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水の国 ウオクア

海上都市。水の国ウオクア。

海に囲まれたその国は、常に涼しい空気で満ちており、美味しい魚がいっぱい食べれて、水魔法を育てるのに最適な国と称される。


そんな国に……!


「俺達、無事到着ー!!」

「おぉー!綺麗な国だねぇ!」

「わぁー……!」

「ふにゃあ~…!」

『Amazing!』

「すっごいっすね!」


ちょっとしたトラブルはありつつも、無事にウオクアへ到着する事が出来た。

城壁に囲まれたその国へ、一歩中に入れば、水の国の名に恥じない光景が、俺達を歓迎してくれていた!


「国全体が、海上にあるとはねぇ!」


トラベラーの時と比べ、涼しい空気に満ちていて、建物もちょっと上品さを感じるこの国は、ある特徴がある。


それは、この国は、海の上に作られているという事!


しかもこれ、何がすごいって”比喩表現”じゃないこと!つまり、()()()()()()()()()()()のだ!全ての建物が、そういう感じで出来ているという、眼を疑うような光景なのだ!


浮島があって、その上に家があるとか、海底から基盤となる土地を設置して、その上に~とか、そういうんじゃないのよ!建物一つ一つが、海の上に微動だにしないで、宙に浮いている!なんとも不思議で面白い光景じゃないか!


で、この国での主な移動方法は、勿論船!ではなく、とある生物だ。

早速、この国に入ってすぐのとこにある、NPCが管理する施設へと入る。


「おぉー!この子が自分達の足っすか!?可愛いっすねぇー!」

「ピィー!」

「くび、ながぁーい!」

「お、気に入られたようだね?じゃあ、君たちの”キャリザウラー”はその子に決定だな!」


はい、こちらがこのウオクアでの主な移動手段、キャリザウラーだ。

図鑑で見るような首長竜…だったか?を、そのまま俺達くらいの高さにまで小さくさせたかのような、そんな感じのモンスターだ。とても愛嬌のある顔つきをしているのが、可愛らしいね。声も可愛いし。ダイノキング辺りが興奮しそう。


この国では、この子が背負う船に乗って移動するのが、メインとなっている。

キャリザウラーは知能が高いので、どこの道から行けば、目的地に早くたどり着けるというのを理解してるんだって。最近のAIってすごい。


レンタル料は、一匹5000Aだ。結構するけど、5000A払うだけで、このウオクアでの移動手段を確保できるって考えたら、まぁ安い買い物とも言えるよね。

でもって、さらに高い料金を払えば、戦闘用のキャリザウラーだとか、大人数を運べる程巨大なキャリザウラーなんかも、レンタルする事が出来る。テイマーの中には、キャリザウラーを買ってテイムした!なんていう声もある。


「……」

「こら、すこちゃん様!狙おうとしない!」


キャリザウラー、魚じゃないし!どっちかっていうと爬虫類だし!


…ちょっと一瞬グダったけど、まぁ問題ない。レンタルも済ませた所で、早速船に乗って、レッツゴー!


「さぁ、出発だ!進めー!」

「ピィー!」

ザアアアア!!

「うおーー!結構早いっすねぇ!」

『風がFeels goodだねぇ』


俺達を乗せたキャリザウラーは、ウオクアの中をスイスイと泳いでいく。


ウオクアの水路はとても広く、結構な人がいるにも関わらず、混雑したり渋滞したり、なんてことが一切ない。お陰で、快適にウオクアの見学を楽しむことが出来た!


商店街なんか、本当にすごいぞ!あの大盛況は、トラベラーに引けを取らないぞ!


というか…売ってるアイテムの大半は、水関連だったな。数分間、水の中で呼吸が出来るだとか、水系攻撃の攻撃力アップだとか、そういうの。流石は水の国…。


あ、そうそう。さっきそこの露店で、マジックウォーターボールなんていう食べ物を買った。…名前長ぇなと思ったのは内緒。

これがキャリザウラーのお菓子なんだとか。ちゃんと人間用のもあったから、キャリザウラーに一つあげて、俺達も食べる。


「おぉ、プルプルしてる…甘くておいしいなこれ」

「不思議な感覚だねぇ」

「おいしい~…!」


何だっけこれ、どっかで食べた事ある感じの……あぁ、そうだ思い出した!

以前、爺ちゃんに連れられていった、名水を汲める施設があった場所で売っていた、水まんじゅうだ!それに甘さと弾力がプラスされた感じの!


なんか、謎が解けてスッキリした!


「おぉ!我等が王よ、あれ見てくれ!なんかすごいぞ!」

「おぉ!あれがこの国名物の…!」


お菓子を食べながら観光をしていると、八雲があるものを発見した。

それは、ウオクア名物『ミステリオブザボール』!ウオクアの中央に存在する、超巨大な水の玉!中には様々な魚が泳いでおり、特に目を引くのが…!


『おぉ!目が合いました!優しい目をしているねえ!』


ミステリアオブザボールの主、ウオクアの守護神とも言われている巨大鯨、モビーディック!元ネタはあの白鯨なんだろうけど、性格は正反対だし、あっちのモデルは確かハクジラだったけど、こっちはヒゲクジラだ。


彼は常に、このウオクアの平穏を願っているそうだ。でもって……えーっと…。


「なによんでるのぉー?」

「レンタルキャリザウラー店で無料配布されてたパンフレットとか地図とか」


情報は大事だからね。しっかりと確認しておかないと。

えーっと、宿屋は……もうちょい先行った所か。


「よし、じゃあ次は宿屋に――」

「あ、あの!!」

「へ?」


急に、隣から声をかけられた。


振り返ってみると、そこにはキャリザウラー船に乗っている、ローブを羽織った少女がいた。


白髪のモッコモコの髪の毛の隙間から、カーブ状の角が生えているその少女は、杖を片手に、こちらを見ていた。

……どこかで会った記憶はない。完全に初対面だけど…俺、この国に来てなんかやらかしたっけ?いや、してない筈だけど……。


「……えーっと?どなた?」

「あ、あ、あの…!お、お義父さん!」

「ん!?」


お、お義父さん!?

どゆ事!?なんで俺、初対面の人間にいきなりお義父さんって呼ばれ――――待てよ?


………ハッ!?まさか、この女!?


「し、失礼を承知で言います……!む、息子さんを僕にください!」

「我が子はやらんぞたわけぇ!!」


世海を背後に隠しながら、俺はその女の願いを却下する。


やっぱりだ!この女、あの掲示板にいた、あるいは見た女だな!?


「うへ、うへへへへへ……!ネタに乗っかってくれてありがたいです…!あ、私はメリィって言います……!あ、会えて光栄です、お義父さん……!」

「だからお義父さんじゃないと言ってるだろが!?どーも、雨天決行です!」


……どうやらこのウオクアでも、色々ありそうな予感がいっぱいだぞコノヤロー。

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