二日目のログイン
「ふわぁ~ぁ……バチクソ眠い…」
「寝不足な上、体育の後の古典は真面目に寝れるよな…実際寝たし…」
【Alternative Online】を全力プレイした翌日、つまり今日。
高校も無事に終わり、俺と稲葉の二人で下校していた。
「はぁ~あ、帰宅部って楽だねぇ。何のしがらみも無いからさぁ」
「まさか俺の入学と共に、民俗学部が廃部になるとはなぁ…一緒に妖怪研究、したかったのに…」
高校見学の時、民俗学部があったから絶対入ってやる!と意気込んでたのに…残念だよ本当。先輩に会えなくて本当に残念だ。
「気持ちは分かる。でも、その分ゲームに力入れる時間が増えたって事でポジティブに行こう!」
「……まぁ、それもそーだな!」
過去の事でくよくよしてたって仕方ない!今を大事にだ!
「で、今日はどうする?また二人で行動するか?」
「その事なんだが、実は俺達と同じで【Alternative Online】を手に入れてた奴がいてさぁ。声かけて一緒に遊ぼうぜって事になったんだ。だからそいつらとも交えて、今回も討伐していこうぜ!」
「おぉ、分かったぜ!おっと、じゃあまたあとでな!」
「あぁ!21時には噴水広場で集合な!それまでに課題とか終わらせとけよー!」
「こっちの台詞だ!」
稲葉と一度別れ、後の合流を約束する。
さて……色々と終わらせるか。
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「予想より早く終わったわ」
現在、時刻は20時。課題もサクっと終わり、飯も食った。風呂は帰って来た時にすぐ入ったから……うん、やる事がない。稲葉と集合の約束の時間まで、まだ一時間ある。
つまり…
「ログインの時間だオラァ!!」
VRセットを装着し、早速ログイン!悪いな稲葉、一足先にゲームを楽しむぜ俺は!なぁに、21時頃にはちゃんと到着しとくさ!!
『ようこそ!【Alternative Online】へ!』
AIの声が聞こえると共に、目の前の景色が一変。
冒険者の国トラベラーの、噴水広場に俺は立っていた。
「おはよう!我等が王よ!君の帰還を待っていたよ!」
「うぉっと!?」
と同時に、後ろから何かが乗っかってくる重みが…!一瞬バランスを崩しかけたが、そこはそれ、何とか気合で立て直す!
そんで後ろを振り返れば…やはりというか、彼女がいた。
「よぉ、“八雲”」
「あぁ!君の従者、八雲だよ♪」
八雲。昨日俺の従者となったヤマタノオロチに俺が付けた名前だ。
意味に関しては特にない。ただ、八の付くカッコイイ名前を…となったらこうだろうと思って決めた。俺に意味とか難しいことを求めるな!!!
だが、我ながら良い感じの名前を付けれたと自画自賛している。
「今日は何をしていくんだい?我等が王よ」
「うーん、実は21時には他の連中と遊ぶ予定なんだけど…予定より時間が空いたから、その間にこの辺の探索もしつつ、先にちょこっとレベリングもしていこうかなーって」
「成程。そういうことなら、喜んで付き従うよ。我等は常に、貴方の命に従うよ♪」
……美少女にこう、王とか付き従うよとかって言われたら、真面目にガチ恋してしまいそうになって情緒可笑しくなっちまうって…!
…それはそれとして。
「八雲のその、我“等”ってのは…やっぱり、他の頭の事を指してる訳?」
「うん?あぁ、そうだよ。基本的には、長女である私が、こうして喋っているよ。他の頭、いや次女達に関しては、実は言葉を話せなくてね。でも、私にはそれが聞き取れる。皆、貴方が王である事に異論は無いから安心したまえ♪」
「なーるほどなぁ、そこまで考えこまれているのか……やはり【AO】、侮り難し…!」
そんな細かい所まで考えているとは…すごいなぁ。
「まぁ、戦闘面に関してはドドーンと任せたまえ。我等に任せておけば、万事バッチグーだから♪」
「…バッチグーってちょっと古くない?」
「えっ」
…八雲のセンスがちょっと怪しい感じな気がしてきた所で、気になっている事があったので見たい。
「八雲、ステータス見せて」
「ん、我等のかい?良いとも!すてぇたすおぉぷん!」
お、出てきた。さてどんな内容なの………うんん!?
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個体名:八雲
Lv:1
職業:荒神
種族:ヤマタノオロチ
HP:80
MP:80
力:71
敏捷:53
器用:44
耐久:62
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「なんじゃこのステータス!!?」
「何って、我等はこの世界では最初の召喚妖怪だからね。レベルは低いけど、それでも中々優秀だろ?」
「優秀ってレベルじゃねえんだけど…!?」
レベル1でこれ…!?それに荒神って…!うろ覚えだけど、確か狂戦士の最上位職じゃなかったか…!?
いや、確かに上位職に進化したら、ステータスをある程度引き継いだ状態で、レベルがリセットされるって聞いた事はあるけど…!
それ込みで…?だとしてもかなりその、序盤のモンスターとしては優秀としか言いようがないぞ!?
「どうだい?我等のすてぇたすは。ちょべりぐだろ♪」
「ちょべりぐはもう死語だぜ」
「えっ」
「だが、しかし!何とも優秀な存在じゃないか八雲!これなら、我が『野望』である百鬼夜行も夢ではない!これから期待しているぞ!」
「あ、あぁ。任せなさい!我等の力は王の敵をぎったんぎったんにするための力でもあるし、王の野望の手助けをする力でもあるからね!」
「……ぎったんぎったんも死語だぞ」
「えっ」
……なんでそうも死語ばかり出てくるんだ。一周回って面白いぞ。
「さて、まだちょっと時間はあるし…少し探検するぞ!」
「あ、あぁ。……うーん、今の言葉はナウいんじゃないのかな…?」
………このまま放置でもよさそうな気がしてきた。逆にそれが可愛く思えてきたから。
そんな思いをしつつ、俺は八雲を連れて、トラベラーぐるっと探検に出るのだった。