メリメリハッピークッキング
「では~、ここでお料理をしましょうか~!」
「わ、わぁー……」
ウオクアに戻った俺達は、ウオクア内でも有名なエリア、BBQ会場へと来ていた。
近くに海と川があるので、自分で魚を釣って、それを捌いて食べる!というコンセプトのようだ。既に多くのプレイヤー達が、BBQを楽しんでいた。
「ふーむ、でもこんな見た目ブサイクな魚、本当に美味しいのかい?」
『とても想像できないな』
「火が点いたっすよ!妖術を使わないで火を起こすなんで、初めてやるっす!結構楽しいっすね!」
「おなかすいたぁー…」
で、八雲達は、さっき捕まえたグロウラルクが入った冷却ボックスを眺めつつも、BBQセットの準備をしている。
ちょっとお値段はするけど、食材とかは会場内で買えたりもするから、味変したいときに便利。
「で、えー……メリィのお兄さんとお姉さん、だっけ?が調理してくれんの?」
「はい!私は料理下手なんだけど、お兄たちはとっても上手なの!」
……正直、会いたくねぇ。だってさっき、あの二人にコロコロされそうになったんだぞ?めっちゃ怖かったんだからなあの殺気!!がしゃどくろに出会ってなかったら、トラウマ級だったぞ!?
「準備出来たよ、我等が王よ」
「分かったー。……じゃあ、あんまし気乗りしないけど、呼んでもらっても?」
「分かりましたー!じゃあ呼びまーす!すうぅ~……お兄~!お姉~!来てぇーーー!!」
準備が終わったので、メリィが二人を呼ぶ為、大声を出す。
………誰かが来る気配な―――
「妹が世話になったなァ……」
「変な事してないでしょうねえ?」
「うおわあぁ!!?」
びびび、びっくりしたぁ!またこのパターンかよ!!?後ろから音もなくヌルリと出てくるの流行ってるの!?廃れてしまえそんな流行!!
「あ、来たー!紹介するね、お兄とお姉です!」
「シールキープだァ……よろしくゥー…」
「アマルスラウよ。妹は渡さないから」
現れた二人……シールキープとアマルスラウは、笑顔で、されど死んだ目で挨拶してきた。純粋に怖い。
シールキープは、前衛職のようで、腰に剣を二本ぶら下げている。対するアマルスラウは魔法職のようで、魔術書を仕舞うホルスターが腰にあるので、多分そんな感じ。
んで二人共、天パなのか髪の毛がちょいとモフめ。そんで頭からは、メリィのような渦巻の角が生えている。この二人もまた、羊獣人なんだろうな。
「それでェ?可愛い妹ォ、このグロウラルクを調理して食わせてあげてくれって話だったなァ?」
「うん!お願い!」
「可愛い妹の為なら、喜んで作るわ!あの謎の変人の分も用意するの、かなり嫌だけど」
うわぁ、すっごい敵意向けてくる。いっそ清々しいわ。
つか……あの二人、かなりのシスコンだなぁ…。めっちゃメリィの事を甘やかしてる……さっきの敵意とのギャップの差が激しすぎるんよ……温度差で風邪ひくわ。
「……こうまで我等が王を馬鹿にされると、実力差に関係なく、反抗したくなるねぇ……!」
「お供するっすよ、姐さん…!」
ちょ、二人共ステイ!?公共の場での戦闘は、問答無用でペナルティ食らって、色々デバフを食らうんだって!!
「もぉー、お兄もお姉も、お義父さんに仲良くして!じゃないと喋ってあげないよ!」
「お前、なんか好きな魚料理とかあるかァ?好きなだけ作ってやるよォ」
「技や魔法で困ってる事とかない?調理が終わったら、色々聞いてあげるわよ」
「本当にギャップで風邪ひきそうだなぁ!!?」
一瞬で態度がコロっと変わったなぁ!ついさっきまで、変な事したら殺すって感じでギスギスしてたじゃん!?なのにメリィが脅したら、すぐ従順になったぞ!?シスコンもここまでくると、逆に怖いな!?
「それじゃあ、メリメリハッピークッキング、開始~!」
「んじゃあ、早速作っていくぞォ。おいアマル、お前は塩釜でも作れェ」
「分かったわ。じゃあそっちは、刺身とか焼き系よろしく」
「おォ、任せろォ」
色々あったが、二人はメリィの合図に合わせて、調理を開始した。二人共手際がよく、あっという間にグロウラルクを捌いていった。30匹はいただろうグロウラルクは、あっという間に三枚に下ろされて…あれ?一匹だけ、エラと内臓を取ったら、そのまま放置して…あ、アマル姉が持って行った。
「おい、お前ェ。こっちの奴は全部下処理とか終わったからよォ、持ってって焼いちまって、先に食ってろォ」
「は、はい!い、いただきます…!」
さっきの威圧感が引きずって、つい敬語っぽい感じになってしまった…いや、多分年上だろうから、良いっちゃ良いのか。
兎に角、今は焼く事にしよう!
網も炭火も、八雲とココノがやってくれたから、準備はオッケー!あとは、こいつ等を乗せていくだけ!
「それそれ、いっぱい乗せてけー!」
『いっぱい食べまショー!』
「おさかなさん、いっぱいだぁー!」
全員で協力して、網の上に食材を乗せていく。
グロウラルクと野菜を交互に刺した串と、お肉と野菜が刺さった串。グロウラルクに塩を刷り込ませたやつとか、グロウラルクの身を包んだアルミホイル等々、焼き上がりが楽しみなやつばかりだ!
万が一、食いきれなかったとしても大丈夫!料理はアイテムとして認識されるから、アイテムボックスの中に収納する事が可能!いつでもどこでも、温かい状態の料理を楽しめるぞ!
「あ。お義父さん、言い忘れてたんですけどぉ…」
「ん?」
「実は、グロウラルクって、一人につき、1匹までなんですよぉ」
「……ん?」
一人につき1匹とな?どゆことなんじゃ?
「教えてあげるわ」
「あ、アマルスラウさん。ん?それは?」
「アマル姉でいいわ。これ?グロウラルクの周りを合わせ塩で固めた奴。塩釜って言ってね、結構おいしいのよ」
アマル姉がそう言って、塩釜っていう奴の周りを炎魔法で焼き始めた。どんな味がするんだ…?
「説明を続けるわ。グロウラルクって、食べる事で、経験値が大量に手に入って、文字通り成長するわ。でも、その手に入る量が多すぎるから、制限がかかってるの。手軽にレベルアップしちゃったら、ヌルゲーになるのを恐れたからでしょうね」
「おぉー……うまい話には裏があるって、こういうのを言うんだな…」
「検証した感じ、二匹目以降からは経験値が入らなかった。それで、次に大量の経験値が入るようになるのは、丁度一週間後ね」
ふむふむ。
つまり、一匹グロウラルクを食べたら、どれだけ食べたとしても、その日から丁度一週間が経過するまで、グロウラルクを食べても大量経験値をゲットできないと。運営、色々と自由にしてる割りには、こういう所もしっかり考えているからすごいよな。
「まぁ、経験値が手に入らなくても、利点があるわ。実はね、経験値が入らない時に食べると、HPとMP、共に大幅に回復するの。つまり、どう転んでもおいしい思いしかしないの、この魚」
「へぇー…!勉強なりましたわー…!」
「妹の頼みだから、仕方なくね」
「皆さーん!焼けたっすよー!」
お、出来たようだ。どれどれ……おぉ、良い具合にこんがり焼けてて美味しそうだ!
「お兄ー、お姉ー。出来たから一緒に食べよー!」
「えぇ、いただくわ」
「おォー」
全員に行き渡った所で、いただきます。
グロウラルクの串焼きを口に入れて、咀嚼する。
んん、んん………んんー!
「何これ美味しい!白身なのに、濃厚な味がする!」
「にゃうー♪」
「かりじゅわー♪」
「ほうほう……!こんな味がするとはねぇ…!」
グロウラルクの身は、白身からは連想できない、非常に濃厚な味が口内に広がっていく!白身っつったら、タラのような淡泊な感じを想像してたけど……良い意味で裏切られたわ!
『テッテレー!レベルアップ!』
お、早速レベルアップしたようだ!どれどれ…………エ゛!!?
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PN:雨天決行
Lv:26→47
メイン職業:召喚士
サブ職業:鍛冶師
種族:唐傘お化け
HP:61→83
MP:70→99
力:25→40
敏捷:31→54
器用:66→88
耐久:50→73
スキル
【召喚術】【翻訳】【鍛冶術:Lv.10→30】【風妖術:Lv.18→39】【水妖術:Lv.24→46】【刀術:Lv.12→21】【木工】
召喚モンスター枠:残り2
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「なんじゃこのレベルの上がりよう!!?」
「おぉー!力がみなぎってくるねぇ!」
『Haha!これは良い!』
「言ったでしょ~?グロウラルク、すごいって!」
予想だにしていなかったレベル量で、度肝を抜かれたわ…!
だが、レベルが上がったのは素直に嬉しい!しかもこんなに……!てことは…!
「ふっふっふ……!メリィ!お前には」
「「ア゛ァ゛?」」
「メリィさんのお陰で、こんなに成長出来た!その見返りになるかは分からんが……メリィさん、見ていかないか?俺の『妖怪召喚』!」
「!はい、ぜひ!」
レベルが21も上がったお陰で、召喚可能妖怪の枠が2になった!次はどんなのを召喚してやろうか……!フフフ、楽しみになってきたぁー!!
「さぁ、塩釜が出来たよ。皆でつまもう」
「わーい!お姉の塩釜大好きー!」
「ぼくもたべたーい!」
「空を飛ぶ系…防御、弱体化系……ワクワクが止まらないなぁ!」
「……おい、アイツの顔大丈夫かァ?」
『えぇ、大丈夫ですとも』