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戦闘用絡繰人形『白面金毛』

「待って待って待って待って!?聞いてない!!尻尾のそれ、伸びるなんて聞いてない!!?」

「我等妖狐の一族、特別な修行に励めば、尻尾を自由自在に操れるぞ」

「それ初耳なんすけど!?」

「なんだいこの連撃!?わけわかめすぎるとも!?」

「あぁ!?俺の蹴りが効かねぇぞコイツ!?」

『チッ…!dollの癖に、中々の力だな…!』

「うーむ、どうやって戦おうかな…?」

「め、めがまわるぅ~……!」

「にゃーん!?」


えー、現状報告。軽めに地獄を味わってます。


戦闘用絡繰人形『白面金毛』。その性能なんだけど……まずね。早い。めっちゃ早い。100メートル3秒くらいなんじゃね?って思うくらいに早いです。


そんで、力が強い。アシュラが力負けして、投げ飛ばされて、たった今茂みから顔を出しました。


そして、手数が多い。武器なんも持ってねぇのに、手刀だけなのに、素早いこと素早いこと。現在、八雲が姉妹たちの目と頭を借りて、何とか応戦しています。だけど、それまで。相手の素早い攻撃に対応するのがやっとなのだ。


八雲が前の攻撃を防いでくれているのに……何故か、後ろに備えられてた九尾が、触手みたいに伸びて襲ってくるんだよね!!現在、俺とココノがそれに必死になって逃げています!ねぇ馬鹿じゃない!?本当に馬鹿じゃない!?なんで尻尾が伸びるんだよ妖術と絡繰って、本当に便利ね!!


でもこれの何がおかしいって、文献曰く『狐の一族は頑張れば尻尾を自由自在に操る事が出来るぞ☆(要約)』ってことらしいんだよね!!なわきゃねぇだろ!?いくら自由度が売りの【AO】でも、そんな馬鹿な事…………馬鹿、な事……いや、するわ。ごめん忘れて。


そんで、さらに問題。………世海とすこちゃん様が、尻尾に捕まって、めっちゃ振り回されてる。お目目ぐるぐるかわいいね。じゃねーんだわ!!


タンクと回復役が一瞬で捕まって、ああやってぶん回されてたら対処できねぇんだわ!重要な役回りの子が二人、一気に捕まったんだもの!


くっそぉ、どうやってアイツを懲らしめてや―――


「へぶっ!?」


痛ったぁ!やべ、ずっこけた!

急いで態勢を整えな―――



~~~~~~~~~~



「………はっ!?」

「おや、起きたかいなあ?」

「え?なんでタマモが?」


いつの間にか、タマモ(人状態)が目の前にいて、こっちを覗き込んでた。というか、俺なんで布団に?


「君、あの人形にええのを食ろうてノびたんやわぁ?覚えてへん?」

「えぇ?あ、えぇあ……ぅええ……?」


い、言われてみれば……最後の記憶が、ずっこけた記憶しかねぇから……あ、待てよ?そういえばあの後、一瞬だけど後頭部に一発食らったような…?


「王ー!!無事かぁーい!!?」

「にゃーん!」

「おどーざーん!!」

ドドドォ!!

「へぶぅ!?」


ぐ、首逝った気がする……!声的に、八雲とすこちゃん様と世海だな…!?ゆ、油断してる時にタックルされたら、本当に死にかけるから辞めて……!!


「ごめんよぉ!我等があの人形を足止め出来ないせいで、王を怪我させてしまったぁー!」

「にゃー!にゃうにゃうぅー!!」

「ぎらいにならばいでおどうざーん!!」

「よーしお前ら一旦落ち着けぇ!!」


気持ちはありがたい!ありがたいから泣きながら抱き着かないで!涙よだれとか鼻水が当たるのはまぁ別にいいやって気持ちだけど、めっちゃ付着するせいで、俺の見た目もそうだけど、お前たちの顔が色々と残念な感じになっていってるから!


「ふふふ♪愛されてるねぇ♪」

「お陰様で!他の皆は!!」

「他の子達は、まだ人形と戦うてんで。多分、そろそろボロ負けで帰って来る筈やわぁ」


タマモがそう言い切った時に、部屋の障子が開かれて、ボロッボロになったアシュラ達が帰って来た。すっごい見た目になってる……。


『F○ck!次こそはボロボロにしてやるぞあのDoll!』

「なんで残り一分くらいになって、尻尾の先から炎の光線が出てくるんすか……ご先祖、あんなやべぇ存在なんて知らなかったっす……いや、下手したら自分もああなるんすか……!!?」

「だああ!あんにゃろう、次会ったらぶっ壊してやる!!」

「うるさいよバカ猫。おや、マスター。具合は大丈夫なのかい?というか、見た目すごい事になってるよ?」

「あぁ、何とか。見た目に関しては……察してあげて」

「…ふふ。そうするよ。氷砂糖食べるかい?」


冬華は八雲達をチラッと見て、静かに微笑んで、俺に氷砂糖を勧めてきた。何故今だ。食べるけど。


……しかし、うーむ……。


「ここまでボロ負けすると、ちょっと悲しくなってくるな………武器とか色々、必要かもな」


ちらっと皆を見渡して、俺はそう確信した。


すこちゃん様は逃げるのが専門、アシュラの武器は、自分が成長すると共に進化するタイプだから良いとして。

俺は基本(エリアボス製の短刀があるとはいえ)妖術頼りだし、八雲は妖術+素手。世海もタンクとはいえ盾が無いし…ココノも素手だ。で、新人二人も当然、何も持っていない。


寧ろ、逆にこれまで、よく戦えてこれたなレベル。となれば……


「武器、調達しよう!」


次の目標は、自分達に合う装備を見つける!そんでレベルアップをしまくって、あの人形にリベンジだ!!

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