唐傘強化
ジャホンのとある山奥に存在する廃校。
そこで俺は……地獄を、味わっていた。
「はぁ…!はぁ……!」
『ケラケラケラケラ』
逃げても逃げても、襲ってくる怪異。
どれだけ許しを乞おうとしても、お構いなしに襲い掛かって来る。
「クソォ……!来るな、来るなぁ!!」
『ケタケタケタケタ』
「どうして、どうしてこんなことに……!!」
俺は……!俺はただ……!!
「なんで……なんで……!!!」
「どうして”同族殺し”しないと強化出来ないんだよぉおおおおーーーーーーー!!!」
ーーーーーーーーーー
「自身を強くしたいのなら、手っ取り早い話、”同族殺し”をするのが一番だ!」
「……え?ど、同族殺し?」
「あぁ。君の場合だったら、唐傘お化けだな!同族を倒し、その際に出てくる魂をその唐傘に食べさせな。そうしたら、その唐傘を通して、お前が強くなれるぞ!」
「…………え、えぇえ…」
「あ、ただし。他の妖怪の手を借りたらダメだぞ?君一人の力で強くならなきゃな!で、だ!この地図を見てくれ、ここに昔、妖怪学校があってな。今はもう廃校になっているんだが、ここは野生の唐傘お化けの群生地になっているんだ!そうと決まれば、早速行ってこい!!」
「え、ちょ待って!!?」
ーーーーーーーーーー
……何もかもが唐突だし、勝手に話を進めるのやめろや!!それに流されちゃう俺も俺だけど!!!
……はい、という訳で。俺はとある廃校に生息している、唐傘お化けを討伐するべくやってきました。一人で。
いやぁ……まさか一人で同族を倒さないと、強化に繋がらないとは……色々と酷いなぁ…。
「というか、純粋に辛い……!」
俺が血涙を流していても、そんな事知るか!と言わんばかりに、唐傘お化けが襲い掛かって来る。
唐傘お化けって、本来は捨てられた傘の怨念が妖怪化したようなもんだぞ!なんでこんなにいるの!?雨の日とかに、子供達が置いていったのか!?それが捨てられた判定でこうなったんか!?だとしたら多すぎるだろがい!パッと見ただけでも、30以上はいないか!?
でも正統派の唐傘お化けだから許せるんだよなああああああ!!俺の持ってる唐傘と、色違いなだけで同じなんだよなあああああ!!
一つ目!傘の部分から出ている巨大なベロ!一本足には下駄!まさに唐傘お化け!!
こんな王道モンスターを倒せだなんて……!なんて、なんて運営は過酷な事をするんだい!!
ぬりかべの時はまだ、まだなんとか割り切れたよ!?でも、でもね!!?俺の人生を変えてくれた恩人みたいなもんなのよね!?唐傘お化けって!!そう意識しちゃうとさぁ!中々手を出せないんだよねぇ!!違うって分かってても、なんか躊躇しちゃうんだよおおおお!!
『ケタケタケタ!』
「うおぉ!?」
でも、幸いというべきか、唐傘お化けの攻撃は単純!体当たり、ベロ攻撃、水妖術!それだけ!だから割と避けられる!
でも、いつまでも逃げ続けていたら、皆に会えない……!かといって、自分と同じ種族を殺すのは……!!
「うう、うううう……!」
『ケラケラケラケラ』
『ケケケケ!』
「ううううううう……………!ああああああああもう!!やりゃあいいんでしょうやりゃああ!!」
こうなりゃヤケクソ!一気にまとめてぶっ殺してやる!!
「『水妖術:水砲撃』!!」
唐傘を構えて、水妖術を発動させる。先端に水の砲門が5つ現れて、一気に放出!許せ唐傘お化けたち!!
『ケケケケ』
『ケラケラケ』
『カカカカカ!』
「んん!?」
だが、唐傘お化けたちは逃げる事をせず、自身の体……唐傘部分を広げて、俺の妖術を全身で浴びた!……でも、ダメージを受けている様子が一切ない!!?
つか、そりゃそうだわな!?傘って、水を防ぐ為に存在しているようなもんだもんな!?そら、水妖術なんて効果ないわな!!こんなところでPONを晒さなくても良くないか俺!?
『ケケケケ!』
「うぉっ!?くっ、こうなったら……!」
妖術が効かないのは、正直予想外だった。でも、それなら別の手を使う!
即ち、”物理”で殴る!!
「どっせぇーーーーーーいいい!!」
『ゲギャッ!!』
突進してきた唐傘お化けを避けて、無防備になった所を、俺の唐傘で全力でぶん殴る!
バキィ!っていう音と共に、攻撃を食らった唐傘お化けは倒れて、動かなくなった。た、倒したのかな……?
「ガアア!」
「うわぁお!?」
と、ここで変化発生。
俺の持っている唐傘が突然一人で動き出して、倒れている唐傘お化けを『食べ始めた』!おま、自立行動出来たの!?というか、俺の分身体が唐傘お化けを食べてる光景を見るの、とてつもなく複雑なんだけど!?
ピコン!
『唐傘強化まで、残り49』
「うお!?え……えぇ!?マジで!?今の方法でいいの!?」
ここまでくると、もはや俺も分からなくなってくるなぁ!?
でも、正しいみたいだから………ごめん、お前たち!俺の為の生贄になってくれええええ!!!