いつもの風景
「それではニセモノさん!皆さん!大変お世話になりました!」
「また来てねー!」
「待ってるよー!」
はい、てことで戻ってきました!冒険者の国トラベラー!!
何だろう、すっごい懐かしい感じがする!
「じゃ、私達はこの辺で!」
「俺達は一旦、ここを離れて新しい国に向かうよ!また、学校で会おう!」
と言って、クマ先輩と仮面セイバ―1号が去っていった。………あの二人、絶対デキてるよね?
「では、我もここまで!また会おう!」
と言い出すと、ダイノキングもまた、仲間を連れて去っていった。……メンバー全員デカすぎるから、色々と邪魔になっているのは本当に笑えるわ。
「で、どうする?お米。またいつも通り、一緒に行動でもするか?」
「あー、それなんだけどよぉ……実はさ、姉貴がこのゲームをやり始めてさ」
「姉貴?……って、確かお前に【AO】買ってあげた人だっけ?」
「そそ。で、明日から姉貴に色々と教える事になってんだ。ほら、俺って基本的には姉貴の奴隷だから……」
死んだ目で言うなよ、ちょっと怖い。
何、世の中の姉弟って、基本的に弟は姉の言いなりかなんかなのか?兄弟とかいた事ないから分からんぞ!
「そういう訳だから、しばらくお前と一緒にプレイできねぇんだ!」
「成程なぁ。頑張って死んでこい」
「るっせぇ!……っと、そろそろ姉貴に呼ばれる時間だ。そんじゃ、修行、頑張れよ!」
「おー。お前ははよ宿題をやれ」
「余計なお世話じゃボケナス!!」
そう言って、稲葉はログアウトしていった。
うーん、今まで一緒に行動する事がなんだかんだ多かったから……明日からそうならないって考えると、ちょっと物悲しさを覚えるな。
「寂しそうだねぇ、我等が王よ」
「……ん、まーな。なんつーか…今までほぼ一緒にいたからなぁ、違和感があるって感じなんだよね」
ま、その気になればいつでも会えるし、この寂しさも一時的なもの!マイナスな事はさっさと忘れて、次についてやってきましょ!
「というか………本当に久々だな、皆」
「本当だよぉ我等が王ー!寂しかったんだぞー!!」
『えぇ、特に世海は会えなくてとても寂しがってましたよ』
「……………」
「あぁ、うん……本当にごめんね、世海」
現在、世海は俺の胸に引っ付いてます。召喚されたと同時にくっついて、脱皮前のセミみたいになっちゃった。可愛いから許す!
そんな光景を見て、お米達は、何も言わずにおいてくれてた。まぁ、色々と察してくれたんだろうね。ありがたいけど、去り際の暖かい目が、その……心にきた。何故だろうね。
「とっても賑やかっすね!」
「そーなんだよね。というか、君の参加でさらに賑やかになると思ってるよ、ココノ」
「賑やかし、頑張るっす!」
そしてこちらが、新しく我がメンバーに加入する事になりました、九尾の狐のお孫さん、ココノ。大幅な戦力アップになりました!まだ伸びしろがありまくるみたいなんで、これからが楽しみだね!
「それで?我等が王よ。これからはどうするんだい?」
「そーだな。妖狐御殿へはいつでも行けるようになったから……ここらでいっちょ、別の国に移動してみるか!」
『おぉ、Journey!それは良い!』
今までトラベラーで活動していたけれど、そろそろ皆みたく、別の国に行くのもありだろうさ。ゲームを楽しむ為には、色んなとこへ行って、レベルを上げてまた旅をする!それが基本だからな!
「んむ……どこ、いくの…?」
「涙と鼻水を拭きなさい。で、どこに行くのってぇーと……そーだなぁー……」
この【AO】は、実装が決定したデビエントピアを除いて、9つの国がある。
一つは、今俺達がいる最初の国、トラベラー
その他には、炎の国ファイム。水の国ウオクア。風の国ウィンネード。土の国アーランド。森の国フォレグル。魔の国ダーラック。聖なる国ホワーリー。そして、極東の国ジャホン。
○○の国、とあるように、基本的にその国ごとによって、その属性を持つモンスターが多く出現するし、その属性に見合った名物があったりする。それこそ、水の国だと漁業とかだな。
しかもしかも、その国では、同じ属性の強化が大幅に上方するのだ!だから、もし風魔法を強化したいと思ったら、ウィンネードに行けばいいという事になる!
そんな感じで、別の国に行くことはとてもうま味があるのだ!
というか、レベルアップする事が目的の俺達にとっては、まさにうってつけな感じなんだよ!
という訳で、新たな場所へ移動する事が決定したんだが……。
「………基本的に、俺んとこは炎と水だなぁ…」
どこへ行くか?という話になったので、改めて我がメンバーの強みというか、使う魔法がどんななのかを調べる。
水魔法…というか、水妖術は俺と八雲、そして世海だ。
火妖術は、八雲が水妖術と同様に使えるし、そこからアシュラとココノがメインで動いてる。
土属性は存在していなく、風は俺が少し使える程度。すこちゃん様は回復系だから…行くとしたら、ホワーリーだ。
うーん………確か、ファイムは活火山を囲う形で存在する国だったよな?そして、ウオクアは海に面した国……。
うーん、悩むね。あーでもなー……うーん……お?
そういえば……あ、そうか。よし、決まった!
「よし、決めた。ウオクアに行くぞ!」
「水の国だね?分かったとも!」
『ジャホンは暖かったですからね。涼しい場所に行くのは大歓迎!』
「おぉ、良いっすねぇ!自分、魚大好きっす!」
「うみ…!」
「にゃう!!」
「『魚!魚食べ放題!』…すこちゃん様、魚が好きなんだねぇ?」
やっぱりというか、ウオクアに決めて一番喜んでるのは、世海だった。え、すこちゃん様の方が喜んでないかって?よく見ろ、世海が今まで以上に目を開いて、瞳をキラキラさせているんだぞ?微笑ましくないか?微笑ましいと言え。
で、なんでウオクアにしたのかっていうとだな、まぁ簡単な話だ。
よくよく考えなくても、世海は海坊主という妖怪だ。つまり、海の妖怪…海の化身と言い換えてもいい。
世海は色々と頑張ってくれてたからね!ご褒美という訳だ!
「よし、そんじゃ早速、ウオクアに向かってしゅっぱーつ!」
「おぉー!おとーさん、はやくはやく!」
「にゃーん!」
『Well, let's go! To a new world!』
【さぁ、いざ行かん!新天地へ!】
「え、え!?急に何語っすか!?」
「あぁ、懐かしいねぇ。私も最初、彼の言葉が分からなくてチンプンカンプンだったとも!今もたまになるがねぇ!」
早速、俺達は水の国ウオクアへと向かって、歩み始める。
待ってろ、美味しい海の幸たちよ!