魔王巫女様
「にしても、アンタにようやく友達が出来たみたいで嬉しいわよ、私は。アンタは昔っから鈍くさくて……」
「お、お姉ちゃん!そ、それは言わないでよぉ……!」
……目の前で、魔王巫女が存在しているよ…。しかも、お節介姉という属性を引っ提げて……。
「うわ、掲示板がお祭り状態になってるぜ…。あの【魔王巫女】が、妹の蛇巫女ちゃんと、お供のお義父さんと米エルフとヒーローカップルを連れて、トラベラーを歩いてるって…」
「ねぇちょっと待って?今とんでもない情報を投げつけてこなかった?誰がカップルだって!?」
「ハーッハッハッハ!予想外の攻撃!」
「俺としては、お前が米エルフって言われ始めている事にびっくりなんだが???」
俺達は、彼女達の後ろを歩きながら、トラベラーの街を歩いてるんだけど……周りの視線がすんごいの。ハリウッド俳優とかの気分を味わってる気分になれるね!!!
「マ、マジであの魔王巫女がいるぜ…!こんな所に何の用が…!?」
「隣にいるのって、確か妹の蛇巫女ちゃんじゃないか?同時にいる所が見られるなんて……!ありがたやーありがたやー」
「後ろにいるの、お義父さんじゃね?」
「お義父さーん!!息子君を私にくださーい!!」
「抜け駆けは許さねぇよ!!?」
……うん、取り合えず。
「世海君は貴様らなんかに渡しはしねぇ!欲しければ、俺を倒してからにしな!」
「お前この状況でよくツッコミが出来るな!?」
「これが俺じゃい!!」
俺が点けちまった火はもう消せねぇんだよ!ならもう、こっちから燃料を追加してった方が面白いだろが!
「……え、何?アンタ、その年で結婚してんの?節操無さすぎじゃない?」
「違うからな!?そういうネタというか、そういうある種のやり取りみたいなものだから!!俺は完璧、彼女いない歴=年齢だから!」
「あ、そう。そういう事にしといてあげる。避妊はしっかりしなさいよ?」
「人の話を聞いてくださりませぬかねぇ!?」
「冗談よ」
あんた程の人の冗談は、冗談に聞こえねぇんだよ!!?
あんたも俺の扱いを理解している節があるな!?そりゃそうか、アンタこの前、俺が絡んでる掲示板にやってきてたもんな!!
「お、お姉ちゃん……!お、おと……ク、クラスメイトにちょっかいかけないで……!」
「やーねー、こういうのは軽い掛け合いみたいなものよ?それに、こっちに関しては割と有名だからね。私とは違うベクトルで、だけど」
「あの、頭に手を置かないで。なんか力籠ってて潰れそうなんですが」
魔王だからって何してもいい訳じゃないとぼかァ思うんですよ!!口には出さないけど!!
「…雨天が体のいい玩具扱いされてる」
「あああ、我等が王よ……!」
『…彼女、相当強いですね。今の我々じゃ、勝ち目はなさそうだ』
『はっ、腰抜けめ!そげん自分がむぜとな?』
『んだとこの野郎!』
あぁ、また喧嘩し始めた。いや、ちょっと考えればすぐに分かる事なんだけどさ…。
「お米、止めるぞ」
「あぁ。二人共、その辺で――」
「せいっ!」
ガンッ!ゴンッ!!
『『っ!!?』』
―――え?え!?
「全くもー。人がいる場所で喧嘩なんてするんじゃないの!次やったら、もっとキツめのゲン☆コツするわよ!!」
「あ、あああの、お姉ちゃん…!」
「何よ」
「ふ、二人共…き、消えてます……!」
「…あら?」
魔王巫女のゲン☆コツを食らったアシュラとおトヨさんは……光の粒子となって、消えてしまった……。
……はは、ははは。
ハァーーーーーーーーーーーーーー!!!???!??
「アシュラーーーーーーーーーーーーー!!!」
「おトヨさぁーーーーーーーーーーーん!!!?」
「うわ、うわぁー…!これが魔王の所業なのね…!」
「あら、ごめんなさい。ついうっかり」
「ついうっかりで、こっちの陣営の戦力を削んなや!?ちょ、再召喚ー!!」
「死因、魔王巫女のゲン☆コツとか、マジでダメだってぇ!!」
急いでアイテムボックスから特殊召喚石を取り出して、アシュラとおトヨさんを再召喚!何とか事なきを得た!が、それでもさぁ!!それでもさぁ!!?
「アンタは俺達よりレベルが高いんだってのを認識してもろて!?」
「軽いノリで人の相棒を殺さないでくれないか!?頼むから!!」
「アッハハハ!ごめんごめん!お詫びにニ対一で戦ってあげようか?」
「「謹んでお断りします!」」
こちとらまだ成長中なので!!がしゃどくろ倒すまで死んでたまるか!!!
「も、もうお姉ちゃん……!あんまり困らせないで…!」
「悪かったわよー」
全然反省してる風貌に見えない……!こっちは相棒を消されたってのに…!
『Ah, I thought I was going to die...I actually died...!』
【あぁ、死ぬかと思った……つか死んだ…!】
『ないなんじゃあんおなご…!化物ん類か…!?』
「あ、戻ったわ」
「魔王の実力、確かに見届けた…!ヒーローまでの道のりは長いな……!」
よ、よし戻った…!いやぁ、危なかったなぁ……!
「つ、次からは自重して…!」
「忘れてない内はそうしとくわ」
「ずっと忘れないで…!!」
もっと言ってやってくれヨル巫女ちゃん……!これ以上被害を出さない為にも…!
「でもまぁ、私の不注意で死なせたことは確かね。てことでこれ、お詫びの品よ」
「んぇ?」
「あ?」
そう言って渡されたのは…なにこれ、お札?
「唐傘、アンタが妖怪を集めているのは知ってるわ。掲示板じゃとても有名だもの」
「…それが?」
「私の祈りやら奇跡やら加護やらがたーーーっぷり詰まったお札よ。それ触媒にして召喚とかしてみたら?」
「ふぁっ!?」
何じゃそれ!?そんな貴重なモンを……いや、というか!
「召喚って、召喚士が作ったやつじゃないと効果を発揮しないんだが!?」
「え、そうなの?ま、物は試しで一回やってみなさいな!作り方はアンタのやり方を真似たから、出来なくはないと思うのよね!ダメだったら、エンチャントでもバフにでもしなさい!」
「それはそれですげぇ使いにくいんだけど!?」
特急呪物をポンと渡された気分なんだけど!?いや実際はご利益たっぷりなんだろうけどさぁ!なんか……重い!!
「あ、勿論アンタのも同じ感じのやつだから、何かしらの武器にエンチャントしちゃいなさい!」
「お、おおおおおおお……!?」
『主?主!?顔がヤベ事になっちょっぞ!?だいじょっか!?しっかりせんか!』
「えぇー、いーなー!私も欲しいー!」
「勿論、アンタ達にも上げるわ。妹をこれからよろしくね」
「い、いいのか!?魔王よ、感謝する!」
…なんか、買収された感じがしないでもないが、貰えるもんは貰っておこう…。がしゃどくろ戦に向けて、なんかの役に立つかもしれないし。
……何というか…色んな意味で規格外な存在だな、魔王って…。