唐傘少女
『唐傘強化まで、残り30』
「数が、数が多いよおおおおおおお!!」
どうも、まだ地獄を味わってます。いくら俺の唐傘強化の為とはいえ、無関係の唐傘を破壊していくの、色々と心に来るんですけど……!
何が嫌って、敵の唐傘お化けの動きが単純すぎるもんだから、もう流れ作業みたいになってきているのが本当に心にクる!!ちゃんと命を頂く為に殺っているのに、流れ作業になってるのがなんかクるもんあるんだよ!屠殺じゃないんだからさぁ!!
でもって、まだまだ俺に襲い掛かって来るんだよ!なんでだよ!?ここまで来たら逃げろよ!健気に向かってくるなよ!逃げろよ!?いや、追いかけて殺しに行くけどさぁ!でもなんかこう、あるだろ!?
敵討ちとでも言わんばかりに、何度も何度も襲いにかかってきてぇ!同じ唐傘お化け同士、仲良くしましょうとは言わない!言わないが、せめて休憩をくださりませぬかねぇ!?
『ケケケ…』
『カカカ…』
あ、でも動き止まった!今の内に逃げ―――
『ガガ!』
バグン!
『ガギャア!』
バキ!バリバリ……!
「……え?」
……気のせいかな?なんか、急に唐傘お化けたちが、共喰いし始めたんだけど?
え、な、なんで!?
ていうか、唐傘お化けって肉とか骨とか存在しているの!!?そっちに関してもかなり驚愕なんだけど!?めっちゃグロい!さっき俺が倒した時はそういう描写無かったのに!
バリィ!
ブチブチッ!
ベキッボリッ!
ガリッゴリッ……!
う、うわ…うわ……!食べられても食べている…!あ、明らかな異常事態なのに、何故か見てしまいたくなる……!
突然始まった共喰いを見入っていたら、最後に一体だけが残った。元々の色は紫だった筈のその唐傘お化けは、同族の血肉を食らった影響か、頭の先から下駄までも、血に塗れていた。
……え、これで終わり?な訳ないよな…?
『……フフ、ウフフフフ…』
「え?」
校内に、女性の笑い声が響き始める。
それと同時に、目の前にいる唐傘お化けが、自身の傘を開いて、ゆっくりと回転し……!?
「うえぇ!?」
「アハハハハ」
な、え!?
ぐ、グルッと一回転し終えた頃には、いつの間にか少女がいたんだけど!?俺みたいな、人間体になった唐傘お化けって事!?
…だとしたら、ここからは難易度Hard……いや、EXかLunaticか。どのみち、一筋縄ではいかないだろうな!
「ネェ、一緒ニ遊ボウ?」
「…なんだ、遊びてぇのか?」
クスクスと嗤い、三日月状に口元を上げながら、可愛らしい声で誘ってくる唐傘お化けの少女……唐傘少女でいいか。
「いいぜ、遊んであげる。どっちかが倒れるまでな!」
「ウフフ……♪嬉シイ、嬉シイ!」
さぁ、どんと来やがれ!どんな攻撃も妖術も、可能な限りぶっ飛ばしてや―――
「ジャア、カクレンボシヨウ!」
「……へ?」
「最初ーハグー。ジャーンケーン」
「え、え!?」
「ポン!」
「え、あ、ポ、ポン!!」
突然の提案に驚いて、咄嗟の判断も出来ぬまま、言われるがままにジャンケンをしてしまった。結果、唐傘少女はパーで、俺がグー。負けました。
「ジャア、鬼サン。30秒数エタラ探シニ来テネ?途中デ帰ッタラダメヨ?」
そう言うと、目の前の唐傘少女はポンッと音を立てて、煙と共に消えた……。
………いや、え?
「遊ぼうって、文字通りの”遊ぼう”だったの!?」
ちゃうやん!?定石通りなら、そっちは俺達を殺そうと襲いに来る感じの”遊ぼう”じゃん!?さっきまで俺、アンタらを殺してた訳だしさぁ!
なんでさっきまで敵対してた相手に、遊ぼう!って提案できるの!?神経図太いどころの話じゃないわよ!?
「……いや、うん。まぁ…やるって言った以上、ちゃんと探すけどさぁ…」
まさかこんな形になるとは……妖怪の考える事って、俺でもちょっと分からない時があるなぁ。
さて、取り合えず廊下に出たはいいものの……どこに隠れてるとか、分かるもんなのかなぁ…。俺、そもそもこの廃校の見取り図とか分からんし。
……変な事に巻き込まれたなぁ。