。
本日より、ゲリライベントとして、【レイドバトル:守護獣の悪夢】を開催いたします!
謎の組織により、暴走状態となった守護獣たちを、プレイヤーの皆様で協力し合って、鎮圧してください!
開催期間は、一か月間となっております!
【Alternative Online】を、これからもお楽しみください。
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「唐突過ぎるってぇ!!」
「おや、急にどうしたんだい?マスター」
「こっちの話だ……!!」
くそ!運営め、唐突にこんなイベントを出しやがって!やりたい放題にも程があるのよ!!
というか、これアレか!!前回のイベント、【天獄戦争】が終わった時にGMが言ってた、”アップデート情報”!!その時に言ってたよな、確か!
確か、『悪夢襲来』がキーワードだった筈……だとしたら正にその通りだよこん畜生!!本来は自分達を護ってくれる偉大なる存在。それが突然、自分達に牙をむいたなんて、それこそ悪夢でしかないわ!
「よーし、取り合えずプレイヤーの皆、集まってくれ!対策とか情報とか、色々整理していこう!」
ん、どうやら一旦集まるみたいだな。進展があればいいんだが………お?
あの見覚えのある後ろ姿は……もしかして。
「よぉ、盟友!」
「ん?おぉ!お前か!久しいな!」
やっぱり、ダイノキングだ!お前、ウオクアに来ていたのか!
「お前も最後に来たのがウオクアだったんだな」
「ん?どういう事だ?」
「……あぁ」
そういえば、貴方って情報収集は恐竜関連しかやらない子だったね……ある意味、お前らしいよ。
「実はかくかくしかじか……という訳よ」
「待て、おい待て。何故かくかくしかじかって言うんだ。それは二次元でしか許されないやつだろ」
「いやここ、ある意味二次元だろ」
「メタいからそういうのは辞めろ!!!」
はいはい、分かってますよ。もー、ノリというものを理解してないんだから。
改めて、ダイノキングに現状を伝え、今から情報を整理する事も伝えた。
因みにダイノキングがウオクアに来たのは、キャリザウラーが目的らしい。うん、まぁ確かに見た目恐竜だもんね。
「ふむ…。トラベラー、ジャホン、デビエントピア以外の主要国の守護獣が、突如として暴走。それを何とかするのが、今回のイベントという訳か」
「そういう事。今回はレイドバトルらしいから、数の暴力もそうだし、情報提供もかなり大事になってくる」
レイドバトル……情報としては知っているけど、いざこうしてやるぞ!ってなると、少し緊張するな。しかも、敵は守護獣。国を護る事を任された存在だから、一筋縄でいかないのは確定だ。
「所で、守護獣ってどんなのがいるんだ?」
「ん?えーっと……」
確か…稲葉がいるファイムの守護獣は、スカーフェイス。名前から察して、多分ライオンだろう。で、熊川の所のフォレグルは、キムンカムイ。熊だな。安直。で、石森がいるホワーリーじゃ、シロイナバ。因幡の白兎って事?
「で……あと、ウィンネードとアーランド、ダーラック……こいつらは知らん」
「ウィンネードはコジロウという刀を咥えたツバメ、アーランドにはゴリアテという巨大カエル、ダーラックにはアルカードという吸血コウモリが、守護獣として君臨しています~」
「ほぉ、成程な」
「………この声って」
これまた聞き覚えのある声が…そう思って振り返ると。
「お久しぶりです~♪」
「んぅー……!」
「いつの間に世海を!!?」
やはり、メリィがいた。そしていつの間にか世海を抱いていた!!お前本当にブレないね!!?
「ん?知り合いか?」
「世海君の旦那さんにして、お義父さんの義娘!それが私、メリィさんです!羊大好き!同時に世海君も大好きなのです!!」
「……こういう子なんです」
「成程、つまり同じ穴の狢だな」
そうとも言えるね。何というか、久々に顔を見れてちょっと嬉しい反面、中身もちっとも変ってなさすぎて、逆にがっくりというか……あれ、これもしかして同族嫌悪か??イカン、だとしたら改めねば!?
「我が名はダイノキング!恐竜王を目指すものなり!」
「よろしくです~!」
「おうさ!所で盟友!」
「なんでしょ」
「さっきから謎の殺意を感じて痛いのだが!!」
「あの二人もちっともブレないな!!?」
まぁ当然か!メリィがいるってことは、その二人もいるわな!!だとしてもイベントの時くらい、空気を読んでほしいものなのだが!!!
「ではでは、ひとまず移動しましょうか~。これから話し合いをして、対策を立てていくみたいです~」
「フハハハハハ!新たに増えた同胞たちを、あとで見せつけてやる!」
「お、言ったな?こっちも頼もしい仲間がいっぱいいるんだぜ~?」
話し込みすぎたな。ひとまず今は、対策を立てるべく、他プレイヤーの跡を追うとしよう!!
……それはそれとして、メリィはそろそろ世海君を離したげて?
「………我々、最初から最後まで空気だったねぇ」
「なんだ?あの……竜だか羊だか分かんねぇ奴ら」
『中々癖のある連中ですよ。私が保証します』
「あの竜、根性ありそうだ!一回闘ってみてぇぜ!」
「全く、僕の同僚は本当に馬鹿で困る…」
「展開についてけないっす!!」